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20240622 教員のブラック労働の理由 就職氷河期との関係

 最近教員の勤務状況がブラック労働であることが何度も何度も報道されていて、そのせいで教員を志望するのをためらう学生も増えたのではと危惧しております。
 この、ブラック労働に関しては、授業準備や授業実施以外にも児童生徒への個別対応や保護者対応や部活指導や生徒指導や…としなければならない仕事が多すぎることが第1に挙げられて私もそれは確かだと思います。
 しかし、それ以外にも要因があるのではないかなと思っていて、その1つが「競争率の劇的な変化による世代間での能力のズレ」ではないかと考えています。

 まず、文部科学省がまとめたこれまでの教員採用試験の競争率の推移のグラフをみてください。
【書誌情報】
文部科学省総合教育政策局教育人材政策課 2022 令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について. (2024年6月23日閲覧)

 これをみると、2000年(平成12年)に主に採用者数を11021人と今の3分の1ほどに絞りまくったことが原因で競争率が13.3倍になっていたこと、現在が3.7倍であることがわかると思います。
 私の肌感覚では、2000年といえば就職氷河期の真っ最中で、一般企業の就職先が全然ないため公務員志望が増え、教員も志望者が増えて「非常勤でも見つかれば御の字、常勤でもすごい、いきなり専任は結構レベルが高い国公立の教育学部卒の学生でも結構難しく、十年間くらい非常勤や常勤を続けてやっと専任に慣れたという話も結構耳にする時代」だったと思います。
 2000年に22歳だとすると1978年生まれで現在45歳くらいでしょうか。その前後5年くらいは同様の傾向だと思うと、現在40歳から50歳くらいの教員は高い競争率を勝ち抜いて教員になった人たちなのだと思います。
 13.3倍といえば、100÷13.3=7.5程度。対して3.7倍といえば100÷3.7=27.0程度。大学受験の偏差値で考えると上位7%で偏差値65くらい、上位27%だと偏差値56くらいと考えると、結構能力差があるのがわかると思います。
 なので、2000年を中心とした就職氷河期に教員になった全般的に能力が高い世代の教員が、教員になりたての若手に「自分と同じ能力」を求めて指導したり仕事を振ったりすることで、若手がそれを実現するために長時間労働や時間外労働などに従事する必要が増え、そのため学校が「ブラック職場」になっていったのではと思います。
 この件、もしかするとその証拠になりうるかもしれないデータもあって、グーグルトレンドで「教員 ブラック」で検索してどの時代から出てきたかを調べた結果が以下のグラフです。

 これをみると、2004年に一度ピークはあったもののその後ほとんど見られず、安定してみられるようになったのは2010年くらいからだというのがわかります。
 一番競争率が高かったのは2000年だったことを考えると、2000年に教員になった優秀世代が10年弱経験を積んで指導側に立つようになり、そこで競争率が落ち着いてきた教採で入ってきた新任教員に指導することでブラック指導になってしまったと考えることができるのではないでしょうか。
 まあ、この考えがもしあっていたとしても「では2000年くらいに採用された教員は老害を発揮するな」みたいに阻害することをせずに、その優秀さを活かす方法を考えてもらえると一番良いのになあとは。

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