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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問107-114【生物】論点:ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット

第107回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問114

一般問題(薬学理論問題)【生物】


問107-114
Q. 
薬物Aに感受性のある培養細胞を用いて、その細胞内の代謝調節タンパク質Bについて調べることにした。操作の流れを図1に示す。培地に薬物Aを添加して細胞を1時間培養した後、培地を除去してから細胞を回収した。細胞を破砕し、低速度の遠心操作で核画分を分離回収した。さらに高速度の遠心操作で、核を除いた細胞の膜画分を分離回収した。また、対照として、培地に薬物Aを添加しなかった細胞についても同様の操作を行った。

ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)にて、核画分及び膜画分中のタンパク質を分離し、タンパク質Bに対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットを行った。SDS-PAGEは、還元剤(2メルカプトエタノール)を添加した条件と添加しない条件の2通りの方法で行ったところ、図2に示す結果を得た。
以上の実験とその結果から推測される記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。


第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢|

1. タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である。
2. タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。
3. タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。
4. タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される。
5. タンパク質Bの分子量は、約50kDaである。


こんにちは!薬学生の皆さん。
Mats & BLNtです。

matsunoya_note から、薬剤師国家試験の論点解説をお届けします。
苦手意識がある人も、この機会に、薬学理論問題【生物】を一緒に完全攻略しよう!
今回は、第107回薬剤師国家試験|薬学理論問題 / 問114、論点:ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットを徹底解説します。

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松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問107-114【生物】論点:ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット

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滝沢 幸穂  Yukiho Takizawa, PhD

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設問へのアプローチ|


第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

第107回薬剤師国家試験の問114(問107-114)では、ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットに関する知識を問われました。
図が3つも入った問題👑👑👑で、文字数は図と選択肢を含めると…
666文字👽です。

獣の数字(けもののすうじ):
新約聖書』の『ヨハネの黙示録』に記述されている。
引用: ここに知恵が必要である。賢い人は、獣の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。数字は人間を指している。そして、数字は666である。(13章18節)

新約聖書 ヨハネの黙示録
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%A3%E3%81%AE%E6%95%B0%E5%AD%97

でも、ここで焦ってはいけません。

実は、この問題を解くために必要なことは、図2のウェスタンブロットでタンパク質の分子量を確認することだけです。

第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

GPT4oは、今や2つ並んだグラフのxy座標軸上のブロッティングの位置を認識して判断できるので、1分以内に楽勝で回答します。
薬学生の皆さんは、そのくらいのマルチモーダル機能はすでに搭載しているはずです。(^^)/
このような種類の問題の場合、選択肢から読んで、必要な情報にだけアクセスするのが1問を2.5分以内に解くコツです。

まず、基本的な知識について復習しておきましょう。


■■GPT4o


ウェスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、イースタンブロットとは


ウェスタンブロット、ノーザンブロット、サザンブロット、イースタンブロットは、核酸やタンパク質の検出や解析に使用される重要な分子生物学的技術です。
それぞれのブロット法には、対象とする分子や検出原理に違いがあります。


1. ウェスタンブロット (Western Blot)


特性:

ウェスタンブロットは、タンパク質の検出に用いられる技術です。
まず、サンプル中のタンパク質をSDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)によって分離し、その後、ニトロセルロースやPVDF膜に転写します。タンパク質が膜上に固定された後、特異的な抗体を用いて目的のタンパク質を検出します。タンパク質の量や分子量を知るために使われるこの手法は、タンパク質の機能や発現レベルの解析において非常に強力です。


原理:

  • 電気泳動で分子量に応じてタンパク質を分離し、抗体による特異的な認識でタンパク質を検出する。二次抗体と酵素による発光や発色反応により、検出が可能です【1】。


2. ノーザンブロット (Northern Blot)


特性:

ノーザンブロットは、RNAを対象とした技術です。
RNA分子を電気泳動でサイズごとに分離し、膜に転写して、特定のRNA配列に相補的なプローブを用いて検出します。主に遺伝子の発現レベルや転写産物の存在を確認するために使用されます。この技術では、mRNAの量やサイズを測定できるため、遺伝子発現の研究において非常に重要です。


原理:

  • RNA分離後、膜への転写と特異的なプローブ(通常は放射性標識または蛍光標識)を用いる。これにより、サンプル中の目的のRNAを高感度で検出できる【2】。


3. サザンブロット (Southern Blot)


特性:

サザンブロットは、DNAの検出と解析に使用されます。
DNAを制限酵素で切断し、電気泳動で分離した後、膜に転写し、特定のDNA配列を含むプローブを使って検出します。この技術は、ゲノム解析や遺伝子多型の研究、特定のDNA配列の有無を確認するのに利用されます。


原理:

  • DNA分子を制限酵素で切断し、ゲル電気泳動によって分離した後、膜に転写し、標識されたプローブで目的のDNA配列を検出します【3】。


4. イースタンブロット (Eastern Blot)


