集団訴訟を起こされているが、その後どうなったのだろう?
金融庁から5月に三菱モルガン・スタンレー証券は、無価値化したクレディスイスAT1債の販売額が国内で突出していることを事由にして報告を求めた。その後にどうなったかの報道が全くない。
一方で8月31日に同社はAT1債購入者から集団訴訟を起こされている。3月に起きた無価値化パニックが一段落して、専門家が改めて調べていくと、スイス金融機関発行のAT1債は、緊急時の政府介入や合併によって無価値化される条件であることが目論見書に書かれていることが判った。
ところが、三菱モルガン・スタンレー証券の社員はそれを十分認識していなかったようで、3月に合併の話や政府介入の可能性が報じられると、これで何とかなると胸を撫で下ろしていた様子が窺える。ところが実際は、それは「よかった」のサインではなく、「無価値化される」という赤信号だったことを同社は理解していなかった。少なくとも現場の営業は理解していなかったと思慮される。
まとめると、商品の危険性や特殊性を理解しないまま、投資未経験者を含む顧客に販売して良い商品にカテゴライズしていた。これは、そもそも証券会社としての責任を果たしているのか疑問を覚える。証券会社が把握できないリスクを顧客の自己責任だと押し付けるのは、もはやプロとは言えないだろう。
金融庁への報告がどういう内容だったかは明らかにされていない。しかし国が、資産運用立国を目指すのであれば、証券会社を始めとする金融機関は商品の複雑性やリスクを自ら深く理解するべきであるし、危ないものであれば顧客に紹介したり、販売するべきでは無いだろう。
この重要な部分を金融庁はしっかり把握できているのだろうか。それとも資産運用立国は絵空事だけの話で、岸田内閣が退陣すれば消えて無くなると先読みしているのだろうか。
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