■要約≪TRANSFORMED 後編≫
今回はマーティ・ケーガン氏著の「TRANSFORMEED」を要約していきます。著者はプロダクトマネジメントの世界における第一人者で、「INSPIRED」は当該分野のバイブルと名高い本です。本書はプロダクト主導のプロダクトモデルをそもそも組成していく為には何を抑えないといけないのか・具体的にどのように移行していくべきなのか?という問いに対する解にフォーカスして体系的に論じた本です。後編の今回はPARTⅦ~PARTⅩⅠを要約します。
「TRANSFORMED」
■ジャンル:開発管理・組織マネジメント
■読破難易度:低~中(プロダクトモデルの概要・具体的な価値基準・移行プロセスについて体系的に記載されており、用語や世界観の最低限の理解があれば比較的読みやすいです)
■対象者:・イノベーション・業務改革に従事する方全般
・プロダクトモデルについて興味関心のある方
≪参考文献≫
■INSPIRED
■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■チームトポロジー
■ユニコーン企業のひみつ
■プロダクトマネジメントの教科書
※前編の要約は下記※
【要約】
■トランスフォーメーションのストーリー
・明確なビジョンと戦略にて規律を形成し、プロダクト主導でイノベーション・トランスフォーメーションを推進していくことがDXの基本です。顧客のニーズや捉えるジョブを中心に据えて、顧客解像度を挙げながらビジネスを通じて当該領域で解いていく問題の特定・ソリューション設計していくということを徹底することが大事になります。それ故に、問題を特定すること・深いジョブを捉えるソリューションを作ること・顧客を引き付けるプロダクト体験・シームレスなサービス・デバイス間の連携などがプロダクトマネジメントにおける重要アジェンダに自ずとなります。エンジニアリングの内製化やプロダクトトライアングルが主導を握る組織体制の構築・プロダクトリーダーシップによるコーチング・ビジネスアウトカムや戦略的思考を明文化・継続的にコミュニケーションし続けるなどがプロダクトモデル移行に伴う大切な実務になります。また、開発生産性を高めるためにプロダクトリーダーが主導となり、コミュニケーションライン・役割を明確化するチームトポロジーと継続的なメンタリング・コーチングを整えることが大切になります。
■トランスフォーメーションのテクニック
・トランスフォーメーションにあたってはアウトカム(いつまでにどんな目標を果たすのか)・アセスメント(現状把握・開発ポイントのあたり、白地や論点の設定)・戦術(具体的な施策検討)・エバンジェリズム(キーマンにおける支援要請、徐々に組織風土変革が必要な為)などを抑えて推進していくことが成功のカギとなります。
・トランスフォーメーションをするにおいては何に力点を置くかの辺りをつけるために定量的・構造的に現在地を診断することが大切になります。その際は様々な役割・階層へのヒアリングを通じて定量・定性の情報収集をしていくことが大切になります。ステークホルダーとは友好的に対話しながらアウトカムの合意・戦略コンセプトなどを継続的に対話しながら進めていくのがカギを握ります。なぜなら、プロダクトディスカバリーやプロダクトデリバリープロセスで現場の共感を得る・正しい方向にリソースを割くが出来ないと成功しないからです。
・プロダクトマネージャーが顧客をどれだけ深く理解しているか・重要なビジネス指標・データを継続的に観測しているかどうかはトランスフォーメーションを行うに足るケイパビリティが当該組織にあるかの指標になります。プロダクトマネージャーが当該組織において、ステークホルダーと継続的な折衝・戦略整合性・ビジョンを中心とした対話、適切な優先順位付けをし続け、周囲から敬意を受け続けることがリーダーシップを発揮するためのカギを握り、相当に有能で好奇心がありオーナーシップがある人を中枢に据えることがプロダクトモデル成功の基本要件となります。
・プロダクトモデルへのトランスフォーメーションにおいては職務・期待役割・優先順位を再定義・明文化・合意形成するという人事面の設計を軽視してはならないとされます。また、プロダクトマネージャー・エンジニア・プロダクトデザイナーの役割分担のバランスを適切に測ることやコラボレーション設計(チームトポロジー)もバカにならないです。優秀なプロダクトリーダー・デザイナーの確保・外注しているエンジニアの内製化などが組織設計においては優先的に対処すべきアジェンダになります。コラボレーションスキルとオーナーシップ・戦略的思考・コーチングスキルなど非常に多様なソフト面のスキルにプロダクトモデルの成功のカギは握られていることになります。
