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琥珀

琥珀のネックレスが君の胸元で光る。細いゴールドのチェーンは長くて、胸骨中央辺りに細長い琥珀が揺れている。
アイボリーのブラウスとベージュのカーディガン、琥珀のネックレスは、君によく似合う。

前に僕のカーディガンを褒めてくれたことがあった。
「白いカーディガンが似合う人はなかなかいないのよ。ノーブルな雰囲気がないと似合わないから。」って。けど、ノーブルなのは君だよ。こんな時でも綺麗だなって思ってる。

琥珀は樹脂の化石だ。数千万年前とか数億年前の葉や虫が混入したものもあるそうだ。葉や虫のように僕たちの今も琥珀になって、君の胸元で揺れればいい。それなら、ずっと一緒にいられる。

「別れのときが来たの。静かに受け入れたい。」と君は言う。涙は三度 大きな瞳から溢れた。

心がちぎれそうだと僕は思う。君のいない世界でこれから僕は生きていかなくてはいけない。
そんなことができるんだろうか。

時は流れ、そんなことはできているんだろう。僕は君のいない日々を送るんだ。今みたいな顔で。
悔しくて、悲しい。
けど、僕は生きるんだろう。

琥珀の色や透明感は、べっこう飴のようだ。君の手の指も足の指も、べっこう飴のように口の中でやさしく転がして愛でたのに。もうそんなこともなくなる。
音が遠くに聞こえる。
僕だけを残して時間が進んでいるような気がする。

それでも、僕は君のいない世界で生きていけるんだろう。
ちぎれそうだと思った心は、いつの間にか癒えて、笑ったりしているんだ。

僕の目からは涙は流れない。心はちぎれそうなのに。
君のいない世界と向き合うのが、こんなにも恐ろしいのに。

琥珀は鉱物じゃなくて、樹脂だから燃えるんだって。燃えるときにとてもいい香りがするらしい。
そういうことを思い出して、また胸が苦しくなる。
僕たちが終わるときには、どんな香りがするのかな。

君がそんなことを言うんじゃないかって、僕は心のどこかで思っていた。

今が琥珀の中に閉じ込められたらいいのに。

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