特性:

イースタンブロットは、ウェスタンブロットの変法であり、タンパク質の翻訳後修飾を検出するために用いられます。
たとえば、糖鎖やリン酸化といった修飾の有無を確認することができます。通常、ウェスタンブロットと同様にタンパク質を電気泳動で分離し、膜に転写した後、特定の修飾に対するプローブや抗体を使用して検出します。


原理:

  • タンパク質の翻訳後修飾を検出するために、修飾に特異的な抗体やレクチンなどを用いる。例えば、リン酸化タンパク質に対する特異的抗体を使ってリン酸化の程度を確認することができる【4】。


5. 違いのまとめ


  • 対象分子:

    • ウェスタンブロット:タンパク質

    • ノーザンブロット:RNA

    • サザンブロット:DNA

    • イースタンブロット:タンパク質の翻訳後修飾


  • 使用するプローブ/検出方法:

    • ウェスタンブロット:抗体によるタンパク質検出

    • ノーザンブロット:相補的プローブによるRNA検出

    • サザンブロット:相補的プローブによるDNA検出

    • イースタンブロット:修飾に特異的な抗体やレクチンによるタンパク質修飾の検出


Ref.


  1. Laemmli, U. K. "Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4." Nature, vol. 227, 1970, pp. 680–685.

  2. Alwine, J. C., Kemp, D. J., & Stark, G. R. "Method for detecting specific RNAs in agarose gels by transfer to diazobenzyloxymethyl-paper and hybridization with DNA probes." Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 74, no. 12, 1977, pp. 5350–5354.

  3. Southern, E. M. "Detection of specific sequences among DNA fragments separated by gel electrophoresis." Journal of Molecular Biology, vol. 98, no. 3, 1975, pp. 503–517.

  4. Towbin, H., Staehelin, T., & Gordon, J. "Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: procedure and some applications." Proceedings of the National Academy of Sciences, vol. 76, no. 9, 1979, pp. 4350–4354.


■■Grok 2 mini (beta)


詳細に関しては、後述のLectureで論点を解説します。
以下に目次を示します。


目次


第1章:SDS-PAGEの原理と特性
第2章:SDS-PAGEの手法
第3章:ウエスタンブロットの原理
第4章:ウエスタンブロットの特性
第5章:ウエスタンブロットの基本的な操作法
第6章:ポリクローナル抗体の役割と特性
第7章:実際の実験手順と注意点


それでは、論点を整理しておきましょう。

今回、GPT4oにお願いして、論点をまとめてもらいました。
完全攻略を目指せ!


■■GPT4o


総合的な論点


  • 図2はSDS-PAGEの結果であり、還元剤添加の有無によって異なる分子量のタンパク質が確認されています。

  • SDS-PAGEは、タンパク質をその分子量に基づいて分離する手法です。通常、SDSはタンパク質を負電荷化し、ポリアクリルアミドゲル中でサイズに基づいて分離されます。


  • 還元剤(2-メルカプトエタノール)を添加することで、ジスルフィド結合が解離し、タンパク質のサブユニットが個別に分離される可能性があります。

  • 一方、還元剤を添加しない条件では、ジスルフィド結合を持つタンパク質は、結合を保持した状態で分離される可能性があります。


図2の結果からは、還元剤添加により複数のバンドが見られ、これはジスルフィド結合の有無やタンパク質の構造変化に関連していると推測できます。


各選択肢の論点および解法へのアプローチ方法


選択肢1: タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である


  • アプローチ:
    核画分と膜画分のSDS-PAGEの結果を比較し、タンパク質Bがどの画分に主に存在しているかを確認します。核画分(レーン1、レーン3)でのみバンドが見られる場合、タンパク質Bは核に局在する可能性があります。また、核画分と膜画分の両方にバンドがある場合、膜やその他の構造にも存在する可能性があります。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢2: タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ


  • アプローチ:
    還元剤非添加(左)と還元剤添加(右)の結果を比較します。もし還元剤添加によって分子量が異なるバンドが現れる場合、それは分子間ジスルフィド結合が解離した結果として、サブユニットが分離したことを示唆します。このため、還元剤添加によって複数のバンドが観察される場合、分子間ジスルフィド結合を持つ可能性があります。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢3: タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する


  • アプローチ:
    レーン1、3(核画分)に約30kDaのバンドが見られるかどうかを確認します。核画分にのみこのサイズのバンドが存在する場合、約30kDaのタンパク質が核内に移行したことを示唆する可能性があります。膜画分との比較も重要です。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢4: タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される


  • アプローチ:
    薬物Aの添加有無によって観察されるバンドの変化を確認します。レーン3とレーン4で複数のバンドが現れている場合、タンパク質Bが切断される可能性が考えられます。さらに、切断後の断片が3つに分かれているかどうかを確認します。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢5: タンパク質Bの分子量は、約50kDaである

