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世一杏奈(よいち・あんな)

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (1)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (1)

誰が言ったか。

何処で言ったか。

いろどり山のその向こう

クレヨン町も越えてった

キャンパス野原のその先に

真っ赤な国があったとさ

そこはどうして 赤しか許さぬ国なのだ

お城も赤色

服も赤色

食物 粧飾 真っ赤っ赤

お空も地べたも赤色で

見渡す限り 真っ赤っ赤

この国のルールはたった一つ

赤色だけを愛しなさい

* * * * *

お城は今日も賑やかだ

真っ赤な国の王

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (2)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (2)

(前回)

* * * * *

「林檎の王様、あなたはほとほと勿体ない」

「はて、勿体ないとは何事か」

「世界にはいろんな色がある。青、黄、緑に、紫、橙。なにも赤に限らない。それすら知らずに赤だけ好くとは、なんて勿体ない御人だろう」

餅は やれやれ 鼻で溜息

林檎の王様 わなわな 真っ赤

「それは侮辱か! 無礼者! やはり焼いて食ってやろう!」

「いやいや、いやいや、そうではない。落

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (3)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (3)

(前回)

* * * * *

「餅よ。今日は如何様で?」

親しげ話す 紙の魔女

餅はまっすぐ声あげる

「紙に、頼みがあってきた」

「ほう、私に頼みとな」

「実はここから三日の距離に、真っ赤な国があるのだが、どうもそこには赤しかない。ボクが国に入っただけで、白色狂人、喚かれた」

「それはとんだ災難だ」

「だからボクは言ったんだ。真っ赤な国の林檎の王様、いろんな色を知りなさい。ボクの

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (4)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (4)

(前回)

* * * * *

ざわぞぞ ざわぞぞ 大変だ

真っ赤な国に白が在る

がやひそ がやひそ 驚いた

赤をもたざる人が居る

真っ赤な国は大騒ぎ

ザクロ大臣連れて来た

紙の魔女を連れて来た

見慣れぬ色を持つ女

何食わぬ顔で歩く紙

すぐさま城に連れられて

林檎の王様のまんまえへ

あまりの白さに驚愕するは

ぷくぷく太った林檎の王様

ザクロ大臣 大仕事

ようやく終えて

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (5)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (5)

(前回)

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林檎の王様 ご機嫌よろしく

城の窓から 赤青染まった 町を見て

頬をぷくぷく ならしている

林檎の王様 落ち着かず

城の窓先 まだ見ぬ色が 加われば

どんな景色に変わるだろう

* * * * *

王様ギャフンと言わせず物足りず

滞在続ける 紙の魔女

あくる日 チャンスが降ってきた

王様からの 唐突 呼び出し

友のためにと すぐさま承諾

何か

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (6)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (6)

(前回)

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真っ赤な国はお祭り騒ぎ

赤だけなんて愛さない

真っ赤な国は 三色国家

現名称は 原色の国

青も黄も愛しましょう

三色すみれが華やいで

そこらでサンバカーニバル

腰振り 腰振り ラッタッタッ

皆飲め 騒いで ドルンドルン

僕らは赤色 情熱さ

僕らは青色 冷静に

僕らは黄色 好奇心

それそれ みんなで 歌いましょう

ラッタッタッ ドルンドルン

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (7)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (7)

(前回)

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林檎の王様 眉ひそめ

懇願 てのひら 合わせて胸へ

紙の魔女は 困り眉

困惑 てのひら 握って腰へ

「ですが、餅が待っていますし」

「まさか帰ると言いたいか」

「いいえ、滅相もございません。では、一色といわず、複数色を描きましょう。これで最後です、赤の王」

「かまわぬ、どれどれ、やってみよ」

王様の言葉に渋々承諾 

紙の魔女は高らかに

音色を奏

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (8)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (8)

(前回)

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林檎の王様 考えて

紙の魔女に 問いかける

「ところで、提案なのだが、聞いてくれ。私は更なる、更なる色を見てみたい」

「と、言いますと?」

「紙の魔女、この国に住んではくれないか。住んで、毎日、魔法を唱えてはくれないか。そうしたら、その都度、同様、こん盛り、褒美を与えよう」

超過 超過 思考の超過

更なる 王様 提案に

紙の魔女は 生唾ごくり

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (9)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (9)

(前回)

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餅は未だ 森の中

紙の住処 家の中

友たる紙は ちっとも帰らぬ

餅はなんだか心配だ

言いつけ守ってカビを生やさず

今もずっと待ち惚け

だんだん だんだん 怖くなる

ずんずん ずんずん 嫌になる

悪い予感は 頭を巡り巡り

いても たっても いられずに

白い体 伸ばして 飛び出した

捕らえられるは覚悟の上

真っ赤な国に向かったさ

* * * 

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (10)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (10)

(前回)

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かすれた笑い含ませて

「ボクの願いを叶えたのだね、ありがとう」

礼を伝える餅は悲しそう

「なに、友のためだ、当然さ」

誇らしげ

喜ぶ紙を目の当たり

餅は喉から必死に訴えた

「これでボクは充分さ。住むなど言わず、一緒に帰ろう」

「何を言い出す。餅は自由と言っただろう」

「今の国の異色のパレード、これは紙がしたのだろう? もう、もう、色は充分だ、これ

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【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (終)

【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (終)

(前回)

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林檎の王様 とっても笑顔

餅に感謝を述べていた

「お前が紙の魔女を紹介してくれたおかげで、この国は大変潤った。お主の白い体も、改めて見れば美しい、すまないことをした。お前にも褒美を授けねば」

林檎の王様 とっても笑顔

口は回る 白い餅を褒めたくる

黙って聞くは 怒りの餅

話の見切りを見極めて

鋭い眼差し 王様向けて

「褒美はいらない。代わりに色を、

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