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たくましい田舎の母

急な要件(家族が入院したとか、親戚が亡くなったとか)でしか電話をしてこない母から、体調を気遣う電話が来た。


コロナが流行ってから、これで2回目だ。



喘息の私を心配しているようだった。ニュースで見る「東京」の感染状況は、確かに不安を煽る。(このnoteでは、報道メディアを批判したいわけではない。実際、深刻な状況だと思うし。)


私の地元、茨城でも少しずつ感染者が出ている。

母に、田舎の状況を聞くと、みんな「自分はかかっていない。誰かにうつされたら嫌だ」という認識の人と、まったく気にしていない人が多いという。

「自分がかかっているかもしれなから…」と考える人は少ないらしい。




感染した人がいると、あっという間に噂が広がってしまうという。感染者の配偶者の仕事場や、子供の仕事場のことまで情報が広がる。田舎の噂の広がり方は異常だから「かかった時のそういう噂がこわい」と。



私の家は、自営業だ。接客業みたいな業務(飲食ではない)をしている母は、毎日お客さんを出迎える。「用事が済んだから事務所には入らずに帰るよ」と接触を控える人もいれば、マスクをつけることもなく事務所に当たり前のように入ってきて、お茶が出されるのを待つ人もいる。


この時期に、首都圏に住む子供に会いに行く人もいる。


濃厚接触者となり、3週間自宅待機しているにもかかわらず、近所の人や、別の棟に住む家族に頼むこともなくスーパーに「短時間、朝人が少ないタイミングで」買い物に行く人もいる。






母は、私が思っているよりもたくましかった。

平日は父と一緒の、自営業の仕事場にいるのみ。週末に肉や魚をまとめ買いしに行き、平日はその食料と、畑で採れた野菜でやりくりしているという。


布マスクは、お客さんである縫製工場から買ったそう。









話している途中で母は、出かけられなくて「つまらない」と言った。ここから長々と愚痴を聞かされるのかと思ったが、その逆だった。



まず、佐藤健さんと神白石萌音さん出演の「恋はつづくよどこまでも」にハマって、録画した映像を見ているという話をされた。

夕飯のあとは、「恋つづ」を見る母と、バイクをいじったりする父。それぞれのことができて楽しいらしい。



とにかく佐藤健さんにハマっているので、

「最近、佐藤健さんYouTubeチャンネル開設したよ、見てみれば?」と言った。


母「ちょうど今日見たよ!神木くんも出てるやつでしょ?」

私「え〜知ってるんだ」

母「そうだよ〜!最近YouTubeよく見てる。でね、昔の曲聞いたりもしてるんだけどね、髭男にもハマり始めた」

私「まじで…?あ〜あの、運命の人は僕じゃない曲?」

母「そうそうそう!覚えようと思っていっぱい聞いてたら、最近お父さんも口ずさんでるんだよ〜!」

私「なんか、思った以上に活動的だし、YouTube使いこなしてるんだね」

母「影響受けて、髭男のあの曲の楽譜買おうと思ってるの。せっかくピアノが家にあるのにもったいないじゃん?」

私「確かに、私も姉も家にいないしね」

母「そう。でもね、楽譜調べてたら他にも弾きたい曲が見つかって、どの曲の楽譜をダウンロードするか悩んでるの。YouTubeでも、ピアノ弾いてる人いっぱいいるじゃん」

私「あ、そういう系も手伸ばしてるの??」

母「よみぃくんとかハラミちゃんのやつ見てるよ〜すてきだと思って〜」

私「(具体的な名前が出るほど見てるのか…)あ〜都庁のピアノの動画とかもあるよね?」

母「あるある〜いいよね。ピアノもやろうと思うし、テレビにつないで歌えるカラオケみたいなのも買おうかと思ってるんだ。でもね、お父さんは『お金がもったいない』って言うんだよ〜?」

私「そういう機器つないで苦労しながら二人でやるのもいいんじゃない?時代にちょっとは乗っていってさ」

母「でしょ〜?しかも孫たちだって使えるしいいと思うんだよね。家の中でも楽しまないと、このご時世はねぇ。ちゃんと、こういう時だからこそ時間の使い方考えないと」

私「うん」


私はどこかで、母のことを、生活に不満を持ちながらも何も行動しないおばさんだと思っていた。



だから、自分で考えて、工夫して、自発的にどんどん行動している母の様子がちょっと嬉しかった。



相変わらずミーハーだ(そしてそのミーハー心は私にも引き継がれている)けれど、保守的で慎重で、変化を嫌う父とは違って、

体当たり的にぐんぐん引っ張っているのは母なんだな、とちょっと思った。








そんな母でも「毎日自分が作るごはんしか食べられない。自分の味じゃないごはんを食べたい」とこぼしていた。





私はしばらく帰省できないだろうけど、その代わりに、お取り寄せのおいしいグルメでも贈ろうかと思う。

コロナで売り上げが落ち込む生産者さんの食品を買いたいけれど、ひとりでは消費しきれないだろうから結局買わずに過ごしていた。




実家に送れば、消費しきれるし、母も喜ぶ。(たぶん父も)

私はそういう生産者さんの食品を購入できる。



いいことだらけ。

ちょっとでも楽しみが増えるように、私も工夫して動いてみよう。




母に触発されたという日記でした。

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