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美味しくて薬にもなる非加熱はちみつを選ぶ基準

前回、はちみつの健康への効能について記事を書きました。

調べれば調べるほど、はちみつについての効能は素晴らしいのですが、一方で先日会った友人からこんな話を耳にしました。
「はちみつが健康にいいとのことで毎日食べていたら体重が増えてしまった」
「歯医者さんからの話によると、はちみつがいいと摂取する人の虫歯が増えているらしい」

あれあれ?はちみつって虫歯予防効果やダイエット効果があるはずなのにどうして?
自然療法家ではちみつ療法を実践している有馬ようこさんの著書を読むと、はちみつばかり食べていても、虫歯もできなかったし、太らないし、体温も高く、エネルギーに満ちていると書いてあります(*1)

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前田京子さんもはちみつを歯みがきに使うと良いと「ひとさじのはちみつ」という本で紹介していますが、きちんと良いはちみつを選ばないと、純粋はちみつでない加工はちみつが大量に出回っているそうなのです。

自然の摂理を待ちきれず、急いで収穫したはちみつは完成しきっていないので水っぽい。
そこで濃度を上げる為に水あめや「人工転化糖」(ショ糖をブドウと果糖に人工的に転嫁させたもの)を混ぜた「加糖はちみつ」、水分をとばすために加熱した「加熱はちみつ」が作られるというわけだ。
加工はちみつの場合、他のものを加えたり加熱することによって、本来持つ栄養素の分量が減ったり変質してしまっていて、古来ほめたたえられてきたはちみつのめざましい効能は、見るかげもなくなってしまっているのである。
はちみつを美味な「薬」として使おうとするなら、精製や加糖、加熱のない天然の純粋な生はちみつを選ぶことが、まずは基本と言っていい。(*2)

もしもはちみつを、ダイエットや虫歯予防効果などの健康への効果を期待するなら、きちんと良質のはちみつを選ぶことがとても重要であり、混ぜものをしている等、加工されすぎたはちみつは逆効果になってしまういうことなのです。

ただの甘味料としてでなく、せっかくなら美味しくて薬にもなるはちみつを選びたいですよね。

私はもともと、お肌と環境にやさしい石けんを作りたいと石けん工房を立ち上げたように、MATSURIKAで取り扱うなら体にも良い本物のはちみつを紹介したいと思うのです。
今回は私なりに調べて考察した、本物のはちみつを選ぶ基準について書いていきたいと思います。

シロップで水増しされていない純粋はちみつを選ぶこと

はちみつはラベル表示を見ると「原材料:はちみつ」と書かれていますが、医学博士の﨑谷博征さんの書かれた著書(*3)によると、実は食品偽装されやすく、世界でも不純物が混入されている食品の第3位に挙げられているほど、一般のマーケットには「純粋はちみつ」(一切の加工処理を行わない天然そのままのはちみつ)が少ないそうなのです。

例えばニュージーランドのマヌカ・ハニーは、年間1万トン以上もマーケットに出ています。しかし、実際のマヌカ・ハニー生産量は、年間1,700トン程度で、その10倍近くが市場で売られていることになります。
つまり、マーケットで売られている90%近くが純粋のマヌカ・ハニーではないということです。
これはヨーロッパでも同じ事情で、他の甘味料を混入して販売されているはちみつはとても多いそうです。

実際に、世界中の19カ国のマーケットで販売されているはちみつ95個の成分を調査した研究によると、アジアのはちみつの52%、ヨーロッパのはちみつの35%、南半球のはちみつの18.4%がシロップハニーだったという結果も出ているとのこと。

実態を知ってしまうとショックですよね。。
そして、はちみつに混ぜる甘味料で一番多いのが「果糖ブドウ糖液糖」だそうです。
「果糖ブドウ糖液糖」とは、私たちの身近にあるスポーツ飲料やジュースなどの清涼飲料水の裏面の表示のよく記載されているもので、トウモロコシから作られた安価なコーンシロップのことです。

トウモロコシから作られたシロップというと聞こえはいいのですが、「果糖ブドウ糖液糖」は遺伝子組み換え(GM)コーンから複雑な化学合成過程で作られ、それ自体がガンを促進させたり、肥満、高脂血症などのメタボや行動異常(躁うつ病など)を引き起こすことがすでに報告されている物質です。
またコーンシロップの他にも人工転化糖や水飴など、本来はちみつには含まれていないはずのものを混入しているケースもあり、はちみつを食べてアレルギー反応が出たり、体調が悪くなったりしたというのは、このような安価な人工甘味料などが混入されたものを摂取している可能性が高いそうです。(*4)

非加熱はちみつであること

はちみつについて調べていると「加熱すると酵素やビタミンなどの栄養素が壊れてしまうから非加熱はちみつを選ぶこと」といった文面をよく見かけます。
これについては賛否両論ですが、私自身はいろいろ調べて多面的に見た結果、やはり非加熱はちみつが良いと感じています。
その理由を以下に書いていきたいと思います。

加熱したはちみつは栄養素が壊れる?

