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習慣化のための行動モデルB=MAPをマーケティングに応用してみた

行動科学に関する書籍をAmazonで探していたところ、やたら評価の高い書籍が目に入ってきました。

小さな習慣づくりから自らの状態・行動を変えることをテーマとした『Tiny Habits: The Small Changes That Change Everything』という書籍です。習慣に関する内容となっており、マーケティングを意識した記述は一切出てきません。でも何となくマーケティングにも使えそうな感じがあります。

この記事では、『Tiny Habits』で説明されている行動モデルB=MAPについて簡単に説明するとともに、B=MAPのマーケティングへの応用について考えてみたことをまとめていきます

B=MAPとは

B=MAPとは、人間のあらゆる行動はある瞬間においてMotivation, Ability, Promptの三要素が組み合わさることによって生じるとする考え方のことです(p.19-20)。
※以降、Motivationは動機、Abilityは能力、Promptは契機(トリガー)と表現します。

この概念を示したものが以下の図となります。
何らかの契機(きっかけ)があったときにその人が取りうる状態が黒丸で示されています。特定の行動に対するその人の動機と能力がアクションラインを超える場合、その人はその行動をとります。一方で、アクションラインを越えなかった場合は何も起きません。

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この『Tiny Habits』では、普段の習慣をこのモデルに当てはめて分析し、それを基に新しい行動を設計することで新しい行動習慣を生み出そうと言及しています。

・動機(Motivation)

動機は、内発的動機、外発的動機*1、環境(Person, Action, Context)によって喚起されます(pp.43-4)。

名声を得たい、美しくなりたいなど、その人自身から湧き上がる動機(内発的動機づけ)や、経済的利益などの動機(外発的動機)、その人を取り巻く意思決定時点の環境などによって行動は影響を受けるということです。

*1 元々の表現とはだいぶ異なっていますが、個人的にはこの表現がぴったりかと思って内発的動機、外発的動機という言葉を用いています。

・能力(Ability)

能力は、時間、資金、肉体的努力、精神的努力、ルーチンに依存します(p.80)。その人自身の能力を上げることだけでなく、行動を容易にするツールやサポートを使うことによってもB=MAPモデル上の能力は変動します。
図でいうと左右の動きに影響を及ぼします。

・契機(Prompt)

契機は、携帯電話の着信音やスマホへの通知、誰かに声をかけられるなど、普段の生活の中で生じる、行動のきっかけとなる事象のことです(pp.97-8)。

B=MAPの具体例

ほほう。ここまででB=MAPの概念は何となくわかった気がします。具体的な例を通して理解を深めていきましょう。

仕事終わりの自分を想定してみます。あくまで私の場合ですが、Facebookはそんなに頻繁に更新されていないのでそんなに見る気になりません。図でもアクションラインの下に位置しているため、実際に行動に移していないことを意味します。

一方でTwitterは、常にタイムラインが移り変わっていくため、定期的にチェックしないといけません(中毒)。この場合、「新しいツイートを見たい」という動機が高いため、アクションラインを超えて実際にその行動(タイムラインを見る)をとるわけです。

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また、私はスラスラ英語を読むことはできないため、何らかの助けなしで英語の本を読むということはあまりしません。
しかし、最近話題のDeepL(翻訳サービス)があれば話は別です。DeepLが"能力"を支援することでアクションラインを超え、実際に英語の本を読むことに至るのです。

B=MAPのマーケティングへの応用を考える

前述の通り、習慣づくりの書籍であるため、マーケティングという言葉は一切出てきませんが、なんか応用できそうな感じがあります。

ということで、B=MAPのマーケティングへの応用について私見をまとめます。

・コンセプトダイアグラム×B=MAPによる行動科学的な施策の検討

ちょっと何言っているかよくわからないので少し解説します。

まず、マーケティングのフレームワークの中にコンセプトダイアグラムというものがあります。顧客の心理変化を図解する技法です。
画像検索するとすぐに雰囲気がつかめるかと思います。

コンセプトダイアグラムとは、顧客の心理変容と企業の施策を図解し、顧客の理解と施策の評価を行うメソッドです。
出所:https://concept-diagram.com/note/about-concept-diagram/

画像検索された方で同じことを思った方もいるかもしれませんが、このコンセプトダイアグラム、シンプルというか深みがないものが多いように感じます。サンプルなので簡単に描いてるというのももちろんあると思いますけど。

そこで、顧客の心理状態*2を、B=MAPの動機・能力・契機の観点から分析し施策を考える新たなフレームワーク(大袈裟)を考えてみました。

たとえば、ECサイトを訪れた消費者Aさんを想定してみましょう。
老眼に効くという怪しげな健康食品が売られていたとします。怪しいとは思いつつも、老眼で困っているAさんにとって興味はあります。

結局、図の「購入することへの不安」までたどりついたとします。その時点におけるAさんの動機、能力、契機を考察し*3、B=MAP上にAさんの状態を示します

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この状態から起こりうるシナリオと施策を考えてみます。
以前から購入までの操作がわかりづらいことが問題視されていたとしましょう。そのことを踏まえると、不便なUIが"能力"の低下につながり、アクションラインを下回る(=購入しない)になる可能性がありそうです。

また、怪しい雰囲気も問題視されており、その一因として購入者の声がほとんど載っていないことが挙げられていたとします。

これらを踏まえると、UIのわかりづらさに起因する離脱を防ぐためのUI改善、消費者と同じような問題を抱える人が商品を購入し使っていることを示す「購入者の声」をコンテンツとして追加することが施策として考えられそうです。

例えとして挙げた施策は陳腐なものではありますが、上述のようにB=MAPを用いて行動科学的な観点を意識することでより深みのある効果的な施策が思いつくかもしれません。

*2 図でいう四角の箱のことです
*3 本当は顧客の心理状態ごとに顧客の動機、能力、契機を考察として文章として表現したかったのですが、心が折れたので省略します。

最後に

今度こそ行動経済学の記事書きます...

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