・プロダクトモデル成功の為には組織風土を顧客中心主義と仮説検証・組織学習型への移行していくことが成功要件のカギを握ります。その促進剤として、サービスブループリント・リーンキャンバス・ロードマップ・OKR・ABテストの活用など構造化・可視化フレームワークで戦略的に対話することやビジネス成果への連動性を問うというコミュニケーション設計などが欠かせません。ただやれば成功するという訳ではないのがプロダクトモデルです。
■反対を乗り越える
・「我々はプロダクト企業であって、カスタム・ソリューション・プロバイダーではない」ということを顧客に合意することがプロダクトモデル移行における最初の関門です。要求をソリューションのように表現するのは当たり前であり、その背景にある問題・課題を捉えて、プロダクトで満たす方法を考えるというコミュニケーションが大切になります。機能要求に対しては活用タイミング・インパクトの度合いなどを明示してもらい、優先順位付けするという姿勢でプロダクト組織が対峙することが必要になってきます。
・プロダクトモデルにおいてはプロダクトマネージャー・プロダクトデザイナー・テックリードがビジネスを牽引していくことになり、GTM戦略の遂行やプロダクトディスカバリープロセスにおいては営業部長クラスがプロダクトマネージャーと折衝することがよくあることです。顧客セグメントを切って、売上を継続的に作ること・拡販筋探索や顧客インサイトを捉えてプロダクト戦略に反映・お納めする役割を営業は担う形になります。複雑性が増して・機敏さが欠けるプロダクトデザインを許容するのはプロダクトモデルの崩壊を意味するので、責任者を通してやり取りを判断するという姿勢が必要になります。顧客のセグメンテーションとリファレンスカスタマーの探索はプロダクトグロースにおいて必ず検討するべきアジェンダであり、これは仮説を営業部門から持ち寄ってもらい、プロダクトマーケティングとプロダクトマネージャーで検討・仮説検証するというのが一般的な筋となります。
・プロダクトモデルへの移行に際してはCEOとの関係性(CEOがプロダクトモデルを理解していること・主導権をプロダクト部門に委任できるか)が大事になります。プロダクトモデルを進めていく上で、取締役会にロードマップを提出求められることがよくありますが、それは詰まる所開発テーマの投資対効果を判断したいということであり、CEOやCFOなどとプロダクト戦略の進捗・論点・考え方について継続的に議論・すり合わせをしていくことが求められます。改めて、プロダクトモデルの主導権を確保し続けるにはオーナーシップやステークホルダーマネジメントが欠かせないのです。
【所感】
・プロダクトモデルが効果抜群であることは様々なテック企業の成長・変革を見れば自明で、それでも実行・変革するのが難しいという現実に対する解をシンプルに明示した本が本書であると改めて感じました。プロダクトチームがオーナーシップを持つこと・適切な人をバスに乗せて継続的なメンタリング・コーチングとプロダクト戦略に忠実な判断軸・規律を徹底することなど実行には様々な条件がつきもの(それくらい組織は生ものであり、プロダクトモデルは簡単に崩壊しうるということです。一方、それだけ一度構築すれば持続的な競争優位にも寄与するとも言えます。)ということが明らかと言えるでしょう。
・本書はAdobeやNetflixなどを筆頭にプロダクトモデルに移行して大きなビジネスアウトカムを経て、社会を大きく変容させたプロダクトの事例・実態が詳細に記述されており、理論の実際における解像度が継続的に高まるような構成になっており、さすがの内容に思えました。また、正しい問題を解く・効果的に学習するというプロダクトディスカバリーのプロセスとプロダクトがビジネスとして成立して投資を獲得し続けるポテンシャル・兆しを見出すGTM戦略の両輪を回していくことがプロダクトモデルの可否を握る隠れた要件であるなと感じた次第です。プロダクト分野の理論はエンジニアリング・デザイン・マーケティング・競争戦略など様々な分野の理論・知識を並行で学習し、立体的に学びを得ていく(数冊読み、実践して事後的に有機的な学びを得る)ことが多いなと感じ、引き続き実践とインプットあるのみと感じました。
以上となります!