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「本好きな人」を探してたら、自販機の下を覗く呪いにかかった

自販機の下に鈍く光るものがある。覗いてみると、やっぱり!10円玉だ。
こんな経験をした人は一定数、いると思う。

逆に自分で落としてしまって、ああっ…しまった。えい!
と這いつくばって拾おうとした経験がある人もいるかもしれない。

ちなみに私の知り合いが、同じように取ろうとした際、胸ポケットにかけていた眼鏡を地面へ強く押し付けて折った。
とれた!と喜んでいた笑顔が、眼鏡の破損に気がついてみるみる萎んでいくさまは未だに忘れられない。

みなさまも、どうかお気をつけて。

そんな自分はというと「本好きな人」に会えないかと思って自販機の下を覗くようになった。
もちろんこれを聞いてウンウン分かる!となる人は、まぁいないと思う。

というより皆無と断言してしまっても良いかもしれない。でも実際に、そうなので仕方がない。

とはいえ、こう言うと怪しげな視線をおくられるのは、まず間違いないので、ちゃんと弁明しておきたい。


「読者による文学賞」を創立し、運営しています。
と紹介すると、大体「なんですか、それ?」と言われる。
そこで詳しく説明していくのだけど、反応は二通り。

ひとつはウンウン頷きながら続きを促してくれる。
もうひとつはヘェーとは言ってくれるものの、興味は薄くて早々に違う話に変わる。

自分の語り下手は脇に置いておいて、これらの反応を分ける大きな理由のひとつは「読書に興味があるか」だと思う。
もっと言うと「小説」に興味があるか。

実際、身の回りに小説好きな人がどれくらいいるか、と問われると存外少ない。交流関係の狭さゆえだと指摘されればぐぅの音も出ないが、じゃあ日本全体ではどれくらいいるのか。

実は公式の調査というものが見つけられなかった。子供の読書習慣などはあるけど日本全体の公式な調査記録が見つからない。

文学賞の計画を立てる上でも、どうしても欲しい数字だっただけにこれは残念。そこで仕方ないので、自分で計算してみた。

ちなみに参考になるものとして斎藤美奈子さんの著書「趣味は読書。」という書評で同じように独自の計算をしていて、だいたい月に小説を読む人は500万人前後と概算していた。ただ、これは古い本なので、今とはもっと乖離があるのかもしれない。

細かい数字の羅列が続いたところで面白くもないので、結果だけで書いてしまうと月に1冊以上小説を購入するのは400万人ほど1年に1冊以上となると980万人ほど、という予測になった。

これは出版業界全体の売上。文芸の売上構成比率。文芸作品の平均単価。書店での一人当たりの購入頻度など、それぞれ別の調査を元にした計算です。もし正確なデータをお持ちの方がいれば教えてください。

これを多いとみるか少ないと見るか。

個人的には思ったよりも多いと思った。

昨今、人気のYoutuberが登録者数が○百万人なんて数字を挙げるせいで感覚がおかしくなっているかもしれないけれど、スポーツを例にとれば野球のファン人口は約2000万人サッカーファンが約800万人である。サッカーファンより小説を購入した人の方が多いのだ。正直、意外だった。

一方でワールドカップの盛り上がりなんかを見ると、普段サッカーを観ない人まで日本代表を応援している。この間のカタールW杯の視聴率が20.2%らしいので、単純な計算をすれば2400万人が試合に注目していたことになる。小説にそんな「普段、本を読まない人にまで手を取らせるようなイベント」があるか、と言われると難しい。

一時は本屋大賞がそれを担っていて200万部なんて数字を出していたが、最近の発表では大賞の部数は50万部ほど。残念ながら、だんだんと下がってきてしまっている。新しく小説に呼び込む仕掛けがもっと必要だと思う。これも文学賞を始めた理由の一つである。

と、話がそれてしまったので戻す。

つまり、1年の間に1冊でも小説を買って読んだ人は全人口で見ると8%ほどになる。
ということは約13人に会えば1人は、小説を読んでいる人という訳だ。

ちなみに8%ほどの確率って、他に何があるんだろうと調べてみた。

ここでタイトルに戻る。
そう。自販機の下にお金が落ちている可能性が10%ほどらしいのだ。
もちろん、これはネットの情報なので眉唾だけど面白い例えだと思う。

それ以来、自販機の前を通ると、このことを思い出してしまい、試しにひょいっと下に視線を向けることが増えた。

お金あるかな、というより、本好きに会えるかな?という花占いの感覚に近い、ある種の運試しの気持ちで。

ちなみに、まだ一回も見つけてない。本好きはそこまで希少なのだろうか…

だんだんと意固地になってきて、視線をむける回数は増えていく。もはや呪いである。

実害はないので、別に構わないのだけど、それよりも心配がある。

いざ「趣味は読書です」という人に出会えたとき、逆に感動で「この人、自販機の下の10円玉だ!」とか思わないか、ということだ。

失礼にならないようにとは思うものの、やはり自販機の前を通るとつい下を覗きたくなってしまうのである。


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