  • アプローチ:
    各レーンにおける主なバンドの分子量を推定し、50kDa付近に位置するバンドがあるかどうかを確認します。特に、還元剤添加の有無で一貫して50kDaのバンドが観察されるかがポイントとなります。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

解法を深掘り


選択肢1: タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である


  • 検証方法:
    レーン1(薬物A非添加、核画分)とレーン2(薬物A非添加、膜画分)の比較から、核画分にのみバンドが存在する場合、核内に局在していると考えられます。さらに、レーン3とレーン4の結果も参照し、薬物A添加によって局在の変化があるか確認します。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢2: タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ


  • 検証方法:
    図2の左側(還元剤非添加)の結果と右側(還元剤添加)の結果を比較します。還元剤添加によってタンパク質がサブユニットに分かれる場合、それは分子間にジスルフィド結合が存在することを示唆します。具体的には、右側でより低分子量のバンドが出現するかどうかが重要です。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢3: タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する


  • 検証方法:
    レーン1とレーン3(核画分)に約30kDaのバンドが見られるか確認します。核画分に存在し、膜画分(レーン2、レーン4)には存在しない場合、核内に移行していることが示唆されます。さらに、薬物A添加後のバンドパターンの変化も検証します。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢4: タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される


  • 検証方法:
    レーン3(薬物A添加、核画分)およびレーン4(薬物A添加、膜画分)で、複数のバンドが出現するかを確認します。もし、薬物Aの添加後に特定の分子量で3つのバンドが現れる場合、これはタンパク質Bが3つに切断されている可能性を示唆します。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢5: タンパク質Bの分子量は、約50kDaである


  • 検証方法:
    各レーンにおいて50kDa付近にバンドが存在するか確認します。特に還元剤添加時に、分子量50kDa付近のバンドが安定して観察される場合、タンパク質Bの分子量が50kDaであると推定されます。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

これらのステップで各選択肢を検討することで、実験データに基づいた論理的な推論を行うことが可能です。


楽勝です! 


はじめましょう。

薬剤師国家試験の薬学理論問題【生物】からドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロットを論点とした問題です。


なお、以下の解説は、著者(Yukiho Takizawa, PhD)がプロンプトを作成して、その対話に応答する形でGPT4o & Copilot 、Gemini 1.5 Pro、またはGrok 2 (beta) が出力した文章であって、著者がすべての出力を校閲しています。

生成AIの製造元がはっきりと宣言しているように、生成AIは、その自然言語能力および取得している情報の現在の限界やプラットフォーム上のインターフェースのレイト制限などに起因して、間違った文章を作成してしまう場合があります。
疑問点に関しては、必要に応じて、ご自身でご確認をするようにしてください。

松廼屋|論点解説 薬剤師国家試験対策ノート問107-114【生物】論点:ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット|matsunoya (note.com)

Here we go.


第107回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問114

一般問題(薬学理論問題)【生物】


問107-114
Q. 
薬物Aに感受性のある培養細胞を用いて、その細胞内の代謝調節タンパク質Bについて調べることにした。操作の流れを図1に示す。培地に薬物Aを添加して細胞を1時間培養した後、培地を除去してから細胞を回収した。細胞を破砕し、低速度の遠心操作で核画分を分離回収した。さらに高速度の遠心操作で、核を除いた細胞の膜画分を分離回収した。また、対照として、培地に薬物Aを添加しなかった細胞についても同様の操作を行った。

ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)にて、核画分及び膜画分中のタンパク質を分離し、タンパク質Bに対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットを行った。SDS-PAGEは、還元剤(2メルカプトエタノール)を添加した条件と添加しない条件の2通りの方法で行ったところ、図2に示す結果を得た。
以上の実験とその結果から推測される記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。


第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢|

1. タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である。
2. タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。
3. タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。
4. タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される。
5. タンパク質Bの分子量は、約50kDaである。


■■GPT4o


生物|問 107-114


■論点|ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット


この問題の論点は、タンパク質Bがどの細胞画分に存在し、薬物Aの影響下での変化やその構造に関する特徴を特定することです。
具体的には、SDS-PAGEの結果から得られる情報をもとに、タンパク質Bがジスルフィド結合を持つかどうかや、核への移行、切断パターンについての知識を評価します。


■解説1|


タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。(選択肢2)[正しい]


還元剤非添加時(図2左)と還元剤添加時(図2右)のSDS-PAGEの結果を比較すると、還元剤を添加することで複数のバンドが現れます。
これは、還元剤がジスルフィド結合を解離させ、タンパク質が複数のサブユニットに分かれたことを示唆しています。
このことから、タンパク質Bは分子間ジスルフィド結合を持つことが推測されます。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。(選択肢3)[正しい]


