ま.な.み.き

体脂肪率は20代の頃より低いと機嫌が良くなります

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最近の記事

そんなバナナ

バナナの皮が駐車場に落ちている。 これはフリで、古い漫画のように踏んづけて転んでみせろということか。 美香は心の中でつぶやいた。 いつもなら、そんな風には考えないが、美容室で物思いに耽っていたから、こんなことを考えたのか。 美香は頭を軽く振って、何を考えてるのかね、と自分に苦笑いした。 トリートメントでサラサラになった長い髪が揺れる。 美容室はトイレが壊れたそうで、担当の斉藤さんは修理業者の対応をしながら、美香の髪を切ったり、染めたり、トリートメントをしていた。 いつも

    • 逢えない時間

      彼と逢えるのは5日〜10日おき。 なかなか電話できる環境じゃないので、LINEのやりとりが主になるから、この間隔でも私には辛い。 会えない間のいつが一番辛いのか。 彼は、3日目から4日目あたりらしい。 私は、あと1日、あと数時間というあたり。 愛し合っている2人の価値観がぴったり合っているわけじゃないことは、私達くらいの歳になると自明の理。 けど、相手の理由も分からなくはない。 1、2日目くらいは、愛し合ったり、見つめ合った感覚や幸せがまだ身体に残っていて、ポーっとし

      • 50の恋、50の愛

         もうすぐ50歳になる。人生はあっという間だ。  タニタの体組成計は、遠慮がちに体内年齢を33歳と表示してくれるが、鏡をみると白髪が分け目から飛び出している。ほうれい線が刻まれ、頬骨のシミもしっかりと存在する。  こんな歳になって、また恋愛できるとは全く思っていなかった。そして、これは人生で一番の大恋愛になっている。  人生経験を積んでからの恋愛は、人柄を重視する。辛いことを糧に少しは成長した人間性に見合った人を求めるようになる。  心の中に育んできた優しさ、思いやりの貯

        • 審判しちゃう

          人間はすぐ審判する。 例えば、食べ物の好き嫌いが多い人、ベジタリアン、毛皮愛好家、不倫した芸能人、愛煙家、政治家、公務員などを審判したがる人は多い。 SNSの炎上は、審判したがる人によるものだ。 審判したがる人を気にして、世の中はコンプライアンスに縛られるようにもなっている。 発達障害者支援の第一人者 服巻智子先生は、審判したがる発達障害の人に「あなたは裁判官じゃない」と繰り返し諭すそうだ。 20年以上前に研修会で教わったこの言葉を、私はよく思い出す。 発達障害者じゃ

        そんなバナナ

          夢うつつ

          背中が痛くなってから、もう3ヶ月は経つだろうか。最近は、食欲もない。 何日か前に娘に「お母さん、借金はないんだよね。」と失礼なことを言われたし、東京の息子の帰省も最近多い。 私はあんまり長くないんだろう。 お父さんが亡くなったときは、106歳まで生きると思っていたけど、こう痛くて食欲もないんじゃ、長生きもゆるくない。 寝てばかりいるし、洗濯物を干すにも1時間くらいかかる。 娘や孫たち、息子、友達、弟夫婦が来てくれるのは助かるな。調子が悪いと、あまり相手をしてやれないのが心

          子育て回顧録その3 分けることと分けないこと

          もうすぐ親元を離れる息子 陽(はる)に、親としてできることは、あまりない。 だけど、愛して育てた記録は私にしか書けないはず。 そう思い、時々書いている子育て回顧録。時系列バラバラですが、今回はその3本目。 いつか、陽がおじさんになったら、私がこの世からいなくなったら、読んで欲しい。 特別支援教育とインクルーシブ。分けることと分けないこと、どちらがいいのか。 陽を育てるなかで何度も考え、悩んだことの一つ。 インクルーシブが望ましいのは分かる。「地域共生社会」とか「核兵器根

          子育て回顧録その3 分けることと分けないこと

          許せる人、許せない人

          許せる人、許せない人の違いはなんだろう。 許せないのは、とても辛い。 怒りに心を奪われているから。 自分を更に怒らせる妄想を増産していくから。 自分を守ろうとしている一方、自分を大事にする余裕を失っている状態に思える。 「許せない」から「許せる」になるのは、障害の受容に似ている。 乗り越えるには、大きな壁がある。 乗り越えられない、受け入れられないと思っていても、乗り越えるとスッキリと前向きになるし、 前と違う景色がみられる。 誰かに求められてできるものではなく、自分で納

          許せる人、許せない人

          帰り道

          夕焼けがきれいで、心も身体も疲れた帰り道は、横にあなたがいないのが苦しい。 どこからボタンの掛け違えは始まっていたんだ。 何を見逃してしまったんだろう。 ただ、隣にいたかった。 「空がきれいだね」 「もうすぐ満月だよ」 手をつないで話せれば、幸せだった。 仕事を終えて、「ただいま」「おかえり」って言ってみたかった。 疲れていたら、背中をさすってあげたかった。 2人でソファーに横になり、一緒にテレビを見ながら足をマッサージしあったり。 休みの日は、寝癖だらけの髪を笑っ

