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「面白い作品」と「ためになる作品」。世の中に広めるべきは、どちら?

こんにちは。「読者による文学賞」を運営をしている まつ です。
久しぶりの投稿だというのに、少し挑戦的なタイトルですね。苦笑

ちなみに皆様なら、上の質問になんと答えますか?

「どっちも良い」「人それぞれ」なんて答えは禁止です。絶対にどちらかを選んでください。

……なんて強圧的なお願いになってしまいましたが、実はこうした問いに毎年挑戦しているのが「読者による文学賞」に関わる読者たちです。
文学賞では読者に推薦された作品から「もっと多くの人に読んでもらいたい作品」を、これまたイチ読者である選考委員がウンウン頭を抱えながら実際に選んできました。

正直、文学賞の運営者として正しい発言かは分かりませんが、このタイトルの質問には答えも間違いもないと思っています。色々な回答があってしかるべきです。
逆に運営者が決めた答えがあるのなら、最初から文学賞をやる意味はなく、私ひとりでやっていなさい、と言われるのがオチでしょう。

しかし絶対的な答えがないといっても、文学賞としては結論を出さなければいけません。だからこそ、結果と同じかそれ以上に「選ばれた理由」は重要なことだと思っています。

一方で、世間を見てみると選考や賞というものは「受賞結果」に大きな注目が集まるものの「受賞理由」というのはそれに比べて小さな扱いのような気がします。これは当文学賞にも痛い指摘で、やはり受賞結果の方が注目が大きい。これは反省すべき点です。

受賞作品が選ばれるまでには色々面白いストーリーがあるのだから、もっと知ってもらいたい!その広報をしよう!ということで久しぶりにnoteの投稿を決めました。実際、どのように上の問いに答えているのか少し紹介させてください。

!注意!
これは、文学賞運営者の私的な意見です。影響力はありますが、文学賞は他の人たちも一緒にしている活動のため、当然そのままイコールではありませんし、ましてや他の選考委員が私自身と全く同じ考え・想いではないことはご注意ください。

文学賞は、読者の推薦で候補作品が決まる「一次推薦」からスタートします。

「その人」が現れる二次選考。

当文学賞の二次選考は、まさにタイトルの質問に答えるような選考です。読者に推薦された作品のなかから、それぞれが担当する本を選び、そのなかから「1冊だけ」を最終選考に推薦します。

まず面白いのは担当の分かれ方。やっぱり選書だけでも、その人の個性が見えます。もちろん、他の人との兼ね合いもあるので、純度100%の選書ではありませんが、それでも選書の傾向に違いが出てくるのは明らかです。

そして、より違いが明確になるのが「1冊を選ぶ基準」。提示しているのは同じ「もっと多くの人に読んでもらいたい作品」という問いですが、理由は千差万別です。

今の世情を受けて「まさに今こそ受け入れられるべきはコレ!」という理由もあれば
逆行するようなニッチな作品だからこそ「世間は違う方向に進んでいるけど、これは無視しちゃアカン!」という理由もあります。
世間なんて関係ない!読書の楽しさを広めたい!ということで「ページをめくらせる力」が理由になることも当然あります。

既に読者の目を経て推薦された作品なので、どの作品も珠玉のものです。そのなかからあえて選ぶと、どうなるのか。それぞれの考えが選評にはあらわれています。

過去の選考理由を、ご興味あればお目通しください。本当にそれぞれ違って、自分との違いも加わり新鮮さに溢れています。


「他人」に気づく最終選考。

そして、それぞれが選んだ1冊が最終選考を担当する選考委員のもとに届けられます。全員が読み終わると、一同が話し合って受賞作を決定することに……熱くカオスな時間が始まります。そのままだとまさに無秩序なので、毎年最終選考の内容は整理をして届けていますが、それでも錯綜した進行が見て取れるはずです。

同じ作品を読んでいても違う感想。
違う作品を読んでいるのに同じ感想。
同じ選考基準なのに、違う作品の推薦。
違う選考基準なのに、同じ作品の推薦。

正直言って、混沌です。ただ、刺激的な時間でもあります。
選考を経験するまで、小説は自分と全く違う世界に連れて行ってくれる「どこでもドア」のようなものだと思っていました。

でも、連れて行ってくれる世界のさまは、ドアノブを握る人によって全然違うことには気がついていませんでした。そして戻ってきて、お互いに自分たちが見た世界を説明しあうと、実は違う世界に行っていたという事実に驚くのです。

もちろん、人によって感想が違うことは頭では分かっています。ただ無意識に「流石にこれは共通の認識で大丈夫でしょ」と思っていた部分ですら、平気ですれ違います。

読者による文学賞の第一回受賞作品「どうかこの声が、あなたに届きますように」で登場するラジオのディレクターにこんな台詞があります。

ラジオにはテレビやネット動画と違って映像がない。
映像という明確なものがない分、リスナーはそれを補って想像する。
そうして頭の中で想像されたものは、誰にも否定されないし奪えない。

「どうかこの声が、あなたに届きますように」 (著・浅葉なつ/版・文藝春秋)

きっと小説も同じなのです。自分が読んで創った世界は、実は自分しか行けない世界だったという事実は、どこか小さな孤独感と同時に作品への深い愛着を与えてくれます。

そのなかで他の人と意見を交わらせながら受賞作品を決めるのですから本当に大変なことです。しかし、だからこそ一人で完結していた読書では気がつけなかった発見も沢山あります。

「もっと沢山の人に読んでほしい作品はどれか?」

主に選考委員の話になりましたが、この文学賞の候補作品は読者の推薦で集められているので、推薦してくださった方々の作品決定の背景には色々な考えがあるはずです。

自分自身に問いながら、他人と意見をすりあわせながら、文芸に通じた有識者の意見に頼るのでもなく、多数決で決めるのでもなく、それぞれの読者が体当たりで回答をだそうとするこの文学賞の試みは、「読者による」という名前が冠すとおりの挑戦だと思っています。

あなたの回答をお待ちしています。

最後に、このnoteの目的を達成させてください。そう、宣伝です!!笑

現在、文学賞の一次推薦を2023年1月14日まで募集しています!!
今年出版された小説のなかで、おすすめの作品があれば、ぜひ推薦をお願いします!!

該当するのがないよ……という方は、よろしければこのnoteの記事や文学賞をシェアしていただけると嬉しいです。

文学賞の認知度が高まれば高まるほど、本好きの方からの推薦が増えます。今は見つからなくても、推薦作品のなかにはアナタが出会うべき作品があるかもしれません。

そして宜しければ、今年はどんな作品が選ばれるのか。過程も含めて見守っていただけると嬉しいです!!

どうぞよろしくお願いします!



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