おいしいごはんが食べられますように

夏休みの読書で読んでみました。
ほんわかした表紙デザインで、
どちらかといえば薄い本。
軽い気持ちで読み始めたら、
いい意味で裏切られる。

誰もが心の底で密かに思っている違和感、
社会に合わせて生きる上で口に出さない怒り、
矛盾すると分かっていても敢えて見過ごす狡さ。

普段はタンスの引き出しの奥にしまい込んで、
何ならそのまま生きていこうとしているものを
ほじくり返されるような感覚があり、
何ともいえない深いものが腹に残る。

その後に家族に昼ご飯を用意する時に
はてさて自分は毎日料理を作って食べることに
どんな気持ちを持っていたのだろうか、と
ふと思い返す。

せっかく食べるならおいしいものを、という気持ちはあるが、
そのための手間はかけたくない。
レシピの検索はするけど、それを完全再現する手間が大変そうなら、
無理にやらない。
二日連続同じメニューでなければ、何でも良いじゃないか。
カップ麺や袋麺で1食を済ませることに罪悪感を持つ必要があるのか。

SNSやテレビの暴力的とも言える健康推しへの反発を呼び覚まされたような感じ。

この本の真骨頂だと思われる、
最終章での何とも言えない複雑な描写を
読み終えた後の、言葉にできない感情の動き。
読み終えた人と意見交換したいけど、近しい人と語るには怖い。

まあ、とにかく、力のある一冊でした。




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