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岸田戯曲賞にノミネートされてもおかしくない素晴らしい戯曲をもつ舞台が、おそらく岸田戯曲賞の審査員の一人にも観られることなく間もなく終演を迎えようとしていることについて

「映画監督による俳優のためのワークショップ」という「俳優修業の場」を16年に渡って提供していて、常々、俳優修業というか、俳優教育というのは、精神鑑定や精神治療的なところがあるよなと思っていたけれど、と言うのも、ある俳優志望者の演技を阻害しているものはその人の無意識の問題、過剰に発揮されている防衛本能であったり、なんらかのトラウマ的体験をきっかけにして生まれた「深いところに眠る心の傷」だったりして、それを認めたくない本人に認めさせて、問題を慎重に解除したりする作業が必要になる場面を多く見てきているし、そのことによって演技が飛躍的に改善する場面に多く出くわしているからなんだけど、そして、その治療というか改善を、ドライかつシステマティックな方法で提供しているのがマイズナー・テクニックであり、うちの俳優修業の根幹にあって、それを提供してくれているのがBNAWのボビー中西さんや、青山治さん、野田英治さんたちで、しかし、その本人の無意識下に眠るトラウマに起因する問題を解除しつつ、相手役と深いところでつながること(それが素晴らしい演技を生み出す土壌)を実現させるということは、もはや宗教的な行為にも思え、実際、最近は言われないけど昔のボビーさんは禅についても触れておられ、僕の知る限り、マイズナー・テクニックは本当に真の意味で人間の普段隠せている問題を露呈させるしそれの改善を余儀なくさせるという意味において、これはもはや俳優修業というよりも人間修行であって、僕は一度ボビーさんに、俳優のためのではなくて「社会人のためのマイズナーテクニック・クラス」を開設してはどうかと提案したことがあるぐらい。

で、そんなことを、自己諧謔的に戯曲の中に取り入れた公演がこの日曜日まで、ウッディーシアター中目黒で公演中である。

これがだいぶ秀逸な舞台だ。

簡単に言うと、マイズナー・テクニックを使って、個々の問題点をあぶりだし改善させることによって、人間と人間を本当の意味で結びつけることができ、結果として、そのことが個々の人生を豊かにすると信じてクリニックを開設している男の行為が、そのクリニックで治療中の患者たちにどのような影響を与えていくか、という話だ。

戯曲は、もともと「劇団鹿殺し」にいた近藤茶くんが書いている。

近藤茶くんは、劇団鹿殺し所属最中に、うちのワークショップに参加し、ボビー中西さんに出会い、マイズナーテクニックを習得する中で、いろいろあって劇団鹿殺しをやめ、そして今回の戯曲を書くことになった。

近藤茶くんは、会ったことある人ならわかると思うが、薄い皮膚から神経が飛び出している男だ。敏感に感じすぎる人だ。そういう人だから書ききれた繊細な痛みがここにある。

僕は岸田戯曲賞を上げるべきと思うが、たぶん本公演は、演劇界のだれも見向きもしていないに違いないから、このまま忘れ去られる公演、戯曲になる可能性は大だと思う。結局、演劇村に所属せねば、評価してもらえない。それがいいのか悪いのかわからないというか、べつにどうでもいいが、今回の公演は顧みられるべきものだと思う。なので、もし、今回の僕の文章を読んだ人がいれば見に行ってください。で、面白かったら、周囲の、伝えるべき人に伝えてください。

詳細は次のリンクより

ボビー中西プロデュース AWDL公演「ビューーーティフル!」

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