核画分(レーン1、レーン3)に約30kDaのバンドが見られますが、膜画分(レーン2、レーン4)にはこのサイズのバンドが存在しないため、このタンパク質は核内に存在していると考えられます。
特に、薬物A添加後の核画分で30kDaのバンドが強く現れるため、タンパク質Bが約30kDaに切断された後、核内に移行していることが示唆されます。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

■解説2|


  • 選択肢2補足:
    分子間ジスルフィド結合は、タンパク質の高次構造を安定させる役割を果たしています。

    1. SDS-PAGEにおいて、還元剤の添加によりサブユニットに分解されることで、分子量が異なるバンドが複数現れることから、ジスルフィド結合が存在することを示しています。このような結果は、ジスルフィド結合の有無を調べる実験において標準的な現象です。


  • 選択肢3補足:
    約30kDaのタンパク質が核内に移行していることは、核画分で観察されるバンドの存在によって確認できます。

    • 特に、薬物A添加後の核画分(レーン3)で30kDaのバンドが見られることから、薬物Aがタンパク質Bに作用し、その結果タンパク質が30kDaに切断され、核内で機能していることが推測されます。この結果は、薬物刺激による特定のタンパク質の活性化や局在の変化を示す典型的な例です。


■結論|


選択肢2: タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。

還元剤添加によってバンドパターンが変化することから、タンパク質Bは分子間ジスルフィド結合を持つと結論付けられます。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢3: タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。

約30kDaのバンドが核画分に見られるため、タンパク質Bの一部は核内に移行していることが示されています。
薬物A添加によって核内への移行が促進されていると考えられます。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

■補足|


選択肢1: タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である。[誤り]


タンパク質Bは核画分および膜画分の両方に存在していますが、核膜に特異的に局在しているとは限りません。核画分には約30kDaのバンドがあり、膜画分では異なる分子量のバンドが観察されることから、タンパク質Bは複数の部位で異なる形態で存在している可能性があります。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢4: タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される。[誤り]


図2には、薬物A添加後も3つの明確な切断バンドが見られません。切断される場合、明確なバンドが確認されるはずですが、実際には1つの切断しか示されていません。このため、タンパク質Bが3つに切断されるという記述は不正確です。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢5: タンパク質Bの分子量は、約50kDaである。[誤り]


タンパク質Bの分子量は、SDS-PAGEの結果から約50kDaではなく、100kDaや30kDaなど、複数のバンドが観察されているため、分子量が単一ではないと考えられます。特に、分子間ジスルフィド結合を持つことから、サブユニットを形成するための大きな複合体である可能性が高いです。

レーン1|薬物A非添加, 核画分| レーン2|薬物A非添加, 膜画分|
レーン3|薬物A添加, 核画分| レーン4|薬物A添加, 膜画分|
図2 第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

■Lecture
論点解説 ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE) / ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット 概説


■■Grok 2 mini (beta)


第1章:SDS-PAGEの原理と特性


SDS-PAGE(ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミド電気泳動)の基本原理


SDS-PAGEは、タンパク質をその分子量に基づいて分離する方法で、広く生化学や分子生物学の研究で使用されています。この技術の中心的な原理は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がタンパク質に結合することで、タンパク質の二次および高等構造を解きほぐし、負電荷を付与することです。これにより、タンパク質はその分子量に応じて一様に帯電し、電気泳動中の移動速度が直接その分子量を反映することになります。


特性


  1. 帯電と分子量の関係: SDSはタンパク質に約1.4g SDS/gタンパク質という比率で結合し、ほとんどのタンパク質に対してほぼ均等に負電荷を与えます。これにより、分子量のみがタンパク質の泳動速度を決定します。

  2. 分離能: ポリアクリルアミドゲルは非常に高い分解能を持ち、分子量がわずかに異なるタンパク質でも明瞭に分離できます。ゲルの濃度やビスアクリルアミドの濃度を調整することで、より細かい分離が可能です。

  3. 還元条件: 多くの場合、β-メルカプトエタノールやジチオトレイトール(DTT)などの還元剤を用いてタンパク質のジスルフィド結合を切断し、単量体として分離します。

  4. 非還元条件: 還元剤を使わない場合、タンパク質はその複合体や二量体、三量体などの形態で泳動されます。これにより、タンパク質の複合体状態を解析するのに有用です。


Ref. 