          メロスの恋人

          太宰治の『走れメロス』でメロスの代わりに人質となり、命を奪われるかもという不安の中で彼を待ち続けた友はセリヌンティウスという人。 セリヌンティウスは、友情と自らの心の強さで、不安や猜疑に打ち勝った。 それほどではなく、可愛らしいものだが、私にもセリヌンティウスのような体験が一度ある。 17歳の頃、待ち合わせしていた喫茶店に友達が来なかった。10分とか30分じゃない。今みたいにケータイがない時代。メールもポケベルもなかった。 「あの子が来ないはずない」「何か理由があるはず

          メロスの恋人

          子育て回顧録 その2 父母の受容

          陽(はる)の発達に何かがあると感じたのは、1歳半から2歳頃だっただろうか。 私は保健師だったし、療育の担当もしていたから、自分に子どもができたとき、障害のある子が生まれることも想定はしていたつもりだった。 障害のある子が生まれたら、きっとエネルギーが湧いてきて、可愛がって必死に子育てするだろうと。 陽は、首の座りもハイハイも歩行も定型通りに発達をとげた。よく笑い、目が合い、絵本を好んだ。ニッサン、SONY、ロイズ、2語文を話す前にたくさんのロゴや看板が読めるようになった。

          子育て回顧録 その2 父母の受容

          組織 の 良心

          春は人事異動の季節だ。 今まで気持ちよく助け合ってきた同僚や慕っていた上司、優しくしてくれた先輩がいなくなるのは、想定していたこととはいえ寂しい。 組織の良心を欠くことが、寂しくて少し不安だ。 若い頃は、仕事ができる人ばかりで組織が成り立つといいのに、なんて不遜なことを考えていた。しかし、組織は仕事ができる人ばかりでは、うまく回らない。思いやりのある人、優しい人がいるから、立場の弱い人が守られ、職場が居心地の良い、支え合える場所になったりする。 仕事ができる人や上に立

          組織 の 良心

          子育て回顧録1 生まれる前のこと

          息子の陽(はる:仮名)は、もうすぐ高校を卒業する。 最近は、私よりいいやつだったり、努力家だったりして、勝手にすくすくと育っている。 修学旅行から帰って来たら「楽しかった。一緒に過ごしてくれた友達にも感謝する。お金出してくれてありがとう。」なんて言う。 こんな親なのに、こちらこそありがとう。 陽を育てるのは、大変でとても楽しかった。 もう少し手がかかるけど、彼を育てた記憶が古くならないうちに、文章にしておこうと考えた。 陽が30歳になったら、もしくは私が不治の病に罹った

          子育て回顧録1 生まれる前のこと

          往復書簡

          美希へ こちらは菜の花の時期が終わり、もうすぐ桜がほころびそうです。 菜の花なんて、花屋かスーパーでしかみたことないよね。 北海道は福寿草やムスカリが咲いて、その後、コブシ、水仙、蝦夷ヤマザクラの順だったかな。 寒さで空気が澄んでいて、朝日を浴びた日高山脈が通勤する美希の背中を押しているだろうと思っています。 こちらに来ると、山を見ることがあんまりなくて、さみしいです。 山頂に雪があって、峰を際立てているような山が見たい。日高山脈が恋しい。白樺と青空、真っ直ぐに続く道路も

          ナーバスな横顔に関する考察

          大事な何かに臨む人の佇まいが好きだ。 張り詰めているけど、それを外には出さないようにしている。 ここにはいるけど、頭や心はここと違うところにある。 ナーバスなその様子が好きだ。 家庭訪問に向かうベテラン理学療法士 試合に臨む野球部員 フルコンタクトの試合前の選手 入学試験前の子ども ライブステージに行くアーティスト ペナルティボックスの中のアイスホッケープレイヤー 私と初めてデートする人 プレッシャーの大きいミッションへ波長合わせをしている姿に魅かれる。 針の穴ほどの

          ナーバスな横顔に関する考察

          目標の呪縛

          以前住んでいたまちで教育委員をしていたことがある。 教育委員は、教育委員会の構成員。首長から独立した教育行政を指揮監督する。レイマンコントロール(住民による意思決定)の役割を担う。任用は、地方議会の場で決まる。 と、文科省の文書を引用すると、どうも難しくなる。要は、まちの学校運営と教育行政をよく確認し、住民として意見を述べる係である。 委員の属性は様々だが、私は、まちの南部の小学校(特別支援学級)に通う児童の母親で、保健福祉に従事しているという立場で選ばれたようだった。

          琥珀

          琥珀のネックレスが君の胸元で光る。細いゴールドのチェーンは長くて、胸骨中央辺りに細長い琥珀が揺れている。 アイボリーのブラウスとベージュのカーディガン、琥珀のネックレスは、君によく似合う。 前に僕のカーディガンを褒めてくれたことがあった。 「白いカーディガンが似合う人はなかなかいないのよ。ノーブルな雰囲気がないと似合わないから。」って。けど、ノーブルなのは君だよ。こんな時でも綺麗だなって思ってる。 琥珀は樹脂の化石だ。数千万年前とか数億年前の葉や虫が混入したものもあるそう