グレーゾーンという言葉の存在について
先日、「発達障害を診断する医者が”グレーゾーン”という言葉を使うべきではない」という主旨の記事を見かけました。
今回はこれに対する僕の考えを書いていこうかと。
決してその記事を晒し上げるようなつもりはありません(のでURLも載せません)。
その記事いわく、
筆者は上司にADHDを疑われ、診断を受けに行ったそう。
すると医者から「白よりのグレーゾーンですね」と診断され、それ以降筆者は「結局自分はADHDなのかどうなのか」と悩み続けたと。
そして「僕は白黒ハッキリさせたいんだ!医者が”グレーゾーン”という言葉を使うべきなのか疑問だ!」という結論に至っています。
以上が記事の大まかな内容となります。
まず思ったのは、「白黒ハッキリさせたい」という思考がすでに発達障害っぽいな~というところ。ぼくも自分自身に思い当たるところがあります。
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ぼく自身は、”グレーゾーン”という言葉は医者が使っても良いという立場です。
例えば近年では、世界的な診断基準の見直しにより、自閉症は「自閉症スペクトラム障害」といって、スペクトラム、つまり連続体であるという解釈が採用されています。
自閉症の中だけでも、どの傾向がどの程度の強さなのかというように、幅のあるものと捉えるようになってきています。
そうなればもちろん、「ASDだけど日常や仕事には支障がないレベル」という人も出てきます。
そういう人をグレーゾーンと呼ぶと。
そして、医者が「障害」と診断することの意味も考える必要があると思います。
医者が「障害」と診断するとなれば、社会的には正式に「障害者」ということになり、障害者手帳を受け取ることができ、様々な支援を受ける事が可能になります。
もしあなたが人の診断を下す医者の立場に立ったときに、「脳の特性的には発達障害の傾向があるものの、生活に致命的な支障がなく暮らしている人」が目の前にいたら、「障害」と診断するでしょうか?
もちろん医者によって診断基準は多少ブレるのは仕方がないものの、ちょっと発達障害の傾向があるからといって、社会的支援が必要なければ「障害」とは診断しないのだと思います。
いや、でも脳に発達障害の傾向があるならそれは「障害」ではないかという疑問が湧いてきそうです。
それについては、日本語の「障害」という言葉が曖昧なことが原因になっていると考えます。
「障害」には大きくわけて次の3つの意味があります。
①生物学的に異常があること
②機能がうまく働かないこと
③生活に支障があること
英語にはそれぞれに単語が存在するのですが、日本語では「障害」のひとことです。これが混乱の原因。
より詳しくこのあたりの解釈を深めたい方は、ぜひ次の書籍を読んでみてほしいです。頭の中がスッキリと整理できるはずです。
では、医者の診断の話に戻すとどうなるのか。
取り上げた記事の場合ですと、医者は「①(生物学的に異常があること)の障害だけど、③(生活に支障があること)の障害ではないね」ということが言いたかったのであり、それがすなわち”グレーゾーン”だということでしょう。
こうして意味の整理をしてみることで、ぼくはグレーゾーンという言葉の存在意義を見出した次第です。
言ってしまえば、「障害であるのに障害ではない」という言葉遊びみたいになってしまうのですが、それも含めて面白いとすら感じてしまいます。
もしかしたら、いちばん”グレー”なのは、症状ではなく「障害」という言葉の意味なのかもしれませんね。
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