松尾 匡
コロナショックドクトリンについての近著の「あとがき」ちょっと出し
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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コロナショックドクトリンについての近著の「あとがき」ちょっと出し

松尾 匡

【緊急】安倍元首相銃撃事件に対する左派のコメントに見られる表現について

安倍晋三元首相の暗殺事件に際して、テロによる言論封殺は決して許されるものではないということは大前提として強調した上で、左派、リベラル派の側からも、これを表現するのに「いかなる暴力にも反対」というフレーズが使われるのは自縄自縛になる恐れがあると思いますので、再考をお願いしたいと思います。

現在でも、パレスチナでも香港でもミャンマーでも、ロシア軍占領下でのウクライナでも、支配する者の側の圧倒的暴力に対して、民衆が抵抗するための暴力が見られます。これには私たちは反対するわけにはいかない。そのような状況に追い込まれたことに心を痛めつつ、断固民衆の側に立たなければならないでしょう。
日本でも、戦闘的労働運動や沖縄の基地反対運動などの現場において、国家権力や右翼・暴力団の凶暴な暴力的弾圧が加えられた時に、対する丸腰の民衆の抵抗が暴力的になることはあり得ます。それに対して一律に反対と言うわけにはいかないのです。

「いかなる暴力」という言葉は使わずに、今回の事件のようなテロに反対する立場表明をするようお願いしたいです。


参議院選挙で応援している人

さて、今回の参議院選挙では、れいわ新選組の全国比例区候補の長谷川ういこさんを応援しています。薔薇マークキャンペーンもれいわ新選組もできるずっと前から、いっしょに反緊縮経済政策を研究してきた仲間です。れいわ新選組の経済政策をいっしょに作ってきました。
それから、選挙中最初の土日は、金曜日にコロナワクチンの三回目を接種したため体調不良で何もできませんでしたが、二週目の土日は大阪に、れいわ新選組のやはた愛さんの応援にいきました。
二人とももう少しというところまで追い上げているそうなので、なんとしても当選してほしいと思っています。

他方、東京選挙区の山本太郎さんは、当初当選と思われていましたが、維新候補が猛烈に追い上げ、落選の危機にあるということです。それは大変なことだと思います。
私は東京にほとんど知り合いがありませんが、お知り合いのいるかたはぜひ声をかけていただきますようお願いします。
(そもそも東京で維新さんの当選を許してはなりません。共産党候補ともども当選して維新候補を弾き出してほしいところです。)

今度選ばれる参議院議員の任期中には、日銀の正副総裁の改選があります。国会の承認人事では、与党から造反が出て、一票、二票で結果が変わるという事態もあり得ます。それゆえ、経済のことがわかっている候補者が一人でも多く当選することは重要なことなので、ぜひよろしくお願いします。

コロナショックドクトリンの本が近く出ます

さて、このかん、コロナ禍をチャンスとした中小個人事業淘汰政策がとられてきました。これを私は「コロナショックドクトリン」と呼んで分析、批判してきましたが、今、それを執筆した本が最終校正段階に入りつつあります。
当初はこれを参議院選挙の前に出版して、なんとか選挙に影響させることを企図していましたが、いろいろあってうだうだしているうちに、とうとう入院・手術するというハプニングまであって、選挙に間に合わせることはできませんでした。

もう選挙戦も最終日になってしまいましたが、せめて、つい先日書いたこの本の「あとがき」の一部を以下に転載することで、選挙戦がんばっているみなさんに、みなさんのがんばりがいかに重大な意義を持っているのか共有していただき、ラストスパートの後押しになることを期待したいと思います。


近著の「あとがき」より

岸田首相の「貯蓄から投資へ」で持つのは海外進出企業の株

本文脱稿後の動きにもいろいろあるが、ここでは岸田首相が打ち上げた「貯蓄から投資へ」スローガンの「資産所得倍増プラン」について取り上げたい。

もちろんこれは、爆進する高齢化に対して、年金に公金をなるべく出さず対処したいという財政緊縮路線の一環ではあるし、鳴り物入りの「所得倍増」の「なれの果て」がこれかというツッコミもあるだろう。そもそも株で運用するような余剰資金自体生まれようがないという人も多いことだろう。リスク回避的な日本国民はそんな呼びかけには乗らないだろうという意見もある。
しかしここではあえて、このスローガンがある程度実現されたならば何が起こるかを考えてみたい。年金に公金を出さずにかえって削減すると見込まれるならば、人々が株式投資のような自己防衛策を模索するのも自然なことである。しかも、財政緊縮のために景気が停滞する中で、何とかひどい大不況に落ち込まないようにするために低金利が続いてきた。これからもそうだとみんなが予想するならば、なおさらそうした動きは起こってくるだろう。