  • Laemmli, U.K. (1970). "Cleavage of Structural Proteins during the Assembly of the Head of Bacteriophage T4." Nature, 227, pp.680-685. この論文はSDS-PAGEの標準的な手法を確立したもので、多くの現在のプロトコルがこの研究に基づいています。


  • Weber, K., & Osborn, M. (1969). "The Reliability of Molecular Weight Determinations by Dodecyl Sulfate-Polyacrylamide Gel Electrophoresis." Journal of Biological Chemistry, 244(16), pp.4406-4412. この研究ではSDSがタンパク質にどのように結合し、その移動度にどのように影響を与えるかについて詳細な解析が行われています。


このような研究が基礎となり、SDS-PAGEは現在、タンパク質の分子量決定や純度チェック、量的な比較など、多岐にわたる用途で使用されています。


第2章:SDS-PAGEの手法


SDS-PAGEの手法


SDS-PAGEのプロトコルは、タンパク質を分離するための複数のステップから成り立っています。以下は一般的な手順の概要です:


  1. 試料準備:

    • タンパク質試料をSDSサンプルバッファーと混合します。このバッファーはSDS、β-メルカプトエタノールやDTT(還元剤)、グリセロール(試料の密度を上げるため)、溶媒(通常はトリシンまたはリン酸緩衝液)、溴化フェノール(追跡染色剤)などを含みます。

    • 試料を95-100°Cで数分間加熱してタンパク質を完全に変性させます。

  2. ゲルの準備:

    • 分離ゲルとスタッキングゲルを調製します。分離ゲルは高濃度(通常7.5-15%)のポリアクリルアミドでできており、タンパク質の実際の分離が行われます。スタッキングゲルは低濃度(約4%)で、タンパク質を均等に並べる役割を果たします。

  3. ゲルへ試料の装填:

    • 試料をゲルのウェル(溝)に装填します。ウェルはスタッキングゲルの上に形成されます。

  4. 電気泳動:

    • 電気泳動装置にゲルをセットし、緩衝液(通常はSDS走行バッファー)を加えます。

    • 一定の電圧(例えば100V)をかけ、タンパク質をゲル中に移動させます。

  5. 染色と可視化:

    • 電気泳動後、ゲルを染色してタンパク質バンドを可視化します。コオマシーブリリアントブルー染色が一般的に使用されますが、より感度の高いシルバーステインや蛍光染色もあります。

  6. 解析:

    • バンドの位置を測定し、分子量マーカーを基準にタンパク質の分子量を推定します。また、染色強度からタンパク質の相対量を評価することも可能です。


手法の特性と注意点


  • 高分解能: SDS-PAGEは分子量のわずかな違いでも分離可能ですが、ゲルの濃度や走行条件が重要です。

  • 定量性: 染色条件が一定なら、染色強度はタンパク質の量と比例しますが、過度のサンプル量は分離能を低下させます。

  • 再現性: 実験条件を厳密に管理しないと、結果の再現性が損なわれます。特にゲル作製、走行条件、サンプル準備の各ステップです。

  • 限界: 非常に小さいタンパク質や非常に大きなタンパク質の分離には適さないことがあります。


Ref.


  • Schägger, H., & von Jagow, G. (1987). "Tricine-sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis for the separation of proteins in the range from 1 to 100 kDa." Analytical Biochemistry, 166(2), pp.368-379. この論文では、低分子量タンパク質の分離に特化した改良手法が紹介されています。


  • Fairbanks, G., Steck, T. L., & Wallach, D. F. (1971). "Electrophoretic analysis of the major polypeptides of the human erythrocyte membrane." Biochemistry, 10(13), pp.2606-2617. この研究は、膜タンパク質の分離におけるSDS-PAGEの有用性を示しています。


SDS-PAGEの手法は、多くのタンパク質解析の基礎を成す技術であり、改良と応用が進むにつれてその精度と範囲が広がっています。


第3章:ウエスタンブロットの原理


ウエスタンブロット(Western Blot)の基本原理


ウエスタンブロットは、特定のタンパク質を検出するための技術であり、SDS-PAGEで分離されたタンパク質を免疫学的検出に利用します。この手法は以下のステップから成り立っています:


  1. 電気泳動後のタンパク質の転写:

    • SDS-PAGEで分離されたタンパク質を、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)膜やニトロセルロース膜に移すプロセス。これは「blotting」と呼ばれます。電気泳動を利用してタンパク質をゲルから膜に移します。

  2. ブロッキング:

    • 膜をブロッキングバッファー(通常は無脂肪乳製品やBSA)で処理し、非特異的な抗体結合を防ぎます。

  3. 一次抗体の結合:

    • 特定のタンパク質を認識する一次抗体を加え、ターゲットタンパク質と抗体が結合します。

  4. 二次抗体の結合:

    • 一次抗体に結合する二次抗体を加えます。二次抗体は通常、エンザイムや蛍光色素で標識されており、検出を容易にします。

  5. 検出:

    • 化学発光(ECL)や蛍光を用いて、二次抗体が結合した位置を可視化します。


原理の特性


  • 特異性: ウエスタンブロットは非常に高い特異性を持ち、特定のタンパク質の存在やその修飾状態を確認することができます。

  • 定量性: 適切な制御と標準化を施すことで、タンパク質の相対量を定量することが可能です。

  • 分子量の確認: SDS-PAGEと組み合わせることで、タンパク質の分子量を同時に確認できます。


Ref.


