【第一話】ある理系大学生がうつになった理由
うつになりました。
正確には、「うつ」というものかもしれないと自覚しました。うつを自覚した理由は、何をするにも不自然なほどまったく気力が湧かなかったからです。
このマガジンでは、ぼくがうつになった経緯や当時の状態・行動をつづります。全10話です。当時のブログに書いた熱量のまま、数年たって改めてリライトしてお届けします。よろしければご覧ください。
同じように大学(院)生で精神的につらい方の参考になればうれしいです。もし今苦しんでいる学生に、同じように苦しんでいた人もいると知っていただければと。同じ苦しみを味わった仲間は日本中、いや世界中にいます。
いまは孤独を感じるかもしれませんが、きっと大丈夫です。ゆっくり治していきましょう。
うつになった原因
ぼくは当時情報系の大学院生で、学部4年生のときに研究室に配属されました。そんな4年生のときのことでした。
最初に味わった悩みのタネは、今までやってきた「勉強」と初めての「研究」の違いでした。何をどのように進めたらいいのかまったくわからず、性格上うまく先輩や先生に相談することもできないまま夏休みを迎えました。
夏休みの間はアルバイトが忙しく、バイトに精を出していました。そして、夏休み明けに先生からひと言。
「夏休み何してたんですか?」
これを言われた瞬間、頭の中で何かにヒビが入ったようなピキッという音がしました。
「夏休みって休むものじゃないんですか…。」
と、面と向かって言えるはずもありませんでした。どうやら夏休みは休むものじゃなかったみたいです。たしかに、ぼくのいた研究室は多くの人が夏休みもちょいちょい研究室に来て研究を進める風習(空気感?)がありました。
本当に当時は「夏休みは休むものだよ!何言ってんだ先生!」と思っていて、自分の中ではたいして問題にしていませんでした。しかし、間接的にはこの最初のヒビがきっかけで崩壊へと向かっていったのです…。
ぼくの研究室では、学生全員や先生の前で月に1回進捗報告をします。夏休みが終わってもうまく研究を進められないまま、11月最初の進捗報告会で悲劇は起こりました。その場でぼくがパワポの操作で少々もたついてしまいました。
そしたら、発表の途中で先生からこんなことを言われました。
「まだこんなことやってるんですか。5月の進捗ですよ!」
「うちの研究室の恥です。」
パーン…。
次の瞬間、あたまの中が真っ白になりました…。この言葉はぼくの心を砕くのに十分すぎるほどの威力でした。
後で冷静になって考えると、その日の先生は虫の居所が悪かったのだろうと思います。
その後の発表では何をしゃべったのかまったく覚えていません。プレゼンが終わったら、みんなからの質疑応答。みんな気をつかってくれたのか、当たり障りのない質問で流してくれました。(質問の内容は覚えていません)
報告会が終わった後、ぼくは1秒でも早くその場を立ち去りたくて、すぐに震える手で荷物をまとめて研究室を出ようとしました。
部屋を出る前に女性の先輩が「これ食べな、あんまり気にしないで。」と言ってアメをくれました。優しい…(泣)
恥ずかしい話ですが、その日の帰りは涙をボロボロ流しながら帰りました。大学から出て電車に乗るまでは涙が止まりません。泣きながら外を歩くなんて、生まれてはじめての経験です。電車に乗るときにはムリヤリ涙を押し込めた自分、偉いぞ。
そのときはとにかく頭の中がグルグルで、何を考えていたのか詳細に思い出せません。
約30人の前で無能だと言われた羞恥。
そんな言い方することないじゃないか、という怒り。
自分の能力の無さに対する悲しみ。
今後の研究室生活に対する絶望感。
たぶん、こういった感情が渦巻いていたのだと思います。
夜にバイトがありましたが、はたから見ても全然元気がなかったでしょう。
その後
先生に怒鳴られた次の日から、大学に行けなくなりました。それどころか、約1ヵ月間は家からろくに出ることもできなくなりました。
バイトだけはなんとか出勤していましたが、元気が出ず、子供から元気を分けてもらっていました。
バイトは塾講師。今思うとものすごい心の支えでしたね。
さすがに顔を出さなすぎて先輩たちから連絡が来たりして、行きたくない気持ちと身体を引きずりながら大学に行くものの、あたまがボヤボヤして何も手につかない状態が長く続きます。
そんな状態ながらも、研究の軌道を(下方)修正しながら進めてなんとか2月の卒論発表にこぎつけました。
ずーっと「なんだか体調悪いなー」状態で、内科に何度か行ってもすべて自律神経の乱れと診断されるし、でも治らないし…。
一般に「自律神経失調症」という診断は、「いろいろ調べても特に異常がないのに、ぐずぐず症状がある」というときに診断されるようです。
いわゆる「病名」ではないみたいです。
ある日、「あれ、これって”うつ”ってやつなのでは?」と思い立ち、ネットでいくつか『うつ病チェック』をやってみたらまあ当てはまること当てはまること・・・。
ネットの「〇〇チェック」みたいなものはあまり信用してはいけません。すばやく病院に行きましょう。
そして、大きい病院の精神科に行ったのですが、通っている患者さんが多くて、ある程度深刻な状態の人しか診察できないと言われ、精神科の看護師さんと30分くらいお話しただけで帰されました…。
ぼくのうつの症状
ぼくに現れたおもな症状は次の通り。
●夜は不安になって寝れない
●人から責められる夢をみる
●朝起きれない、あるいは早朝覚醒(めっちゃ朝早くに目が覚めてしまう)
●朝、目が覚めてから起き上がれない(動くのがしんどい)
●常に頭にモヤがかかったようになり、ボーっとする
●集中力が保てない
●1日の食欲が1~1.5食分しかない
●LINEやメールを見るのが怖くて見れない(スマホが意図しない挙動をするのにビビる)
●今まで好きだったことに興味が湧かなくなった(楽しくなくなった)
●疲れやすい
多いなあ!!自分でもびっくりだよ!
これらの症状と継続期間から考えて、ぼくは「うつ状態」だったと考えられます。
このとき、お医者さんに診てもらってはいないので正式にではないのですが、まあほぼほぼそうでしょう。
ただ、ひとつ救いなのが、「自殺願望がない」というところです。「死にたい」というのは、うつの人によくある傾向ですが、ぼくは生きたかった。その状況から早く脱却したかった。
大学院に進学して、修士1年。その1年間は切羽詰まることもなく、あまり大学に行けないながらものらりくらりと過ごしました。
そして修士2年になる前の3月は、先生に正直に状態を相談して研究室を休みました。いちど、研究のことを一切考えずに過ごそうと判断をしました。
そして、自分では解決できないと感じたので、学内のカウンセリングに通いはじめました。気持ちと行動をどうもっていくかを相談しながら生活している状態でした。もしぼくと同じような状態になっている方がいたら、大学内のカウンセリングを利用することを強くおすすめします。
社会人と違ってカウンセリングを無料で利用できるのは大学生の特権ですので、気軽に予約してみるといいですよ。とても優しく対応してくれます。
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第二話では、別の病気の可能性とカウンセリングの様子を書きました。数年たって改めて読み返すとものすごくリアルです。(体験を書いているので当たり前ですが)
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