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カーボンニュートラルの見える化と中小企業

はじめに
 私は、本業は会社員の企業内診断士です。現在は事業企画部門に所属しており、その中の業務の一つが事業部内でのカーボンニュートラルの推進です。
推進業務の立ち上げから主導してきたため、世界各国の政策、業界動向のリサーチ、社内データを収集してのCO2計算、その排出量削減目標の設定まで、全て自分でこなしてきました。
ここでは、カーボンニュートラルとは?、から、中小企業に求められるカーボンニュートラルまで、見える化に焦点をあてています。述べるにあたり、自分の業務の経験を元に話すこと、専門用語は可能な限り使わないことを意識しました。

カーボンニュートラルとは?
 脱炭素とも呼ばれますが、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる」ことです。その温室効果ガスの大半を占めるのがCO2となるので、いま世界でCO2削減が叫ばれています。

環境省「脱炭素ポータル」

なぜカーボンニュートラルが必要なのか?
 地球温暖化の進行を抑制するためです。地球温暖化により気候変動が生じ、異常気象の激化、海面上昇、生態系の変化をもたらします。
2023年の世界平均気温は産業革命前に比べて約1.45度上昇しており、宇都宮に至ってはたった40年で1.9度も上昇し、真夏日の日数も22日増えています。皆様も昔と比べて、夏が暑かったり、災害が増えたりと感じていると思います。

栃木県「とちぎ気候変動対策ポータルサイト」

カーボンニュートラル実現に向けて
 2015年パリ協定で、世界平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度に抑える努力をすることが採択されました。世界各国でも温室効果ガス削減目標を宣言しています。日本の目標は2030年46%削減(2013年比)、2050年カーボンニュートラルであり、今のところ計画通り削減しています。。

環境省「我が国の温室効果ガス排出・吸収量」

企業のカーボンニュートラルに向けた動き
 環境経営への株主、金融機関の評価の高まりもあり、大企業が中心ですが、削減目標を掲げる企業が増加しています。有名なのはAppleで、2030年カーボンニュートラル実現と野心的な目標を設定しています。Appleは、スマホなどの最終製品メーカーですが、実は社内でのCO2排出は少ないです。ただ、CO2はサプライチェーン全体の排出量で考えるので、Appleは、当然サプライヤーに対して、CO2削減を要求することになります。この要求が、サプライチェーンの上流に遡ることになり、中小企業にとっても小さくない影響が徐々に出てくることになります。

環境省「サプライチェーン排出量」

私のカーボンニュートラルの仕事
 ここで、一旦、私の業務の話に移ります。私は、半導体製造装置を作る業界におりますので、Appleを例にとると、Appleに納める半導体を作るメーカーに、装置を納めることになります。半導体メーカーからすると、いかにCO2を排出せずに半導体を作るかが重要になります。
 それは、製造装置であれば省エネ稼働でCO2の排出を抑えているか、また、構成する原材料もCO2を使わずに製造できているか、更にそれらを納入する際の物流で発生するCO2、廃棄時のCO2など、ライフサイクル全体のCO2に目を向ける必要があります。
 私も、その製品のライフサイクルを分解して、それぞれの工程で発生するCO2を実際に算定して、削減効果の大きいCO2工程を洗い出しました。そして、製品の開発目標と整合を取りながらCO2排出量削減目標を設定しました。この目標値は近々に開示される予定となっており、成果として結実することになりました。
 ただ、私はいわゆる大企業にいるため、比較的データを揃えやすい環境にいます。これが、中小企業になると、まずデータがないというところが大半になると思います。

中小企業のカーボンニュートラルの必要性
 現在、中小企業がカーボンニュートラルに取り組む動機としては、昨今のエネルギーコストへの対策が一番にあげられ、今まで述べてきた外部からの要請は5番目にあります。ただ、規制強化やこの外部からの要請は、業種によっては、今後、対応できないと取引停止にも繋がるので、無視できるものではありません。

商工中金「中小企業の意識調査」

カーボンニュートラルの見える化
 カーボンニュートラルの対策として、まずは効果の恩恵を受け易い太陽光の利用や、省エネ機器の導入があがり、補助金も充実しています。ただ、CO2排出量を具体的に見える化しておかないと、その成果を示すことも、CO2排出量の情報提供要求に応えることもできません。

 CO2排出量はこの簡単な式で求められます。排出係数はデータシートがありますので、まずは、活動量である、自社の電気やガス、ガソリンの使用量を調べることから始めます。その後、購入している原材料や物流の手段や距離などのサプライチェーンに広げていきます。
 今回、見える化にフォーカスしましたが、機会があれば、その後の削減についても述べていきたいと思います。

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