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26 時代の潮流

先週末は私の暮らす奄美市の市長選挙だった。投票率は72.26%。市としては全国でもトップクラスだ。
「島の選挙戦は怖いぞ」と移住前から義父や義母、そして妻からも聞かされていた。誰に投票するかで家族が真っ二つに割れたり、集落では夜毎かがり火を焚いて誰が誰の家に投票依頼に回っているのかが監視される。しかしそれは20年も前の話である。私が越して来てからはその様な光景は見たことがない。ただ、今回の市長選ではちょっとした殺気を感じた。
 
毎年年末には政府予算案が決定するが、その中に奄美群島復興特別措置法にもとづく交付金というのがある。奄美の人が「アマシン予算」と言う時は、この交付金のことを指す。正確に言えば「奄美群島振興開発事業関係の予算」である。今年度は前年比8%減の195億円であった。
さて、その予算が島の各業種に降ってくる。そこから先は文字通り裏の話である。選挙に勝った首長や議員の陣列に連なっていたのかどうか、そこが、生活が立ち行くかどうかの分かれ道にもなる。
・・・と言うのがこれまでの選挙戦の筋書きであった。しかし今回はどうやら趣きが違っていた。
 
現職は勇退、候補者は、現職市長や自公系市議12名の支援を受けた元県議の永井章義氏(64)、市民有志と自民系などの市議5人が支援した元市議の安田壮平氏(42)ともに新人。勝ったのは若手の安田壮平氏であった。奄美市が誕生して以降、最年少の市長である。永井氏 7,055 票、安田氏 18,100 票。圧勝だ。
 
永井氏の陣営には選挙のベテランが顔を並べていたが、「これほど票の読めなかった選挙は初めてだ」と陣営幹部は語った。安田氏を支持したのはSNSで繋がった若者、そしてこれまで実際に安田氏から親身になって世話をして貰っていたお年寄りたちだった。私も含めて、これまでの「土建行政」には辟易していたのだ。
 
私が事務局長を務めるNPO法人 奄美食育食文化プロジェクトで、2019年に市会議員有志とともに奄美市“ガストロノミー”研修会を開催した際、積極的に協力してくれたのも安田氏であった。この時にガストロノミー先進地・霧島市の職員として来島、参加された今吉 直樹氏はこの日曜日に行われた霧島市議選で市議となった。
 
2週間前の衆議院選挙では、奄美の属する選挙区では保守系のベテランが破れ、組織票を持たない新人が選ばれた。昨年から鹿児島県では塩田康一 知事や下鶴 鹿児島市長、日置市の永山市長と組織票に依存しない若手の首長の誕生が続いている。コロナ禍を経て明らかに民意のあり方がクリティカルに、より課題解決本位へと変わって来ていると感じる。そんな時代だ。経済が成長すれば何とかなる、との成長依存政治も、もう通用しない。以前にも書いたが、資本主義は限界を越えて破綻が見えている。正義とは均衡である。小さくとも均衡の中にしか真の豊かさは存在しない。これまで、この「ほぼさろ」で書き連ねて来た事の大筋もそこにある。

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