【絵本はスンゴく面白い!】第2話 いつもちこくのおとこのこ-ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー-
※この記事は2020年5月に執筆した記事に加筆・修正したものです。
どうもこんにちは、絵本専門士のMATSU-Gです。
コロナ騒動でしばらくおやすみが続いていましたが、ようやく再開できる運びとなりました!まさか前回のお手紙を書いてすぐ自粛することになるとは夢にも思わなかったですが、また皆さんと楽しく絵本の話をしていきたいと思っております。はい( ^ω^ )
さあ、今回のテーマ「つよく、たくましく、しなやかな子どもたち」にぴったりのピックアップ作品とは。
そう、私の中で「自分が子どもの頃にこれくらい賢かったらなぁと思う子ランキング」1位の彼が登場する『いつもちこくのおとこのこ-ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー-』です。
https://www.akaneshobo.co.jp/search/info.php?isbn=9784251005175
『いつもちこくのおとこのこ-ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー-』
作:ジョン・バーニンガム
訳:谷川俊太郎
発行所:(株)あかね書房
初版発行年:1988年9月
大人の理不尽にさらされる子ども
『いつもちこくのおとこのこ-ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー-』は、イギリス出身の絵本作家、ジョン・バーニンガム氏の作品です。2019年に亡くなって絵本ファンから大きな悲しみに包まれたことは記憶に新しいですが、これは彼の数ある名作の中の一冊と言っていいでしょう。
学校に行く途中、ワニやらライオンやらに襲われるという信じられないハプニングに見まわれ、いつも学校を遅刻してしまうジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー。遅刻の理由を正直に話しても、先生は「いやいや、そんなわけあるか!」と聞く耳持たず、罰を与えるばかり。健気なジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーは、言い訳もせずそれを静かに受け入れ続け…というお話。
子どもはいたって真面目なことを言ってるのに、大人は決してわかってくれない。描かれている出来事がかなりぶっ飛んだスケールになってるのでものすごーくコミカルに見えますが、やっていることはえげつない理不尽。最終的には痛快なオチが待っているので、園の子どもたちは怒涛の展開に大笑いしてくれますが、大人の目線から見ると色々と身につまされる絵本なんですよね。
バーニンガムの絵本は子どもが想像した突拍子もないイメージをどどーんと描いちゃってることが多い気がします。シンプルな線から繰り出すはっきりとした主張は、ボリューム満点すぎて楽しいったらありゃしないです。
私が個人的に注目して欲しいのが、ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシーと先生の対比。何度も出てくるうちに先生の怒りのボルテージが上がってきて、杖を折ったり飛び跳ねたりさあ大変!先生の指の長さとか口の形とか、そういうところにも注目してみると面白いですよ。
名作家ジョン・バーニンガム
作者のジョン・バーニンガムさんは、本作で子ども向けの書籍や本に対して送られる「ペアレンツ・チョイス賞」を受賞しました。その他にも数々の輝かしい受賞歴があるバーニンガムは、若かりし頃イラストレーターとしての仕事を求めて出版社に持ち込みを繰り返していました。
「挿絵用には使えない」と断られ続けた結果、それならばと自分で物語を作り、絵を添えて本を作りました。(これが処女作『ボルカ-はねなしがちょうのぼうけん』の原型になりました)
どんどん作家として頭角を現し日本でも有名になったバーニンガムさんは、90年代には日本の万博のため記念絵本を作っています。他にも2つの駅舎と3両編成の鉄道客車のデザインを頼まれているなど、意外と縁はあるようです。
ちなみにこの客車、今でも京都鉄道博物館で見ることができるとか…行きたい、もの凄く行きたい!!
言葉の魔力と谷川さんの魅力
また、この絵本に関して語る時、独特の言葉運びのおもしろさも見逃せません!何度も出てくる「ジョン・パトリック・ノーマン・マクヘネシー」のリズムは、口にしてみるとその愉快さに気がつきます。また、接続詞を使わず、一見途切れとぎれに書かれている文体がところどころありますが、それも読めば読むほど楽しくなってくるのです。訳者である谷川俊太郎さんの言葉センスはさすがの一言です!
大人の理不尽さに従っているように見せかけて、したたかに生き抜いていく。子どもは大人が管理支配したりするものではない。子どもそのものの生き方やスタイルを尊重しているさまは、保育にも通ずるものがあるような気がします。
バーニンガムの作品は傑作揃いなので、またいつかここで書いていきたいと思います。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
絵本専門士のMATSU-Gでした。
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