  • Burnette, W. N. (1981). "Western blotting: electrophoretic transfer of proteins from sodium dodecyl sulfate--polyacrylamide gels to unmodified nitrocellulose and radiographic detection with antibody and radioiodinated protein A." Analytical Biochemistry, 112(2), pp.195-203. この研究はウエスタンブロット手法を最初に公表したもので、その基本的なプロトコルを確立しました。


  • Towbin, H., Staehelin, T., & Gordon, J. (1979). "Electrophoretic transfer of proteins from polyacrylamide gels to nitrocellulose sheets: procedure and some applications." Proceedings of the National Academy of Sciences, 76(9), pp.4350-4354. この論文では、タンパク質の電気泳動後の膜への転写に関する詳細な手法が記述されています。


ウエスタンブロットは、分子生物学や生化学で、タンパク質の存在、量、修飾状態などの情報を得るための主要な手法となっています。


第4章:ウエスタンブロットの特性


ウエスタンブロットの特性


ウエスタンブロットは、その特異性と多様な応用可能性から、多くの実験手法の中でも特に重要な位置を占めています。以下はその特性に関する詳細です:


  1. 高特異性:

    • ウエスタンブロットは、抗体を用いるため、非常に高い特異性を持ちます。特定のタンパク質を他の多くのタンパク質から明確に識別できます。

  2. 定量性と半定量性:

    • 適切な内部標準や外部標準を用いることで、タンパク質の量を定量的に評価することが可能です。しかし、完全な定量性を達成するためには、検出条件や抗体の特異性、背景ノイズなど多くの要因を考慮しなければならず、実際には半定量的な解析が一般的です。

  3. 分子量の決定:

    • SDS-PAGEと組み合わせることで、検出されたタンパク質の分子量を同時に確認できます。これは特に、プロテアーゼ処理や修飾の影響を受けたタンパク質の解析に有用です。

  4. 改変の検出:

    • タンパク質のリン酸化、ユビキチン化、糖鎖修飾などのポストトランスレーショナル修飾(PTM)を検出することが可能です。これは、特定の抗体が修飾部位に特異的に結合することに基づいています。

  5. 多重検出:

    • ストリッピング技術を用いることで、一つの膜上で異なる抗体を用いた複数のタンパク質を順次検出することが可能です。また、蛍光標識二次抗体を用いることで、同時に複数のタンパク質を検出することもできます。

  6. 差異の解析:

    • 同一実験条件下で異なるサンプル間の比較を行うことで、タンパク質発現の変動を解析できます。これは、細胞シグナル伝達や疾患関連の研究に広く応用されています。


Ref.


  • Taylor, S. C., Berkelman, T., Yadav, G., & Hammond, M. (2013). "A defined methodology for reliable quantification of Western blot data." Molecular Biotechnology, 55(3), pp.217-226. この論文では、ウエスタンブロットの定量性を高めるための方法論が提案されています。


  • Gallagher, S., Winston, S. E., Fuller, S. A., & Hurrell, J. G. R. (2008). "Immunoblotting and Immunodetection." Current Protocols in Cell Biology, Chapter 6, Unit 6.2. このプロトコルは、ウエスタンブロットの基本手法とその特性について包括的に解説しています。


ウエスタンブロットの特性は、その応用範囲を広げ、分子生物学、細胞生物学、免疫学等の多くの分野で不可欠な手法となっています。


第5章:ウエスタンブロットの基本的な操作法


ウエスタンブロットの基本的な操作法


ウエスタンブロットを行うための基本的な操作手順は以下の通りです。これらのステップは、初期のタンパク質分離から最終的な検出までをカバーしています。


  1. サンプル準備:

    • SDS-PAGEバッファーに試料を混合し、通常95-100°Cで5-10分間加熱して二次構造を変性させます。必要に応じて、ジスルフィド結合を切断する還元剤(β-メルカプトエタノールやDTT)を加えます。

  2. SDS-PAGE:

    • 試料を分離ゲルとスタッキングゲルのウェルに装填し、指定された電圧で電気泳動を行います。バンドの位置を追跡できる溴化フェノールを添加しておくと便利です。

  3. 転写(Blotting):

    • 電気泳動後、ゲルをPVDF膜やニトロセルロース膜に配置し、転写バッファーに浸したサンドイッチを作成します。転写装置(ウェット、半乾燥、乾燥式)において電圧をかけ、タンパク質をゲルから膜に移します。

  4. ブロッキング:

    • 膜を5%の無脂肪乾燥ミルクやBSAを含むブロッキングバッファーで処理します。通常、室温で1時間か4°Cで一晩行います。これにより、非特異的な抗体結合を防ぎます。

  5. 一次抗体の反応:

    • ターゲットタンパク質を認識する一次抗体を適切に希釈した溶液に膜を浸します。一般的に1-2時間(室温)または4°Cで一晩反応させます。

  6. 洗浄:

