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「アメリカらしさ」を探して

この週末、妻とロサンジェルスのアナハイムにエンジェルズの試合を観に行ってきました。片道600キロの自動車旅行です。旅の目的は、大谷翔平くんを生で見ることでした。

Google map より

いつもは有料記事ですが、今日は無料とします。



パンデミック以来、二人で旅行に行くのは初めてでした。まだ暗いうちに家を出てひたすら車を走らせる。

すごくいい旅でした。ハイウェイ沿いにポツリポツリと100キロおきくらいに姿を現すガソリンスタンドで本場アメリカのジャンクフードを買い込んでひたすらドライブするのは本当に久しぶりで、そして控え目に言って最高でした。ジャンクフードの写真を撮れば良かったです(笑)。

こうした車での長旅は「アメリカ」そのものです。ハイウェイ沿いに時折姿を現す、まるで陸の孤島のような小さな町。鉄道も映画館も有線テレビすらもない、まさしく何もない真ん中の場所(the middle of nowhere)。ガソリンスタンドで売られる、アメリカならではのジャンクフードの数々。

他の国でも人里離れた場所いくらでもありますが、150キロに渡ってコンビニはおろかガソリンスタンドすらないとか、鉄道も走っていないとか、それなのになぜかハイウェイだけはどこまでも続いている国なんて、世界広しといえどアメリカしかありません。ビーフジャーキー、ポテトチップ、チートス、コカコーラ…。色々としょうもないものを食べながらひたすら運転をしていると、自分がアメリカで生きていることを強く実感します。

夜明け。太陽が眩しいです

アメリカはどこに行ったんだろう?

試合は良かったです。大谷翔平は本当にすごかった。彼はスーパーヒューマンですね。控え目に言って最高でした! 

初回から101マイル出す迫力の投球。 7回3安打無失点8奪三振、そして自己最多を更新する13勝目。また、フェンス直撃の先制二塁打を放って、2打数1安打1打点。

とはいうものの、なんかモヤモヤが残る不思議な体験でした。

まず驚かされたのが、球場に詰めかけていた日本人・アジア人の多さです。球場の3分の1から半分近くがアジア系で占められており、しかもみんなOhtaniのジャージを着ていました。「ここは本当にアメリカなのか?」と思ってしまうくらいでした。

僕もそのうちの一人だし、アジアからの観光客がエンジェルスの収益に貢献しているとか、凋落した大リーグ人気を支えているとか、そうした諸々は百も承知です。でもなんというか、"Baseball"というスポーツが持っていた「アメリカらしさ」が損なわれてしまったような気がしたのです。

球場にはもちろん、白人を初めとする多くのアメリカ人たちも詰めかけていました。ただ、その大半が来ているジャージの名前はOhtaniではなく、Trout でした。別に彼らはShohei Ohtani を嫌っているわけではないし、彼の人間離れした活躍には度肝を抜かれているようです。でも、心中穏やかではないかも知れませんね。球場に詰めかけたアジア人の大半は別にエンジェルスや野球を愛しているわけでもなく、ただ単にShohei Ohtaniを見に来ただけです。中には野球ファンもいるでしょうが、多くはただ、アジア人のスーパースターが出現したことに熱狂しているだけです。

グローバルになるということ

でも、こういう複雑な心境って、自分達の国の文化が輸出されてグローバルになるに従い、どこででも発生するものなんでしょうね。

例えば、柔道がいつからかJUDOになり、道着は青くなり、すっかりスポーツ化しました。あるいは寿司はSUSHIになり、ロール寿司が生まれました。クリームチーズ、サーモン、アボカドなどを具材にした「フィラデルフィアロール」や、カニカマ、マグロ、ハマチ、エビ、アボカド等を使った「レインボーロール」などなど。今やSUSHIは、すっかりアメリカ生活に溶け込んでいます。

でも、僕ら日本人がこれを見ると、日本文化が世界で評価された嬉しさと、文化的なエッセンスが破壊されたような苦々しさが入り混じった奇妙な感情を抱かずにはいられません。多分、Baseball以外の何か別のものになりつつある現在の状況を見て、違和感を感じるアメリカ人も少なくないでしょう。あたかも、Baseballが彼らが愛したアメリカの一部ではなくなったようです。

変化を迫られるMLB

今、MLBの人気は低迷しています。これには平均試合時間が以前よりも20分以上伸びたことや、試合のテンポが遅いこと、ヒットが減ったこと、テレビ放送が限られていること、チケットが高すぎること、スター不在などが原因と言われています。また、MLBはインターネット時代に合わせてマーケティング戦略を変えていくことにも失敗してきました。NFLが各プラットフォームを使いこなし、そんな現在のMLBを支えているのは、50代の男性ファンたちと言われています。

でもそんな50代男性のアメリカ人たちが最も苦々しく思うのは、外国語を喋る、野球のファンですらない大量のアジア人観客なのではないかと思ったりです。

ではMLBはかつてのBaseballに戻ればいいのかというと、多分話はそれほど単純ではないでしょう。確かに以前のようなテンポが良い、ヒットが多いゲームに戻る必要がありますが、その一方で、マーケティング戦略を根本的に練り直す必要があると思うのです。

集中を持続できる時間が短くなった今の若い層に合わせたマーケティング方法があるはずですし、スマホでの視聴を前提としたカメラワークの工夫もできるはずです。また、スター不在だって、大谷翔平のような100年に一度の逸材が現れたことで、大幅に改善できるはずです。

Baseballが「アメリカらしさ」を内包しつつも、今の時代に合わせたゲームへと進化していくこと。

多分これが、MLBに課された課題なんでしょうね。そしてそれは、ファンと高齢化やスター不在で人気が低迷する大相撲も当てはまりそうな気がします。

そんな結論が出ないことをあれころえと考えつつ、再びアメリカらしさを満喫しながら、長い帰り道を運転してきました。

今日は日記部分は省略させていただきます。

それではまた明日!

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シリコンバレー、フィリピン、東京の3ヶ所に拠点を置くBrighture English Adacemy 代表、松井博が、日々あちこちで感じ…

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