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資産運用で損失を出した方が馬鹿なのか?

8月31日に東京地裁に対して三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対して集団訴訟が起こされました。これは、今後の国の「資産運用立国構想」に水を掛ける重大事案です。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061900651&g=eco&p=20230619ds64&rel=pv

 同社は三菱フィナンシャルグループのドル箱と言える稼ぎ頭ですが、今回の件は顧客に寄り添い、金融商品を知り尽くした上で、有利で安全な資産運用を勧めるべき金融機関への信頼を揺るがす出来事です。

 同社が販売した金融商品はクレディスイスが発行したAT1債です。顧客らは、長期視点で、株より安全な運用を目指し、同社の営業を信頼して購入しています。ところがスイスのAT1債は複雑で、企業が倒産しなくても、先々の信用不安を見越して政府が介入した場合はその債券を無価値化できるというものでした。これはスイス独特の法律で、実際の目論見書にフランス語、ドイツ語などで記載しています。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、従来問題が起きていなかったためか、株よりも安全であり、クレディスイスの財務健全性が優れていることを謳い、長期安全性を求める一般の顧客に販売していました。ネット上のコメントでは、「金に目が眩んだ富裕層」と書かれていますが、それは色眼鏡というものでしょう。

 問題は、同社が政府介入した時点でAT1債が無価値になると顧客に説明していなかったことです。かつ、同社の営業も、そういう条項があることを十分に教育されていなかったようです。ですので、クレディスイスの取り付け騒ぎが起きた本年3月中頃にスイス政府が資金注入する際には、同社の営業職は喜んでいました。つまり営業ですら、よく理解できていない商品を、一般の顧客に、安全性が高いとして会社が販売させたということです。

 投資は自己責任です。ただこの言葉が一人歩きして、証券会社が何を売ろうが、あるいはどう説明しようが、誰に紹介しようが、責任は無い。
損した投資家(資産運用した人達)が馬鹿だった、ということが罷り通るようになると、国の戦略である資産運用立国構想などは吹き飛んでしまいます。

 証券会社には金融商品への深い知識と、それに基づく的確なアドバイスと、顧客の資産を増やすのだという崇高な理念が求められるべきです。だからこそ高い手数料を取れるのです。同社は手数料としても、業界ではもっとも高い手数料を取っています。つまりプロとしてのサービスを提供する見返りとして手数料を請求しています。

 今回の集団訴訟にはいわゆる富裕層の方もいますが、同時にごく普通のサラリーマンを退職した年金暮らしの高齢者もいます。他人事ではありません。NISAを初め、将来のために預金や運用をしている一般庶民も被害を受ける可能性があったのです。そういう普通の国民が、長期に安心して資産運用できる制度であるべきであり、倫理に反した金融機関にはそれ相応の処罰があってしかるべきだと思います。
 そうでないと、一般の我々庶民に取って資金運用立国など遠い世界の話になっていきます。

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松野尾 萌
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