見出し画像

読書が苦手なのに本屋で働いた

大学生の頃、大きな本屋さんで働いていたことがある。

本が好きだったのね、と思われるかもしれないけれど、違うんだ。
高校時代まで、国語が大の苦手で本など読んだことなかったわたしが、母の友人の紹介という枠で入れてもらえたのだと思う。

好きでもないというのによくもひょいひょいと乗っかっていったものだ。

アルバイトの面接は3人同時で、ペーパーテストもあった。最近読んだ本とその内容。著名な小説のタイトルと内容を選択して結ぶもの。本を読んだことがないので、大学受験の小論文対策で読んだ新書についてむりやり書いた。著名な小説も半分くらいしかわからなかった。

そんな感じで、雑誌コーナー担当になった。
大きい本屋だったので、文庫、実用書、雑誌、文芸、専門書、児童書などなど担当に分かれていて、アルバイトだけでも20人近くいたのではないか。カフェも併設していた。

そこで、わたしは本を愛しているひとたちに出会う。

サイン本を貸してくれたり、あの本が面白いと教えてくれたり、好きな作家の話で楽しそうに盛り上がっている仲間の姿をみたり、小説を書いている人がいたり、漫画を描いている人がいたり。

働くことで、本を買う人がこんなにいるんだと知ったり(本屋なんだから当然だけど)、取次店という存在を知ったり、売れている本を知ったり、売れ残った雑誌の付録をもらったり。会社四季報の発売日は、問い合わせがめちゃくちゃ多かったり。ディアゴスティーニ系のシリーズにやたら詳しくなったり。知らない世界はおもしろかった。

新幹線通学だったので、ゆっくり本を読む時間をとれたのもラッキーだったかもしれない。

そんな環境のおかげで本が好きになり、というか紙媒体に愛着を感じるようになったことが、たぶん今のじぶんにつながっているんだろうなあと思っている。

印刷会社に入社して、(たまたま)広告会社に転職して、フリーでライターをしているとなれば、もともと好きだったんでしょ、ってかんじがするけれど、わたしは本屋さんでアルバイトした、という偶然の環境が大きかったと思う。本や活字が好きな人がそろう場所は、それらを大切にするエネルギーも高かったんだな。

新しい本の手触り、紙やインクの匂い、書体、装丁、わくわくする。
これからも大切にしたい。そのエネルギーがだれかを助けるかもしれない。

毎日note104日目。

目に触れられず流れていく宙ぶらりんなローカル情報を囃し立てて、自分の住む地域ってなんかいいな、誇らしいな、暮らしやすいな、と感じられる循環を作り出したいと思っています。(team OHAYASHI細川敦子)