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松野志部彦
2021年5月7日 09:11
明里が、隣町の山にはツチノコがいる、とあからさまな嘘を言い出したのは、ジュニア・テニス・スクールのレッスンを終え、いつもの三人で買い食いしながら帰っているときだった。「熱でもあんのか」「光也には言ってない」彼女は冷ややかに俺を睨む。「ツチノコって?」 冬樹がきょとんと訊ねると、待ってましたとばかりに明里が得意気に説明した。「ツチノコっていうのは未確認生物の一種。ヘビが太くなったような形