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「イネーズ」たくさんの世界の中で その2

「梅雨」

と呼ばれる季節がやってきた様子で雨と曇りの日々が続いていた。

雨が降りしきり、俺達はその水を飲んだり足元の食べ物を食べてぐんぐん成長していった。

成長の仕方も「おれくん」と「わたしちゃん」たちで大分違いが見られる様になってきた。

見た目でわかるのはその「図太さ」である。

周囲や他人に気を使いつつ迷惑を掛けないように成長していく「わたしちゃん」たちは細身になっていき、体の構造がまるで「隙間にいきられるように」なっていた。

もちろん「もっと幅広く」生きる「スペース」は十分にあるのだけれど、多分きっと「過去の経験」とか「昔の経験」からあまり根や葉を伸ばすと他人に迷惑がかかると思っているのだろう。

あまり自分達の領域から出ようとしなかった。

一方「おれくん」たちの方は「図太い」。

あまり他の人を気にしない彼らは自分の足元に根を十二分にのばし、その上で自分を形成していった。

この間にも「ひと」の姿は俺たちの近くにあった。

足元の水を多くしたり少なくしたり。「わたしちゃん」たちの方に来る「ひと」は忙しそうに「蒔いたり」「天気を見ながら悩んだり」していた。

そうかと思えば「おれくん」たちの方に来る「ひと」は相変わらず「変な話」をしていくだけで特に何かをしている感じではなかった。

それよりなにより、「おれくん」達のほうに来る「ひと」は「むし」の方に興味があるのか足元の住人とばかり話をしていた。

「少しはおれとも話をしてよ!」

とおれが意地悪そうに言うと、その「ひと」はこう言った。

「足元の奴らと話をすれば君たちのこともわかるからさ」

俺には理解できなかったが、どうもそういうことらしい。

その「ひと」は常に「まわり」を見渡していた。常に「どうなっているのか」を模索し常に「よくみる」ことを忘れていないようだった。

それでいて特に何もする様子が無くてこの「おれたち」はその場所の「住人」に任せられているようで、「おれたち」に任せられているようだった。

一方、「わたしちゃん」達の方に来る「ひと」は常に「わたしちゃん」自身を観察していた。

「どうなっているのか」を見る姿勢は変わらない。大きく違うのは「わたしちゃん」たちが「求めている」ものをその都度あげている様子ではあった。

「おれくん」「わたしちゃん」ともお互いに成長できる部分において「不足」はなかった。

不足は無かったのだが、これからその「不足が無かった」ことによって引き起こされる「何かが」待っていた。

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