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【随想】 倭人漬物論

 この国の住人は“漬物”である。

 これは、この国の住人の性質について考えた末、老生が導き出した結論である。

 倭人漬物論わじんつけものろん

 歴史的にみて、たが(=規制)のめられた桶(=国土)の中で適度な重し(=支配者)のある状態が、いちばんこの国の住人に合っているように思える。
 例えば、江戸時代。徳川将軍家という軍事独裁者の支配下で、華やかな町人文化が花開いた事実がそれを証明している。現在いま、地球上に町人文化が栄えている独裁国家があるだろうか。
 この国の住人は、限られた範囲内で文化を醸造する性質に長けている世界的にも稀な民族だといえよう。
 しかしその反面、いったん“箍(=規制)”と“重し(=支配者)”が外れると、野放図に振る舞うという“暗黒面ダークサイド”も持ち合わせていることも忘れてはならない。
 そんなことを思うのも、近年、「自由」と「身勝手」を履き違えている住人が多く見られるからだ。
 老生がもっとも苦手とするやからは、国際的なイベントが開催される度に、雨後の筍の如く発生する“にわか愛国者”だ。彼らの中に、日頃からこの国の行末を真剣に考えている者は幾人いるだろうか。“にわか愛国者”の一部は徒党を組み、周囲の迷惑を顧みず、荒らし回る。そのさま、サバクトビバッタの如し。

 今後、この国が生き馬の目を抜く国際社会を生き抜くには、箍と適度・・な重しが必要なのかも知れない。住人もその体制に慣れているだろう。この国は支配層が君臨していた時代が、圧倒的に長かったのだから……。

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