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最終回:販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くことができるか?

みなさま、こんにちは。
食の6次産業化プロデューサーの松田高政です。

自己紹介

特別講座「新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力とは(全11回)」の第11回目、いよいよ最終回となりました。テーマは、「販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くことができるか?」です。

これまで、第1回の「商品の企画」から、第10回の「販路の選択」まで、新たな時代に新商品・サービスを生み出す能力について解説してきましたが、最終的な目標は単に生み出す(開発する)ことではなく、開発した商品が販路先や消費者に支持され売れることです。逆に言うと、今回の講座のテーマは「販路先や消費者に支持される商品を生み出す能力」について、どんな考え方・手法が必要なのかをプロセスの順番に沿って解説しました。

作ったはいいけど売れない」状態は何としても避けなければなりません。できれば、「作った瞬間から売れていく」状態が理想です。そして、その商品をメインに多角化展開することで、自分の最終目標を達成することが理想です。その目標は人それぞれ違いますが、ここでは何年後かの売上目標とします。

では、販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くためにはどうすればいいのか。具体的な考え方や手法、実際の事例を見てみましょう。

問題:販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くことができるか?

【問いかけ】
取組や活動により開発した商品を展開するために、当初想定した販路・売上目標に向かって、どのような方法で販路を開拓するか、または販売するか。また、その相手先へのアプローチはどのような方法があるか。

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理論と手法を学ぶ

【理論・手法】
◇顧客の視点による商品開発・販売戦略の必要性
近年、食品分野の商品開発においては、生産者視点によるプロダクトアウト型ではなく、消費者・販売者視点によるマーケットイン型の商品開発が求められています。これは、現在の食品市場は、大手食品会社も含めて競合品が多く、消費者・販売者に競合品と比較されて最終的に選ばれないと、ビジネスとして成り立たず市場から消えていくからです。

また、食品の販売方法についても小売店・量販店を通じての流通形態が多く、様々な商慣習・販売条件を考慮して商品を設計しないと、なかなか商談成立に結び付かないケースが多いです。

最終的に買うか買わないかは消費者が決めます。このことを前提に、買う人を知るという消費者調査と、売る場所・方法を知るという市場調査に基づいた販売戦略がどうしても必要です。

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参考:販売・プロモーション戦略(宗田節)

◇「売る前に伝える」プレゼン型・企画提案営業
当初設定した販路のうち、実際に販路開拓をする場合に、消費者の購買行動等の情報を収集した上で、相手先の会社概要・連絡先・品揃え(競合商品も含む)など、販路開拓先の情報を収集し、売る人・買う人を知ることが重要です。

次に、営業活動ですが、その第一歩は相手先企業の担当者へのアポイントメントを獲得することです。その方法としては、特定の企業がある場合は、直接メールや電話でアプローチする方法と、知り合いからの紹介などが考えられます。また、特定企業のリストがなく、業界のみが決まっている場合は、公的機関・銀行等が主催する商談会・展示会等に参加する方法があります。

最終的に希望する企業の担当者との面談が決まった際には、短い時間の中で仕入れ意欲を高めてもらうために、事前に営業用商品PRシートなど価値や思いを伝える準備をする必要があります。

⑪営業用商品PRシート1

⑪営業用商品PRシート2

資料:営業用商品PRシート(記入のポイント)

また、話す内容についても短い時間で効果的に商品の魅力を伝えるためのプレゼン能力の向上が欠かせません。プレゼン手法についても従来の書類による説明だけでなく、写真や動画を使ったプレゼン方法も効果的です。

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参考:商品だけでなく生産者の想い・物語を説明

例)動画を活用した商品・製造プロセスのPR(宇和島のじゃこ天)

◇最終的にはコミュニケーションによるファンづくり
今後、販路開拓(営業・販促活動)をする際に、気を付けてほしいのは、現在の取引先及び取引が永続的に続くとは限らないという点です。日本国内は人口減少で店舗販売のマーケットは確実に減少していきます。コロナ等の影響で、観光客の減少による土産店での売上減少、店舗閉鎖による取引先の減少など、生産者の努力では解決できない事態が次々と起こっています。これも経営リスクとして今後は想定しておかなければなりません。
 
このため、今後も社会環境の変化に柔軟に対応し、着実に売り上げを維持・発展させていくには、直接のお客様、特にファン(リピーター)を増やすことが一番の近道であると考えます。具体的には、SNS等を活用した情報発信や直接のお客様との交流の場を増やし、その後のコミュニケーションを充実させ、最終的には熱狂的なファン(支持者)を増やし、売り上げを支える土台を積み上げてほしいと願っています。