    • 抗体結合後の膜を、通常はPBS-T(PBSにTween 20を少量加えたもの)で数回洗浄します。これにより、非結合抗体を取り除きます。

  7. 二次抗体の反応:

    • 一次抗体に結合する標識された二次抗体を加えます。二次抗体は酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、HRP)や蛍光色素で標識されています。反応時間は通常1時間程度です。

  8. 洗浄:

    • 再びPBS-Tで洗浄を行い、非結合二次抗体を除去します。

  9. 検出:

    • 化学発光法(ECL)であれば、ECL試薬を加え、フィルムやイメージングシステムで発光を検出します。蛍光検出の場合は直接イメージングシステムで観察します。

  10. 解析:

    • 結果をデジタル画像として取得し、ソフトウェアを使用してバンドの強度を定量化します。必要に応じて、分子量マーカーを基準にタンパク質の分子量を確認します。


注意点


  • 抗体の希釈: 抗体の希釈度は、抗体の特異性や感度に依存します。プロトコルやメーカーの指示に従ってください。

  • 洗浄の重要性: 洗浄が不十分だとバックグラウンドノイズが増え、特異的なシグナルが埋もれることがあります。

  • 膜の扱い: PVDF膜はメタノールでウェット化する必要があり、ニトロセルロース膜は水和に注意が必要です。


Ref. 


  • Kurien, B. T., & Scofield, R. H. (2006). "Western blotting." Methods, 38(4), pp.283-293. このレビューでは、ウエスタンブロットの基本操作とトラブルシューティングについて詳述されています。


  • Mahmood, T., & Yang, P. C. (2012). "Western blot: technique, theory, and trouble shooting." North American Journal of Medical Sciences, 4(9), pp.429-434. ここでは、ウエスタンブロットの理論と実践的なポイントが解説されています。


ウエスタンブロットは、正確な操作により非常に強力なタンパク質解析ツールとなります。


第6章:ポリクローナル抗体の役割と特性


ポリクローナル抗体の役割と特性


ポリクローナル抗体は、免疫系が特定の抗原に対して作り出す多種類の抗体からなる混合物で、ウエスタンブロットを含む免疫学的解析において重要な役割を果たします。以下では、その役割と特性について詳述します。


役割


  1. 広範なエピトープ認識: ポリクローナル抗体は、抗原上の複数のエピトープ(抗原決定部位)に結合するため、タンパク質の変性や修飾に対して比較的ロバストです。これにより、ウエスタンブロットのような条件下でも特異性を保つことができます。

  2. 高感度: 多数の抗体が一つの抗原に結合するため、検出感度が高い場合があります。特に、低発現のタンパク質の検出に有用です。

  3. 初回スクリーニング: 新しい抗原に対する抗体開発の初期段階では、ポリクローナル抗体がスクリーニングに使用され、特定のエピトープに対するモノクローナル抗体の開発の足がかりとなります。


特性


  1. バッチ間変動: ポリクローナル抗体の生産は動物個体に依存するため、バッチ間で特性が異なることがあります。これは再現性に影響を与える可能性があります。

  2. クロスリアクティビティ: 複数のエピトープに対する認識からくる非特異的な結合(クロスリアクティビティ)が発生しやすいです。これを避けるためには、適切な希釈やブロッキングが重要です。

  3. 量の制限: 動物から得られる抗体の量に限りがあるため、大規模な研究には不向きです。

  4. 長期保存の難しさ: ポリクローナル抗体は長期保存が難しく、特に反復凍結融解は抗体の効力を低下させる可能性があります。

  5. エピトープの多様性: 同じ抗原に対しても、個々の抗体が異なるエピトープに結合するため、免疫反応の多様性が保証されます。


ポリクローナル抗体の使用に際しての注意点


  • 希釈の最適化: ポリクローナル抗体は、過剰使用すると非特異的なバックグラウンドを引き起こすため、適切な希釈率を見つけることが重要です。

  • 温度と時間: 抗体反応の温度や時間の最適化も重要です。特に、長時間のインキュベーションは特異性を失う可能性があります。

  • 予め吸着: 可能であれば、抗原に特異的なポリクローナル抗体を事前に吸着して非特異的結合を減らすことが効果的です。


Ref. 


