白塗りの奥の力
志村けんさんが亡くなられた。
SNSでは多くの芸能人が志村さんの訃報を悲しむ声をあげている。
僕はHSPという繊細で敏感な気質を持っている。
いままで、有名人が亡くなってもあまりなんとも思わなかったけれど、今回は初めて心がギュッとした。
そして、今日の午後はベッドの上からあまり動けなかった。
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少し前に志村さんが新型コロナの肺炎に罹ったと知って、「比較的高齢だけど大丈夫だろうか…」と不安になったことを憶えている。
母親とご飯に行ったときにも、「志村さん心配やわぁ」という話をした。
母親自身は特になんとも思っていなかったようだけど、一言。
「あ、バカ殿好きだったもんねえ」
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僕はいまテレビを見ない。見ないというか、持っていない。
なので、志村さんが出ている番組もほとんど知らない。志村どうぶつ園は昔見たことがあるかも。
だけれど、僕の物心ついてからの記憶の根源には確かに「バカ殿」が存在する。
成長した僕は大学生くらいからお笑いにハマる。今も好きだ。多くの人よりも少しだけ今の若手芸人を知っていると思う。
その根っこには、たぶん「バカ殿」が存在する。
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『志村けんのバカ殿様』は、いわゆるコント番組だ。志村けんが顔を真っ白に塗って、ちょんまげにオレンジの着物というひょうきんな姿でドタバタコメディを繰り広げる。
幼少の頃に特番でバカ殿が放送されるたびにテレビにかじりついて見ていた記憶がある。レンタルビデオも借りて見たのではないだろうか。
このときの志村さんの姿を見たことが、お笑いを好きになったきっかけのような気がしている。
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バカ殿のお笑いは、しゃべりの巧妙さや伏線回収で笑わせるタイプのものではなく、コミカルな動きや滑稽な行動などで笑わせるタイプのものだ。
昨今の漫才・コントシーンでは「ワードセンス」で笑わせるタイプのものが主流となっているイメージがある。
つまり、ボケに対するツッコミの言葉で笑いを取るような感じ。
対して、バカ殿はボケの真っ向勝負。ボケが炸裂した瞬間に笑いが巻き起こる。
それでも、今でもバカ殿を見たら笑えるんだろうなぁ、と思わせるのってとてもすごいことだと思う。
直接関わったことなんてもちろんないのに、なぜか感謝に似た気持ちが湧く。
あのときの僕を育ててくれてありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。
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最後に。
SNS上で「志村さんの死によってやっと事の重大さに気づくなんて…」という国民に対する批判意見が散見される。
コロナ流行初期から正しく恐れて対策をしている人なのだと思うし、そう言いたくなるのもわかる。
有名人が亡くなったことと、一般の人が亡くなったことは、命の重さは変わらないし、全体の死亡者数や罹患数に目を向けていく必要があるのも当たり前。
けど、死してなお多くの人に意識を変えさせるほどの影響があるって素直にすごいと思う。
彼はきっとお笑いの力でコロナの驚異から多くの国民を救うことになるんだ。
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