ヨーロッパでは非加熱はちみつを重視しており、例えばドイツでははちみつを加熱した時に生じるHMF(ヒドロキシメチルフルフラール)や加熱に弱い酵素などの項目が『はちみつ純正法』という食品法で規定されており、EUの基準でもこのHMFは40mg/kg以下と定められています。
これらの基準は、はちみつが加熱され過ぎていないかどうかをチェックするための大事な指標となっています。

一方で、「はちみつの成分の多くが糖で、酵素やビタミンなんてわずかなのだから非加熱にこだわる必要はない」といった情報もあり、どちらが正しいの?と迷ってしまいます。
実際に加熱した場合の酵素とミネラル、ポリフェノールの変化に関しては、米国蜂蜜協会がはちみつの加工による栄養変化のデータがありました。

下の表は、室温55度の貯蔵庫で3日間保存して、85度で5分加熱したあと、ろ過して60度まで冷却してからパッケージングした加工はちみつと、加工前のはちみつとの栄養変化を見たものです。

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(ミネラルとポリフェノールは大さじ1杯(21g)あたりの量)
この表を見ると確かに酵素は加熱によって減っていますが、ミネラルと抗酸化能(ORAC)は熱処理によって微増しており、こんなに微量であれば熱を加えても大して栄養としては問題ないと指摘されていたりします。

ただこの表には載っていないビタミン類(アスコルビン酸、ビタミンB1、ビタミンB2,ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6など)などの中には熱に弱いものもあり、先ほど紹介した﨑谷医師の書籍によると、はちみつにはフルクトース、グルコースという糖のエネルギー代謝を回すたに最適なビタミン、ミネラルが含まれると記載されています。

一成分ではなく総合的に体に取り込まれる観点から見ると、様々な栄養素が相互作用しているので「微量だから無意味」ということはないと思うのです。

はちみつを加熱すると老化物質の終末糖化産物AGEsが増加する

インドの伝統医学のアーユルヴェーダでは、はちみつの素晴らしい効能に触れられていますが、逆に熱せられたはちみつは毒になると言われています。
その情報に関連して見つけた資料なのですが、以前よもぎ茶の抗糖化についてnoteにて、老化を促進する終末糖化産物AGEsについて詳しく書きました。

はちみつを加熱することで、動脈硬化や皮膚のしわなどの老化現象をもたらすAGEsが、生はちみつを100℃で30分加熱すると加熱していないはちみつに比べてAGEsが8倍以上も増加してしまうというのです。

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(出典:NPO法人アーユルヴェーダ協会)

本来、はちみつは肌つやを良くしてエイジングケアに良いとされているのに、高温加熱すると老化を促進する物質がこんなに増えてしまうのは本末転倒ですよね。
体の老化を促進する終末糖化産物は、一度体に蓄積するとなかなか分解されにくいので、やはり非加熱はちみつを選ぶ方がいいと思うのです。

先日お客様から
「温かい飲みものにはちみつを入れてもいいですか?」
と質問をいただいたのですが、非加熱はちみつを入れる際は湯冷ましした60度以下の飲みもに入れるなら良いかと思います。

非加熱はちみつは美味しさが違う

「はちみつの味が苦手」という人は案外多いと思います。
以前、私もはちみつセラピーを知った時に、朝晩はちみつをひとさじ食べようとしてみたのですが、甘すぎて食べられない、のどにつかえる感覚が苦手で続きませんでした。
でも今思うと私は、はちみつの味が苦手だったのではなく、加熱したはちみつの味が苦手だったということが分かったのです。

この写真の2種類の瓶は蜂ファーム中嶋さんのニホンミツバチのはちみつで、同じ巣から採れたもともとは同じはちみつですが、左の瓶が非加熱で、右の小瓶は高温加熱したものです。

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もともとは同じ蜜でも加熱しただけで見た目がまったく違いますよね?
左の瓶が白濁しているのは、この寒さで結晶化して固まりかけているため。
雪が降るような寒い気候でも、加熱はちみつは結晶化しにくく透明感のある黄金色のまま。
見た目的には加熱はちみつの方が美しいのですが、食べ比べしてみるとその差は歴然で驚きます。

