「やさぐれ魔法の王女様」 14、人捨て山

 屋敷を明け渡すまでの期間は1週間。その間に転居に伴う具体的な準備を進めていくことになった。まずカレンとクロムは必要なくなったドレスを脱いでユイが見繕ってくれた洋服に着替えた。その後生活に必要だった品物を次々と段ボールに詰めていき王宮が貸してくれた仮置きトラックへと積み込んでいく。作った花壇から花の種を取ると元会ったように地面をならした。

 屋敷内を3人で掃除を行い、引き渡しの前日には管理会社立ち合いの元書類に印鑑を押した。

ユイ
「さてと、いよいよ立ち去りますね。今までお世話になりました」

 ユイは今まで使っていた厨房やダイニングに分かれを告げるとカレンがハンドルを握る車に乗り込んでいった。

カレン
「忘れ物は無いかしら?とりあえず荷物は明日付くようになってるから、今日1日は最低でも過ごせるように掃除はしないと」

クロム
「まあ、辺境の地とは言いつつも街からはそう遠くはないからね」

 カレンはギアを入れるとアクセルを踏み込んだ。

王都から車で1時間半。見慣れた街並みやビル群が過ぎ去っていき、段々と自然が多くなっていく。

 辺境の地「アレスト」毒龍の住処の近くにある領土であり、そこに自ら近づく人はあまりいない。住んでいる人間はごく少数と言われている。そこに棲む人たちは最寄りの地方都市「エストラ」で生活に必要な物を購入している。標高は王都よりも随分と高く約1000m。真夏でもクーラーを必要としないほどの涼しさが有る。

クロムは運転中のカレンに尋ねた。

クロム
「アレストってどんな土地なの?」

カレン
「かつてアレストは魔物狩りの聖地だった。最盛期には数万人が行き来していたらしいわ。でも、毒龍という存在の危険が分かるとそこから人は次々と離れていったの」

クロム
「毒龍は何百年も前からそこに居るんでしょ?毒素の危険には気が付いていたんじゃないの?」

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「龍を倒す」こと。剣や魔法でドラゴン退治はファンタジーの王道ですが、そんな王道から少し外れた先の未来。握らなければいけないのは剣や魔法の杖ではなく、自分の種になるかもしれない。

完結済みのオリジナルの小説です。全21話。文字数は大体18万字あります。少々長いですが良ければどうぞ。

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