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#あとちょっとなんだけど。

かれこれ10年ほど前から、市のNPO法人連絡協議会の代表という立場のままであるため、事ある毎に県の会合に出席せよとの声が掛かる。2月には1泊で徳之島での地域リーダー研修会というのに参加して来る。コロナ禍以来、オンラインでの参加者が増えたため、対面での参加は県としても嬉しいのだろう。昨日、担当者から浮き浮きとした声で電話が掛かって来た。
 
お金さえあれば何でも買える。買えそうな気がする。そんな世の中だ。2022年に亡くなったカヌーイストの野田知佑がアラスカのノアタック川を旅した際、川沿いの村の商店の主人は、たとえ金を払うと言われても、信頼の出来ない人には何も売らないと話した。(『北の川から』 新潮文庫 – 1997/9/1)
 
生きて行く上でお金はあった方が良いのだけれども、そればかりが目的になると道を間違う。じゃあどんな選択肢があるのかと探っていた18年ほど前、島田恒氏の『NPOという生き方』(PHP新書 – 2005/2/16)に出会った。それ以来、肌で非営利事業というものを理解したいと思い、2つのNPO法人と奄美大島の小さな集落の自治会などに積極的に関わって来た。
 
地域社会に少しく関わって来ると、いわゆる企画屋さんによるイベントや企画の迂闊さが目に留まるようになる。「あぁ、そんなに目を輝かせて鼻息を荒げてたらみんな逃げちゃうよ」と思う。地域の成り立ちとか文脈を身に纏い、みんなの心拍を乱さず、善き市民であるところで初めて肝心となる信頼が醸成されて来る。
 
一昨年あたりから私の暮らす集落にも移住者が増えて、中にはやはり「地域のために頑張ります!」なんて人もいる。頑張ってね、と思う。数十年をかけて様々な複合要因によって衰退して来た地域が、果たして誰かがぱっと思いついた企画でどうにかなるとは、私には思えない。ただ、そのような元気が元気を呼んで創発を引き起こすのなら、何かが変わるのかも知れないとは思う。
 
何かを変えるためには、自分自身が誰からもアクセス可能な「知識」であり社会にとってのオープンで心良い機能であることが大切だと思っている。「ネットで検索すればわかるでしょ」なんて事は言わない。聞かれたら答える。私もわからない事は近隣の人に尋ねるが、みんな心よく教えてくれるし、出来ないことは手助けしてくれる。都会ではわざわざ仕組みを作らなければ出来ないことだが、島では普通にそんな機能が人の心に備わっている。ありがたい事だ。
 
私としてはもう少しで、この島暮らしのNPO的皮膚感覚をしっかりと言葉で表現出来そうなところまで来ている。あとちょっとなんだけど。

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