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実際にスタッフや知り合いなど、多数の人に味見してもらったところ、味見した全員が非加熱の方が断然美味しいと言うのです。
非加熱はちみつが、芳醇な香りがして複雑で奥深い甘みとフルーティーな酸味で全体的にまろやかさがあるのに対し、加熱はちみつは単一なお砂糖に近い甘みで、香りも酸味もとがっていて、喉にひっかかるようなえぐみが感じられます。

もともと私は理系出身で何かとエビデンスを重視していますが、同時に「美味しい」と体の細胞が喜ぶ感覚もとても大切にしています。

昔読んだ浅田次郎さんの小説に「本当に美味しいものを食べたときに人は笑うんだ」という一文がありましたが、このはちみつは本当にそう。食べた人が笑顔になる、自然のままの生きた味がするのです。

結晶化したはちみつを40〜45度くらいのぬるめの湯煎で溶かすと、細かい泡がしゅわーっと浮かんでくる。
これが酵素が生きている証です。

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私たちはもともと食べものから命をいただいて生きている。
世の中には加工しすぎたり添加物などで、エネルギーが低い食べ物がたくさんあります。
あれこれ栄養素のデータを並べて頭でっかちになるよりも、一口ぱくりとするだけで美味しくてにっこりしてしまう。
体が欲する生きている食べ物をとりいれるってこういうこと。
これが本物なんだと感覚で分かるのです。

はちみつの味が苦手という方こそ、ぜひ非加熱はちみつの美味しさを体感してみてくださいね!

非加熱の純粋はちみつを購入するにはどうすればいいの?

ここまでで、ふと疑問に思うこと。
ヨーロッパでも非加熱はちみつが一般的なのに、どうして日本は加熱はちみつが多いのでしょう?

それは、製品の安定性や、作業工程のしやすさもあるのです。
非加熱のはちみつは粘度がありろ過もしにくく瓶詰めもしにくい。

したがって、はちみつを扱う業者さんの作業効率は著しく落ちます。
高温加熱すると、蜜が簡単に濃縮できて糖度が低くても発酵のおそれもなくなり、蜜の見た目も透明になります。
加熱すると粘度が下がりさらさらの液状になるのでろ過や撹拌、瓶詰めなどの作業が格段にしやすくなります。

そして、何より私たちが安価で透明できれいなはちみつを選んでしまうという側面もあるのです。
(はちみつの種類によってはアカシア蜜のように、冬場でも結晶化しにくい蜜もあるので、「透明で結晶化しないはちみつ=加熱はちみつ」とは一概に言えません。)

ドイツのように加熱の基準が明確化されていない日本では、見た目やラベル表示だけで非加熱はちみつを探すことは非常に困難です。
私たちが、はちみつを購入する際のポイントとしては業者さんに、
「混ぜもののない純粋はちみつですか?」
「高温加熱していないですか?」

と聞いて、積極的にいいはちみつを選んでいくことが大切です。
ネットでは以前よりも非加熱のはちみつが手に入りやすくなりました。
こうした私たちのニーズがまわりまわって本物のはちみつが手に入りやすい環境をつくっていくことにもつながると思うのです。

国産はちみつ、海外産はちみつどちらを選ぶ?

はちみつを厳密に選ぶ人の中には「残留農薬が心配だから農薬の規制が厳しい国のはちみつを選ぶ」という人もいるそうです。

確かに、農薬の規制が厳しくない日本において、蜂の行動範囲内の半径2〜3kmの農薬までチェックするのは非常に難しいことです。

私がお願いしている生産者さんのはちみつは、以前の投稿にも書いたとおり→☆、空気や水もきれいな岡山県の県北の北房で、地域でホタルを守る活動をして農薬に気をつけていたり、養蜂家さんもなるべく畑よりは山の近くに巣箱を置いていますが、農薬がまったくゼロかと言うとそうは言い切れません。

またニホンミツバチはダニや病気に強いので抗生剤等の薬剤は必要としませんが、セイヨウミツバチは湿気や病気やダニに弱くこうした抗生剤を使用する養蜂家さんもいるそうです。(*5)

シビアに0か100かで判断してしまうと、国産のはちみつを選ぶハードルはとんでもなく上がってしまい、農薬を禁止にしている国のはちみつしか選べなくなってしまうかもしれませんが、ただでさえ国内流通しているはちみつの9割以上が海外産でその多くが中国産という中で、私はわずか6%しかいない国内の養蜂家さんを応援したいという気持ちがあります。

