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「因果関係の理解」を越えて

 障がいが重い方とのかかわりを記録する場合、例えばスイッチを押すと音がなることがわかるというような「因果関係の理解」の記述から何年間も脱することが出来ないことがあります。実際、制約が大きい方との学習では、すでに紹介しているスイッチ教材(例えばこちら)やiPadなどを使用することも多くその活動の目的が「因果関係の理解」集約されることがよくあります。私もなんとかこの状況から脱したいと日頃からアンテナを張っています。今回は先輩たちの工夫を紹介しつつ自分の実践も述べていきます。

■シンプルでわかりやすい選択場面を作り選択したという経験を重ねていく

先日、大先輩のM先生から伺ったのは、わかりやすいシンプルな選択の状況を作ってその場面では選択できたというエピソードを積み重ねていく方法です。例えば、下の写真のような型はめ教材で次のような取り組みをしていきます。

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・手を添えて一緒に型を触りながら、「○だね」という言葉を重ねていく。

・型にはめるものを一緒に触りながら、「これは、○だね。これは△だね、どっちの方に入るかな」と問いかける。

・ご本人の発信(視線を向ける、頭を向ける、身体を向ける、手を少し伸ばす等)を捉え、「○の方だね」と言葉でフィードバックする。

・手を添えて、一緒に型にはめてみる。制約の大きい方は自分ではめられないケースが多いので、支援者は手伝うことに躊躇しなくてよい。

・「〇〇ような状況を作ったら、〇〇という方法で選ぶことが出来た」と記録する。

この方法だと教材の直接的な目的である「形の弁別」を超えた「シンプルでわかりやすい選択場面を作り選択したという経験を重ねていく」課題に取り組めます。また、シンプルな場面設定なので「発信を捉え、言葉でフィードバックする」という支援者の基礎の基礎の練習をわかりやすく積み重ねることが出来ます。

■「ぱっと見いくつ?」 「残りの数いくつ?」

SHJ学びサポートでは、ほとんどの生徒さんに円盤はめや円柱差しの課題に取り組む際に、はめ板を提示し「パッと見ていくつ?」という質問や円盤や円柱をはめていきながら「残りの穴の数はいくつ?」という質問をしながら行います。

「パッと見ていくつ?」は、視覚的に全体を把握できているかみるために、「残りの穴の数はいくつ?」合成分解や全体と部分の関係がつかめているかみるために行いますが、答え方は生徒さんによって様々です。

文字盤で答える方や

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「1?2?3?」と数を順番に聞いていくと表情や声、身体の動きで答えてくれる方もいます。

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答えてくれた後には、指で触りながら一緒に実際に何個あるか数えていきます。この時も、自分で指を動かして数える方一緒に手を支えて数える方がいます。

最初は手探りでこのように取り組み始めたのですが、生徒さんの真剣に考えている表情や支援者の何とか発信を読み取ろうとする姿から、正解や不正解で直接的な目的の達成を図ることよりも、じっくり考えて答えてくれるプロセスがご本人にも支援者にも非常に大切だと気づかされました。

■年齢相応のボールを投げてみる

そうすると、こちらの予想をはるかに超えたボールが返ってくることがある。私が初任者の時以来たくさんのヒントや楽しく工夫することを伝えてくれているO先輩の言葉です。数年前から、Keynoteを使って年齢相応の知的好奇心に合った素敵な学習プレゼンを作り特別支援学校の訪問籍で制約の大変大きい方々の学びを支えていらっしゃいます。障がいの重い方々の見た目の重度さからくる社会からの過小評価と戦うために支援機器や教材など入念に準備をして丁寧にご本人の発信を読み取っている姿にいつも感銘を受けています。私も、真似してKeynoteプレゼンを作って特別支援学校でも使っていますが、同僚の中にもKeynote使いが徐々に増えてきました。地道だけれども、押し付けでなく自ら興味を持って主体的に取りに行った支援技術は確実にその支援者のものになり支援のポケットを増やすことが出来ます。決して押し付けず支援者の「主体性」も尊重する。これもO先輩から習った大切な教えです。

黙って見るのではなく、その方の知的好奇心にあった、わかりやす状況を作り、積極的に働きかけること。

この心構えがあれば支援者のできることがたくさんあることに気づかされます。

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