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第二の人生(≒老後)にしたいこと

 隠居願望をもっていた小学生だった。
 これには、当時、食い入るように観ていた『水戸黄門』(TBS系)が影響がしていたに違いない。「年をとったらあんな風に諸国漫遊してみたい」と考えていた。早く“御隠居”になりたかったのじゃ。
 それから数年が経ち、高校の古典の授業で「無常」の世界観を知ると、今度は兼好法師のような世捨人に憧れるようになった。
 そんな老生に、周囲の視線は常に冷ややかであった。

 学校を卒業して釈迦力に働いている「第一の人生」。しかし、ギスギスした社会に籠もっていては、視野は狭くなり心は荒むばかりだと、日々是痛感している次第。
 このままではイケない。感受性を錆びつかせてはイケない。動かぬ心で生きていても面白くない。「人生は愉しむべし」だ。
 だからこそ、「第二の人生」は世俗から離れ、好奇心のおもむくまま広い世界の枯野をかけめぐりたい。地球規模の旅をしたいのだ。例えば……、

 シベリアの雪原でマンモスの生き残りを追跡し
  北極海の氷の上で穴釣りを愉しむ
 モンゴルの草原を白馬(あおうま)で疾走し
  ヒマラヤの山中で雪男の調査をおこない
   パルテノン神殿で御来光を拝んで
    ナポリの大衆食堂でナポリタンを啜る
 サハラ砂漠を「月の砂漠」を歌いながら横断し
  大西洋の真ん中でアトランティスの遺産を探す
   アマゾン川でデンキウナギの蒲焼きを味わい
    イースター島でモアイとにらめっこをする

 「第一の人生」では心を病んでしまったが、「第二の人生」では旅に病んでみたい。
 世界は知らないことで溢れている。その一つひとつを思う存分見て歩き、少年時代の好奇心を呼び覚ましたい。
 そこには、きっと人生を彩る素晴らしい発見があるに違いない。(了)

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