特に在来種のニホンミツバチがいなくなったら、花粉の媒介ができなくなり私たちの食卓にも大きな影響を及ぼすでしょう。
椎の木や栗の木など、森の木々も実を付けなくなり幼木が育つのが難しくなるでしょう。

みつばちは農薬にとても弱いので、養蜂をする人が増えると自ずと農薬を気にする人も増えると思うのです。
それはめぐりめぐって汚染されていない土地や食べものを未来に繋げることにもなるのです。

先日も蜂ファーム中嶋さんが、MATSURIKAに納品していただくはちみつをそれぞれ味見してほしいと各種持ってきてくれたのですが、こうして生産者さんと直接話ができるのは、蜜の採取方法や製造や保管など詳細に話を聞くことができて本当に安心できる信頼関係が築けます。

気温が低い時期になると、写真のように結晶化して固まったはちみつはそのままでは瓶詰めすることもできないので、はちみつが40℃を超えない低温の湯煎で加温することは、蜂ファーム中嶋さんと話し合ってOKとしています。

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こうした信頼できる養蜂家さんと関係を築いていくことができたら本当にいいなぁと思うのです。

ニホンミツバチとセイヨウミツバチのはちみつの味の違い

はちみつは流通しているもののほとんどがセイヨウミツバチのものですが、ニホンミツバチのはちみつはまったくの別物の味です。
セイヨウミツバチが単一の花から蜜を集める習性があるのに対して、ニホンミツバチは百花蜜と呼ばれ、ありとあらゆる花から蜜を集め、特に山の花の蜜を好むそうです。
だから香りや味わいが複雑で奥深く美味しいのです。
以下にお客様からいただいたご感想を掲載しますね。

Y様
日本みつばちハチミツ、
初めて頂いたときは、『これはハチミツなのか。。。?』
という位、今まで食べてきたハチミツとはまったくの別物でした!
とても上品な甘さで、美味しいです。
ふじ様
朝晩蜂蜜を食べる習慣があるので、色んな非加熱蜂蜜を試してきたのですが、今までで1番フルーティで美味しかったです。なんか葡萄みたいな味がすると個人的には思いました。とろみが少なくサラサラで軽い感じです。色も綺麗でとても気に入りました。また買いたいので、ずっと取り扱ってくれるといいなと思ってます。

ニホンミツバチの養蜂の第一人者で書籍を多数出版されている久志冨士男さんがこのように書かれています。(*6)

「ニホンミツバチのミツは、セイヨウミツバチのミツに比べて味がよい。
セイヨウミツバチのミツは、何の花のミツであってもニホンミツバチのミツの味を超えない。
オーストラリア、ニュージーランド産のミツには良いものがあるが、やはりニホンミツバチを超えない。」

ニホンミツバチのはちみつは採蜜量がセイヨウミツバチの1/10と少なく、希少なものですが、ぜひその味を一度味わっていただけたら嬉しいなと思うのです。

「お気に入りは三つ」を合い言葉に

ニホンミツバチのはちみつは本当に美味しいけど量が採れないのでどうしても高価で手に入りにくい。
自然療法家の有馬ようこさんは、体調によって美味しいと思うはちみつが変わることと、はちみつに限らずですが、どんなに害がないと思っても完璧なものは存在しないと考えて、「お気に入りは三つ」くらい選んでおくと良い(*7)と著書に書かれていてなるほどなぁと共感しました。

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今の私のお気に入りはこの三つ。
地元のニホンミツバチのはちみつ2種はスプーンで食べる用で、大きい瓶のセイヨウミツバチのアカシアのはちみつは非加熱でも冬は固まりにくいので、飲みものに入れたり料理に使ったりしています。

1匹のみつばちが一生に集めるはちみつの量は、小さじ1杯分と言われています。(*8)
養蜂家の方々は、蜂が食べる分のはちみつは残して、人間がその一部をいただいています。

大好きな風の谷のナウシカに「虫たちと相談して分けてもらう」というくだりがあったと思うのですが、私にとってのはちみつはまさにこの感覚。
自然からのおすそ分けで、食べる薬ともなるはちみつを、これからもひとさじずつ美味しく大切にいただきたいと思うのです。

私なりのはちみつ選びについて書いてみましたが、少しでも皆さまのご参考になりますように。

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<参考文献>
自然治癒はハチミツから:﨑谷博征・有馬ようこ著(*1,*3,*4*7)
ひとさじのはちみつ:前田京子著(*2,*8)
我が家にみつばちがやってきた:久志冨士男(*5,*6)

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