  • Harlow, E., & Lane, D. (1988). "Antibodies: A Laboratory Manual." Cold Spring Harbor Laboratory. このマニュアルは、抗体技術全般について包括的にカバーしており、ポリクローナル抗体の生成と使用に関する情報が豊富です。


  • Al-Majdoub, M., & El-Sayed, A. (2018). "Polyclonal antibodies production: methods and protocols." Methods in Molecular Biology, 1827, pp.1-17. ここでは、ポリクローナル抗体の生成手法とその特性について詳細に記述されています。


ポリクローナル抗体は、タンパク質の検出においてその特異性と感度から重要な役割を果たしますが、適切な使用法と注意が必要です。


第7章:実際の実験手順と注意点


ウエスタンブロットの実際の実験手順と注意点


ここでは、ウエスタンブロットの実験手順を実践的な視点から解説し、各ステップでの潜在的な問題点とそれに対する対策を提案します。


実験手順


サンプル準備と電気泳動

  • タンパク質試料をSDSサンプルバッファーと混合し、95-100°Cで5-10分間加熱。

  • SDS-PAGE装置に装填し、適切な電圧で電気泳動を行う。


注意点:

  • 加熱時間が長すぎるとタンパク質の分解が進む可能性がある。

  • ゲルポケットへの負荷量が多すぎると、帯広がりが生じる。


転写(Blotting)

  • SDS-PAGE終了後、ゲルから膜へのタンパク質転写。

  • 転写バッファー(通常はトリス・グリシンまたはCAPSバッファー)を用い、電気泳動装置やウェスタンブロット装置で行う。


注意点:

  • 転写時間や電圧を最適化しないと、タンパク質の転写が不完全または過剰となる。

  • PVDF膜の場合は、メタノールで濡らす必要がある。


ブロッキング

  • 膜をブロッキングバッファー(例:5%無脂肪乳、BSA)で処理。


注意点:

  • ブロッキング時間が不十分だと非特異的結合が多くなる。

  • ブロッキング剤が適切でないと、特異的なシグナルが隠れる可能性がある。


一次抗体の反応

  • 抗体が希釈された溶液で膜を処理。


注意点:

  • 抗体の最適な希釈度を見つけることが重要。

  • 反応時間や温度が条件によって異なるため、最適化が必要。


洗浄

  • PBS-Tで数回洗浄。


注意点:

  • 洗浄が不十分だと非特異的バックグラウンドが増える。

  • 過剰な洗浄は特異的なシグナルも除去する可能性がある。


二次抗体の反応

  • 標識された二次抗体を加える。


注意点:

  • 二次抗体も最適な希釈度が必要。

  • 反応時間は一次抗体と同様に最適化が必要。


検出

  • ECLや蛍光を用いて検出。


注意点:

  • 発光検出では、フィルムの露出時間が重要。

  • 蛍光検出では、レーザーの強度や露光時間の設定が鍵。


解析

  • 画像解析ソフトウェアでバンドの強度を定量化。


注意点:

  • 内部標準や分子量マーカーの使用で信頼性を高める。

  • 半定量的な解析のため、結果の解釈には注意が必要。


追加の注意点


  • 全てのステップで清潔さを保つ: 汚染は非特異的なシグナルの原因となる。

  • 適切な冷蔵: 抗体やバッファーは適切に冷蔵保存し、凍結融解を避ける。

  • 記録: 実験条件を詳細に記録し、再現性を確保。


これらの手順と注意点を守ることで、ウエスタンブロットの実験結果の信頼性と再現性が向上します。


Ref. 


この章では具体的な文献を挙げてきませんでしたが、先の章で紹介した文献や、一般的な分子生物学の教科書、ウエスタンブロットに関するプロトコル集を参照してください。


必須問題の解説はこちらからどうぞ。

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薬学理論問題【生物】(1) の解説はこちらからどうぞ。

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すっきり、はっきりわかったら、合格です。


第107回薬剤師国家試験|薬学理論問題 /
問114

一般問題(薬学理論問題)【生物】


問107-114
Q. 
薬物Aに感受性のある培養細胞を用いて、その細胞内の代謝調節タンパク質Bについて調べることにした。操作の流れを図1に示す。培地に薬物Aを添加して細胞を1時間培養した後、培地を除去してから細胞を回収した。細胞を破砕し、低速度の遠心操作で核画分を分離回収した。さらに高速度の遠心操作で、核を除いた細胞の膜画分を分離回収した。また、対照として、培地に薬物Aを添加しなかった細胞についても同様の操作を行った。

ドデシル硫酸ナトリウムを用いたポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)にて、核画分及び膜画分中のタンパク質を分離し、タンパク質Bに対するポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロットを行った。SDS-PAGEは、還元剤(2メルカプトエタノール)を添加した条件と添加しない条件の2通りの方法で行ったところ、図2に示す結果を得た。
以上の実験とその結果から推測される記述のうち、正しいのはどれか。2つ選べ。


第107回薬剤師国家試験 一般問題|薬学理論問題【生物】 問114

選択肢|

1. タンパク質Bは、核膜に局在するタンパク質である。
2. タンパク質Bは、分子間ジスルフィド結合を持つ。
3. タンパク質Bから生じた約30kDaのタンパク質は、核内に移行する。
4. タンパク質Bは、薬物Aで刺激された細胞内で3つに切断される。
5. タンパク質Bの分子量は、約50kDaである。


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