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『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(著:万城目学)



奇想天外歴史ファンタジー作家である万城目学さん。

いつも楽しませてくれる壮大なストーリーとは一味違う
小さな町で起こったひと夏の話がこの『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』だ。
万城目さんの新たな魅力を見つけたい方に読んでもらいたい。


主人公は小学校一年生になったばかりのかのこちゃんと
その飼い猫であるアカトラのマドレーヌという名前の猫。

ある雷の日、かのこちゃん家にふらりとやって来たマドレーヌ。
飼い犬である柴犬の玄三郎の妻となる。
かのこちゃんは嬉し恥ずかし思いをへて、すずちゃんという新しい友達ができる。

この2つの世界が玄三郎がマドレーヌに教えた「猫股」という
化け猫の話によって一つになっていく……



小学生が主人公。
ここに万城目ワールドが満載される。
「鼻てふてふ」や本を読んだ人にだけ分かる「茶柱」、
「祝着至極にござりまする」や「刎頚の友」。

かのこちゃんと友達すずちゃんの知的なんだかくだらないのか分からない
このやりとりが面白い。

余計なことまで考えてしまう大人と違って、そんなものが一切ない
小学生二人のストレートなやりとりに心がスカッとする。
かと思えば、マドレーヌの想いを感じとるかのこちゃんの繊細なところに、
ただ面白いだけの小学生ではないことがみえる。


そして犬と言葉が通じたという理由で、外国語を話すことができる猫として
猫仲間から「マドレーヌ夫人」と呼ばれるマドレーヌ。
本の中のマドレーヌの会話すべてが上品で言葉遣いが美しい。
立居振る舞いも優雅でうっとりしてしまう。

そんなマドレーヌが見せる猫の恩返しというべき必死な姿に
その想い届けー!とハラハラドキドキ見守っている自分がいる。
愛するものに対する純粋に届けたいマドレーヌの気持ちがとても熱いのだ。

柴犬の夫、玄三郎といい距離感での何げないやりとりも読んでいて心地が良い。
自立した大人の夫婦感が犬と猫で自然に展開されるところが
やはり万城目さんの世界なのだろう。



自由、上品で優雅、時に必死、深い思いやり。
そんなマドレーヌの生き方に人間である私は激しくあこがれるのです。



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