現日本政府はこうした資金運用を日本株に引き込みたいわけだろう。では、そのために買ってもらえるような日本企業の株はどんなものだろうか。内需は、コロナショックドクトリンと対少子化無策で、明るい未来が見えない状況である。輸出は当面目の前では円安で有望に見えるが、長期的にはやはり淘汰の対象である。
結局、最ももうかるのは、新興国への海外進出を積極的に行って、海外からの利潤送金によって潤う企業の株ということになる。では日本の多くの普通の庶民が、海外進出日本企業の株で老後資金を運用するようになったらどうなるだろうか。

帝国主義は本来日本の労働者にとって損

本書をつうじて、日本資本主義が企業進出を通じて東南アジアなどを経済支配する帝国主義化の危険について論じてきた。しかし筆者はその路線は一部の支配層の利益になりこそすれ、日本の多くの庶民の賛同を得られるものではないとみなしてきた。

進出先の賃金が安く、その他の労働条件が悪ければ、それだけますます海外進出で空洞化が進んで、日本国内の雇用が失われる。安い輸入品との競合のせいで、雇用を守りたければ賃金抑制を受け入れざるを得なくなる。そして、やはり安い輸入品との競合で、中小個人事業の淘汰が促進される。

逆に、進出先の労働者が搾取しづらい労働者であればあるほど、彼らが日本企業の支配と闘ってくれるほど、日本国内の雇用も営業も守られるのである。だから一時的にナショナリズムに目が眩んで帝国主義に賛同することがあっても、多くの庶民にとってはそれは、結局は自らの首を絞めることになる。だから条理を説いて利害に訴えれば、帝国主義化をストップさせることは可能である——このように考えてきた。

日本の庶民にとって侵略が「トク」になるとき

しかし多くの庶民が海外進出企業の株で老後資金を運用していた場合には、話は逆になる。進出先の賃金が安く、その他の労働条件が悪いほうが自分達の利益になることになる。それだけますます企業がもうかるので、株の配当も株価も高くなるからである。
本文中では、日本企業が海外進出先で激しい労働運動に直面して、日本人の駐在員が吊し上げられたりしたら、自衛隊を派兵しろとの世論がおこるかもしれないと述べた。長くストライキなど目にしていない日本では、関生労組程度の世界標準の当たり前の労働運動を見て目を回し、まるで犯罪集団のようにみなす動きが現れる。ましてや低賃金を享受しようというスケベ心でやってきた外国企業が、当然受けるだろう報いを目にした時、ショックを受けて、ナショナリズムも刺激されて世論がいきりたつということは当然考えられる。
だとしても、物質的利害が絡まず、むしろ本来は進出先労働者が闘ってくれたほうが雇用が守れて得になっているかぎり、そんな賛同も一時のことにとどまるだろう。ところがいまや、激しいストライキが起こったら、自分の老後資金運用のための株価が下がってしまうとなったらどうか。

ましてや、企業進出先一帯がテロリストに占領されたら、自分の持っている株が暴落するかもしれない。革命が起こって進出企業が国有化されたら、自分の持っている株が紙切れになってしまうかもしれない。政変が起こって、新政府が中国の勢力圏に入ることを選びそうな場合、日本企業は今後、中国からの進出企業と比べて不利益を受けて株価が低迷するかもしれない。

そうなったとき、株価を心配するスケベ心は後ろに持ちつつも、安全保障論などの国益論を自分でも大真面目に信じて言い立てて、自衛隊を派兵して「テロリスト」や「簒奪者」を放逐し、日本企業を実力で守るよう求める世論が湧き立つだろう。
今はただ政府や一部の支配層の者だけが、多くの労働者、庶民の雇用・生業確保の利害に反して、東南アジア進出企業防衛体制の確立に向けて法整備や改憲を進めようとしているにすぎない。いずれは多数の民意のもとに粉砕できるだろう。ところが、多数の民衆が自分の利害がかかったものとして自衛隊の侵攻を求めたときには、それを覆すことは非常に困難になるだろう。

松尾 匡
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