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20230403 祭の「成就感」

 この祭心理学NOTEでは基本的に対象とする祭から「学校の文化祭,体育祭」などは除いて検討しています。その理由として,「文化祭,体育祭については特別活動での長い研究歴があり,教育心理学での検討もなされてきている」ため,あえて祭心理学で取り上げる必要はないとの判断です。
 なので,今日取り上げる論文も最初は関係ないなと飛ばすつもりだったのですが,「成就感」という概念になんだか関心が惹かれました。学習意欲や達成動機の関連で「達成感」については教育心理学で多数検討されてきていると思いますが「成就感」って用語はあまり聞いた記憶がないなあと。でも,祭に関しては達成動機や達成感よりも「成就感」って方がしっくりくるので,「成就感」の定義や測定がどのようになされているのかについてみる目的で目を通すことにしました。
  
樽木靖夫・蘭 千壽 2016 中学校での行事活動における成就感に関する研究. 日本特別活動学会紀要, 24, 31 – 39.

 最初に気になる達成感と成就感の弁別ですが本論文では以下のように説明されていました。

 成就感の概念は十分に議論されているとはいえないであろう。達成感とはあることを成し遂げたことによって得られる満足感を指し、意欲とは進んで何かをしようとすることやそのような心の働きを指す。成就感、達成感、意欲の概念は重なりをもっと考えられる。そこで、本研究では中学生の行事活動を対象とした成就感を「この活動を成し遂げたという達成感」と「またやってみたい、今度やるならこうしたいなどの意欲」の複合体と捉えて、研究を進めることとする。すなわち、本研究での成就感は達成感としての側面と意欲としての側面をもつと捉えている。

 基本的に成就感は達成感を含み,それに意欲的側面も含むということで,

成就感=(今回の)達成感 + (次回への)意欲

という感じでとらえられるような気がします。

 これは測定手法をみると分かりやすく,成就感の尺度項目は以下のようなものとなっていました。

4.私は行事などで活動する時、自分の役割をよく果たしたと思うことがよくある(達成感)
2.私は、自分のした事が行事などの成功につながっていると思う(達成感)
1.私は行事などで活動する時、やってよかったと思うことがよくある(達成感)
3.私は行事などで活動した後,今度やるならというアイディアや工夫を考える方だと思う(意欲)

 確かに,学習意欲などの場合,テストが終われば確かに「次頑張る」という意欲が出るのは確かなのですが,学園祭や体育祭などの行事の方がより「次は~~したい」という「次への意欲」が濃く意識されるように思えますし,祭なども同様な気がするので,この「意欲」項目を入れたくなる気持ちは分かるなあと思いました。
 
 ただ,残念無念なのはこの研究では体育祭前後の点数の比較をされているのですが,「自主性」,「他者からの理解」,「他者への理解」「学級の肯定的理解」などは5%水準で体育祭後の方が得点が高くなっているのですが,「成就感」では10%の有意傾向に留まっております。

 では…これを体育祭ではなく外部の祭で検討すると成就感においても明確な有意差がみられるのでは?なんて思えてきましたが…自分の調査でうまく導入できると良いなあと。
 
 って,あと変数をみると「学級トラブル」というものが論文中にありますね…祭りの中での対人トラブルが起きてそれをうまく対処すると成就感や自己成長感が高まるなんて流れを…某先輩に対人関係でその流れの研究がないか聞いてみたいなあと。

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