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20240919 名古屋vs.福岡

 Yahoo!ニュースを見ていたら「名古屋と福岡どっちが都会?」という刺激的なタイトルがみつかったので呼んでみると,のりば(@MangaNoriba)さんという方が書かれた『高宮ウォーキング』という漫画を元にした記事のようでした。
【書誌情報】
「名古屋と福岡」どちらが都会?人口や食べ物、方言や観光スポットを比較した地方論争がおもしろい!【著者に聞く】 

(2024年9月19日閲覧)
 私は愛知にも福岡にもかなりの年数住んだ人間なのである程度この二つの都市を客観的に説明できるのではと思いながら読んでみることに。
 
 基本的に最後のオチまでもっていく流れやただ単に名古屋と福岡に相当する二人に言い合いをさせるのではなく「勝手なことを言っている二人」に「冷静な人がつっこむ」という形式は面白かったので良いマンガだと思いました。

 ただ,「冷静な人のつっこみ」がなんというかちょっと弱いというかズレているように思えたのでまず最初に特に厳しいなあと思った点を指摘しておこうと思います。
 
 まず,名古屋メシを「くさす」ものとして以下のようなことが挙げられていました。

「おにぎりにエビフライをぶっ刺して食べる」
「あらゆる食べ物に味噌を塗りたくります」
「うなぎをわざわざ出汁に浸して食べる」
「うどんを潰して平らにもする」

 これらについては名古屋の人はもう「言われ慣れ」していて,にこにこ笑顔で対応してくれるのではと思います。

「まあ本当は天むすは三重発祥だけど」
「味噌も基本は三河のものだけど」
「出汁に浸して食べるのは最後の味変で最初は食べないがね」

などのつっこみを入れたくはなりますが,「まあそんな感じでネタにしてくれてありがとう」みたいな反応だと思います。
 んが,その返しとして福岡の食事について,

“豚骨ラーメン”じゃなくて“醤油ラーメン”でいいだろ!!
“もつ鍋”じゃなくて“寄せ鍋”でいいだろ!!

 って返されていて,これを福岡の人が言われたら「きょとん」としてしまうと思います。

 これって,
 
・札幌の人に“味噌ラーメン”じゃなくて“醤油ラーメン”でいいだろ!という
・名古屋の「手羽先」に「から揚げでいいだろ!」という
 
 ような感じで,どうにも返しようがないように思えます。そういう意味でおそらくこの漫画を書かれたのりば(@MangaNoriba)さんは,名古屋メシより福岡ご飯への解像度が低いのだろうなあと思います。
 
 もう少し福岡の食を理解した上でそれに対する同じような誤解を書くなら
 
「ごぼう天を巨大円盤にしてうどんに載せて食べる」
「あらゆる食べ物に明太子を塗りたくって食べる」
「ラーメンの麺をほぼゆがかず生煮えで食べる」
「ラーメンが替玉ならうどんは替えスメする」
 
とか書くと,「そんなの豊前裏打会だけの最近の傾向にすぎない」「明太フランスとかあるけど博多ラーメンに明太子載せたりするのはほんの一部のお店だけ…」「バリカタとかは確かにみんな好きだけどフツウとかヤワとかを好きな人も多いとよ」「うどんは逆に固いのよりやわめが好きな人多いけど追加のつゆをくれるのは牧のうどんくらいですよ」などというつっこみが入るかもしれませんが,「まあそう思われていそうだよねえ」と返す人が多そうな気がします。
 
 食に関しては本当にその地域に生まれ育った人でもその思いは非常に個人差あるのでもっと客観的な指標で比べてみると,人口や高層ビルの有無や地下鉄の発展の様相などを反映した「都市としての規模」では名古屋が圧倒的だと思います。
 しかし,そうした都市の規模の圧倒的な差がありながら名古屋vs.福岡という比較が話題に上ることが結構あるのはそれだけ福岡に名古屋にはない魅力があるからだろうとも思うので今回はその魅力が何かを考えてみたいと思います。

1.背負っている地域の広さ

 福岡にはライバルの熊本がありますが,最近は福岡に九州全体を束ねる機能が集中してきていて,九州の盟主として福岡をイメージする人は多いと思います。また,どこが盟主かはおいておいても,「九州全体」での連帯感は結構あるので,「名古屋vs.福岡」なんて話題があったら九州の他の県は福岡を応援してくれると思います。
 しかし,名古屋(愛知)に関しては,岐阜とは強いつながりがありますが,東海三県で愛知岐阜三重といっても三重は結構関西にも関係があるので岐阜程の蜜月関係にはないような気もします。中部地方で静岡とも関係がありますがおそらく影響力があるのは浜松市くらいまでで静岡市になるともう目は東京しか向いていないと思います。長野なども甲信越の意識が強いでしょうからあまり愛知を意識していないと思います。
 そのため,背負っている地域の広さでは圧倒的に福岡が広いと思います。

2.港町的な文化の有無

 福岡は県内に北九州市を有し,長崎も近くにあるので「急峻な山があるからこその昔からの港町」があります。そのため,東京-横浜,大阪-神戸的な物としての「古くからの港町」が持つ文化などにもなじみが深い都市である気がします。
 しかし名古屋市は現在では名港という輸出額などでは神戸どころか東京をもしのぐ巨大な港はありますが,それは自然の急峻を活かした古くからの港ではないので,なんというか横浜や神戸や長崎などがもつ「異国情緒を感じさせる港町」というのは中京圏にはなかったような気がします。
 そういうのもあって,「ハイカラ文化」的な薫陶をあまり体験していないのかなあなどと思ったりもしました。 

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