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Study・どこで心を育てるか。

「今その貯蓄を使わなかったら、ないのと同じだ」
そう一喝して、幕府の貯蓄を被害を受けた人々に配った保科正之。

時は明暦の大火の起こった1657年。二昼夜に及ぶ大火災は、江戸の街全体を覆い、10万人以上が命を落とした。やがて火は消えるが、そこで終わりじゃない。またそこから一人ひとりの人生は続いていく。

保科正之は、一日千俵の炊き出しを、何日も行ったという。日に60トンに及ぶ量になる。そして16万両もの資金を、庶民の生活の復興のために配った。

「幕府の財源が空になってしまう」と反対する重臣たちに発したのが先の言葉だ。


救済と再建。

江戸の大火災の報告を受け、全国の大名たちが江戸に駆けつけようするのも保科正之はストップした。

「今、大名が多く押しかけては、江戸の物価が高騰する」

とりわけ米価の上昇は庶民の生活を圧迫するはずだ。米価にも上限を加えた。

焼けた街の中に新しい生活が立ち上がってくる中、江戸城再建も始まっている。かつては60メートルもの高さを誇った江戸城天守閣。その再建はとりやめた。

「そんなもの」と正之は言ったかどうか。
「今はもう必要ない。お金はもっと優先すべきものに回すべきだ」

天守閣は実用性はなく、権威の象徴に過ぎない。周知の事実だが、それでも並みの人物ではそのような判断はくだせない。


その人の行動をみれば、その人の内面がわかる。

何を大切にし、どんな哲学を持ち、どんな判断基準を持っているのか。


保科正之の判断は、どこまでも人のため、だった。


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映画の中の主人公や漫画のヒーローに憧れる私たちは、ときに気づくと、悪役のような心持ちになっていたりすることがあります。

人の不幸を願ったり、笑ったり。自分だけが良ければいいと思ったり。

望んでいないのに、そのモードにはまってしまって抜け出せない時もあります。

「伝記」を読んだ方がいいよ、とよく言われるのは、はっと気づかせてくれるから。私たちがもともと持っていた「憧れの自分の姿」を思い出させてくれるから、だと思います。

「本を読みましょう」とは言いますが、読めば読むほど、心が強くなり、人に優しくなり、エネルギーが沸き起こるものを選ぶべきです。

目にするもの、耳にするもの、それが私たちを作っていきます。来たるべきときに強くあれるよう、私は聖者たちの生涯をよく読んでいます。

そして、子供達にも、それをオススメしたいです。伝記の中、勇者、聖者たちの中にこそ心を育てて欲しいと思っています。

それは、子供達にもやがて「来たるべきとき」が来て、強さを求められることを知っているからです。


Study&Nadi
松尾健史

「どこまでもかっこいい名君。保科正之」はこちら!!



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