19930405産経新聞掲載コラム_トリミング

【クイズ】この新聞記事、何年ごろ書かれたものか当てて下さい

「資源節約の新しいマナーを」との見出しが付けられた、このコラムを読んでみてほしい。

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 日本の社会で一消費者として暮らしていると、これをなくせば、さぞ資源の節約になるだろうにと思わせる「なくてすむ物」がやたらに目につく。おそらくその原因は、日本企業の清潔志向にのっとった製品開発と、クレームを嫌っての完璧主義とによるところが大きいだろう。キチンとしていることは美点でもあるが、もはや必要を超えて神経症的に見える。

 例えば、…(中略)…

 現在はどんな小さな買い物をしても、お店の人はポリエチレンの手さげ袋に入れてくれる。この傾向はコンビニに顕著で、ポケットに入るボールペン一本にも袋を機械的につける店員の感覚には驚くばかりだ。私は手持ちのバッグに入る買物では可能な限り辞退しているが、わざわざ「袋いりません」と口に出すのは結構勇気がいるし、時にはおっくうである。

 そこで提案なのだが、手始めにコンビニのレジでは店員がひと言、袋の要・不要をお客に確かめる習慣をマニュアル化してはどうか。なぜコンビニかといえば、今や全国的に店舗数が増加していることと、比較的小単位の買い物利用が多いことからである。加えて、利用客、店員ともに若者の割合が高いので、若い世代に資源感覚を浸透させるには格好の場なのだ。

 慣れれば、「袋は?」「はい」「いいえ」で済み、この程度のやり取りなら煩わしいものではない。あらためてきかれれば、袋をもらわなくても構わない場合も多いことに気がつくだろう。この方式で、アイス用の木さじなども同様にできる。簡単なほんのひと言を添える、こうした意義ある習慣が日常に定着してこそ、日本の生活文化の成熟があるのではないだろうか。

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 ──この記事が提言するように、確かに最近の数年間で、コンビニのレジで「袋いりますか?」と店員に聞かれることが増えた気がします。
 となると、これは2010年以降ぐらいの記事に見えますが、この記事中ではまだ「レジ袋」という言葉が出てこないことにお気づきでしょうか?

 さて、タイトルの【クイズ】の答、

──実はこれ、まだ20世紀の1993年(平成5年)に書かれたものなんです…!

 さらに白状すると、書いたのはまだ作家デビュー前の、無名の小娘ライター時代の私、夏目でした。(※産経新聞で公募していた読者コラム欄に掲載されたもの)

 当時はほとんど話題にされなかったこの提言が、25年以上の時を経て、社会で現実化していることに深い感慨を覚えます。
 当時と違って、27年後の今の私は、レジ袋の良い面も色々実感できるようになりました。
 例えば、マイバッグが手元にない時。小さなゴミ袋が必要な時。ちょっとした手土産を買った時、しかも雨が降ってる!──なんてシチュエーションでは、私もレジ袋を断わらず受け取っています。

 だから、今年(2020年)7月に始まる「全小売店レジ袋有料化」には、納得しています。
 レジ袋が完全に廃止されるのではなく、必要ならそれも選べるという「選択肢」があることが、本当の便利さだと思うから。つまり、本来は「なくて済むようにできるもの」だけれど、事情に応じて付けてもらえる「オプション」と思えば、1枚2円程度の加算を各自が引き受けるのは、フェアなことだと感じるのです。
 そうして手元にやって来たレジ袋は、わが家ではゴミ類のまとめ袋などに再利用して、最終的に「燃やせるゴミ」として始末しています。決して、そのままの形で河川などに流出した末に、海の生物の内臓に悪さをする「海洋プラスチックごみ」になどならないように。
 そんなふうに個々人が「資源を使うこと」に対して「責任を負う」という意識が当たり前に浸透していけば、循環型社会の実現に一歩近づくのではないかと期待しています。                 
                               (夏目祭子)

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