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参考:売る前に伝えるファンづくり

実際の事例・経験談から学ぶ

飲むジュレ

写真:のむジュレ

【実際の事例】
「のむジュレ」の販路開拓としては、販路先はすべて首都圏で本商品を支持してくださるお客様に「本商品をどこで売って欲しいか」希望を聞いて、「ここだったら売り先としてふさわしい」「よく買い物をするのでここに扱ってほしい」と教えてもらった店を中心に営業しました。

誰に買って欲しいかが決まると、おのずとその人が良く利用するチャネルが決まります。販路で一番詳しい人はお客様で、アプローチはお客様情報に基づき販路を選定し、展示会・商談会で直接、開発秘話やお客様の販路希望など、こちらの思いを伝えました。

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写真:展示商談会の様子

販売開始当初には、5年間の販売計画に基づいて、販路開拓・営業計画を立てました。初年度は既存取引先(販売確約店を含む)を中心に10店舗程度に商品を供給し、2年目からは、積極的に商談会・展示会等に参加しながら(補助事業を活用)、販売先のターゲットである自然食品店、高質スーパー、ナチュラル系コンビニ、通販企業など新規取引先を開拓し、5年後に10万個の目標数値を掲げました。

ただ、実際には、既存取引先や新規営業先の評価・反応が想定以上に高評価で、わずか1年目で目標の10万個の販売が達成できました。

この「のむジュレ」の取組により、雇用の受入・人材育成とともに売り上げが増加し、4年間で売上が約2倍増加し、高知県地場産業賞第3回「ディスカバー農山漁村の宝」に選定され、地域の食品産業や6次産業化の優良事例モデルとなりました。

ディスカバー賞状

写真:第3回「ディスカバー農山漁村の宝」に選定

私としても「食の6次産業化プロデューサー(食プロ)・レベル6」の審査において優良事例として審査員の前でプレゼンしました。私が今、食プロの最高段位者として、大学や全国で指導的立場に立つことができているのも、この取組に深く関わり、結果を出せたことが大きく、生産者の(株)岡林農園の岡林社長には深く感謝しています。

食プロレベル6認定書

写真:食の6次産業化プロデューサー・レベル6認定書

まとめ

最終回・第11回目の「販路開拓・売上目標を達成し事業を成功に導くことができるか?」はいかがだったでしょうか。

のむジュレの事例では、結果的に当初計画していた5年後の売上目標を1年で達成できました。これには成功の秘訣と言うか理由がありました。この仕事を受ける時、私は自分のビジネスで大きな失敗を犯し人生のどん底でした。そんな時に声をかけてくれたため、次こそは絶対に失敗しないと心に誓い、今では私の得意な手法である「消費者・販売者が喜ぶ逆算型商品開発」を真剣に実践したことが非常に大きいです。

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参考:消費者・販売者が喜ぶ逆算型商品開発

若い頃に大した実績もない駆け出しのコンサルタントに仕事を与えてくれた生産者の方々と、試行錯誤で市場調査や計画策定、実際の食品開発、その後の営業・PR活動など、様々な経験を積むことができました。

そして、経験だけでなく、商品開発やビジネスの基礎として、仕事をしながら理論や手法も勉強し、理論と経験を組み合わせた、実践的なノウハウが生まれました。この経験と知識は、私の人生で貴重な宝物です(詳しくは「私のこれまで、そしてこれから」をご覧ください)。

今、食の現場では、ビジネス環境の未来を予測することが非常に困難となっています。このため、ぜひ、私たちのような前の世代の経験と知識も参考にしながら、皆さんも試行錯誤を重ねて前に進んで行ってください。そして、次は皆さんが次の世代へと経験と知識を繋げてください。そうすれば、食の世界はますます良くなっていくと信じています。

以上、全11回、長きにわたり、読んでいただいてありがとうございました。さらに、学びたい方は動画「コロナ禍で地方が輝く商品・経営戦略」(全5回・3回目以降有料)をご覧ください。コロナ禍で地方の生産者たちがどう製品を作り、売り出していくのか。「食で稼ぐ」ために必要なノウハウ、実践方法をお伝えしています。

最後に、いつもの「スキ」・「コメント」・「フォロー」をお願いします。今後も投稿しますので、応援よろしくお願いします!


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