マガジンのカバー画像

世一杏奈(よいち・あんな)

11
運営しているクリエイター

2020年6月の記事一覧

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (9)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (9)

(前回)

* * * * *

餅は未だ 森の中

紙の住処 家の中

友たる紙は ちっとも帰らぬ

餅はなんだか心配だ

言いつけ守ってカビを生やさず

今もずっと待ち惚け

だんだん だんだん 怖くなる

ずんずん ずんずん 嫌になる

悪い予感は 頭を巡り巡り

いても たっても いられずに

白い体 伸ばして 飛び出した

捕らえられるは覚悟の上

真っ赤な国に向かったさ

* * * 

もっとみる
【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (10)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (10)

(前回)

* * * * *

かすれた笑い含ませて

「ボクの願いを叶えたのだね、ありがとう」

礼を伝える餅は悲しそう

「なに、友のためだ、当然さ」

誇らしげ

喜ぶ紙を目の当たり

餅は喉から必死に訴えた

「これでボクは充分さ。住むなど言わず、一緒に帰ろう」

「何を言い出す。餅は自由と言っただろう」

「今の国の異色のパレード、これは紙がしたのだろう? もう、もう、色は充分だ、これ

もっとみる
【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (終)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (終)

(前回)

* * * * *

林檎の王様 とっても笑顔

餅に感謝を述べていた

「お前が紙の魔女を紹介してくれたおかげで、この国は大変潤った。お主の白い体も、改めて見れば美しい、すまないことをした。お前にも褒美を授けねば」

林檎の王様 とっても笑顔

口は回る 白い餅を褒めたくる

黙って聞くは 怒りの餅

話の見切りを見極めて

鋭い眼差し 王様向けて

「褒美はいらない。代わりに色を、

もっとみる