「やさぐれ魔法の王女様」19、龍という生物


 数日が経ちカレンのガレージには沢山の資材が集まっていた。1つ1つ可能性と必要性を加味したものを確認しながら新品のバギーの荷台に必要なものを積み込んでいく。

カレン
「・・・これはお守りね」

 ローレルから貰った信号弾を積み込むとロープで縛って全て固定した。防毒服とマスクを首から掛ける。煙草に火を付け、エンジンキーを回すと勢いよくマフラーから排気ガスが出てくる。

見送りは無い、たった一人の世界へ。

 アクセルを入れて魔の領域へ入っていく。この間エメットに案内された道を一人で進んでいく。当たり前だが森に変化はない。

カレン
「・・・・」

 鼻を衝く腐敗臭いがしたころにマスクを付けてさらに奥地へ進んでいく。しばらく進むとエメットと来た監視小屋の場所まで来ていた。そこから見える鉄柵の扉に掛けられているワイヤーを切断するとさび付いた蝶番が悲鳴を上げて動き出す。

カレン
「ここから先・・・・」

 その先は誰も到達したことが無い割にはきちんと道っぽいものが出来ていた。カレンは一応数メートルおきに赤い色短く切ったロープを木に括り付けていく。

カレン
「まるでヘンゼルとグレーテルみたい」

 そんなことを思いながらゆっくりと森の奥へと進んでいく。道は平坦な場所もあったが多くは登り道。高度計は1300mを示していた。だんだん緑の濃いドームに近づいていく。今までは森の様子もそれほど変わることは無かったが奥に行くにつれてだんだんと足元の植物に変化が見られ始めた。種類は変わらないもののもっと原生的な様子に変化してきている。

 やがて何事もなく緑のドームの付近に到着した。そこは木々の茂みが若干弱まっている場所。少し抜けた空間で周囲を一望できる抜けた場所に出た。カレンはバギーを停めてサイドブレーキを掛けるとそこから見える緑のドームのような場所を見つめる。よく見ると木々の間にぎっちりとツタや草が絡まっている。

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「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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