最先端科学が解き明かす「運気」の正体
非科学的と言われながら、誰もが信じているものがある。
それは「運気」だ。
「私は運なんていうよくわからないものは信じません」
と思った人でも、日本人なら一度くらいは神社に行ってお参りして自らの願いを伝えたことがあるだろう。
「今日はツイてるなぁ…」
「なんだか最近ツイてないんだよね…」
なんてことを一瞬でも感じたことがあるのではないだろうか。
表面的には信じていないと言っても、わたしたちはなぜか、心の奥深くでそれを信じていたりするから不思議だ。
海外には、
という言葉があり、日本にも、
というような、運気にまつわることわざが存在する。
洋の東西を問わず「運」に関することわざがあるということは、過去から現在まで、無数の人がそれを体験している証と言えるだろう。
この「運気」は、いまだ科学的にはその存在が証明されていないのだが、これを現代科学の最先端で議論されている科学的仮説を踏まえて解説している本がある。
田坂広志さんの『運気を磨く』という本だ。
運気は、現代科学の最先端、「量子力学」の世界で議論されている「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」や「ホログラム構造の記録」「量子脳理論」などを用いて、その正体を論じることができる。
ここでは、本書を参考に、「運気」の正体を科学的に解き明かしていこうと思う。
1.運気とはなにか
そもそも運気とは何なのか、お互い明確なイメージを持って本題に入りたいと思う。
田坂さんは本書で、運気を5つに分類している。
①「直感」が閃く
②「予感」が当たる
③「好機」を掴む
④「シンクロニシティ」が起こる
⑤「コンステレーション」を感じる
①「直感」が閃く
たとえば、じゃんけんで何を出すか、ルーレットで赤と黒どちらに賭けるか、ポーカーでノルかソルか、というときに「直感」や「勘」が閃き勝った!というのは良い運気の現れだ。
②「予感」が当たる
人生における大切な選択を前に、「こちらの道を歩んだ方がいいのではないか」という予感がし、実際に従ったら正しい選択ができた、というのは良い運気の現れ。
逆に、「嫌な予感がしていつもの道を避けたら事故に合わずに済んだ」というのは悪い運気を避けたということになる。
日本には「虫の知らせ」という言葉がある。
③「好機」を掴む
たとえば会社に大きな仕事が突然舞い込んできたときに、担当できる人が誰もおらず、ちょうど自分のプロジェクトがひと段落したところでチャンスをつかむことができたとか、サッカーでゴール前の混戦でタイミングよく自分の足元にボールが転がってきて足を振っただけで得点につながったなどなど、偶然が支配する状況で「好機=チャンス」を掴むということも良い運気の現れと言える。
④「シンクロニシティ」が起こる
シンクロニシティとは「不思議な偶然の一致」が起こること。
たとえば「カフェをオープンしたい」と思い立ったところ、その日たまたま出会った人が空き物件を持て余していて、内見したら自分のイメージ通りの場所や間取りだったとか、「こんな情報が欲しい」と思っているとたまたまコンビニで手にした雑誌の偶然開いたページにその情報が載っていたなど、良いタイミングでシンクロニシティが起こることも、良い運気の現れだ。
⑤「コンステレーション」を感じる
コンステレーションとは「星座」という意味の英語。
夜空に見える星々は、それぞれまったく関係のないバラバラな星だが、わたしたち人間はその配置に意味や物語を感じ、オリオン座といった形でそれらを「星座」と呼ぶ。
これと同じように、人生で起こる一見無関係な出来事・出会いに何かの意味や物語を感じてそれに従って選択や行動をすると、良い方向に導かれるということが起こる。これも良い運気の現れと言える。
ここでは、この中の②予感と④シンクロニシティを中心に解説していく。
2.「未来の記憶」と呼ぶべき現象
ところであなたは、これまでの人生において、自分の未来を「予感」した体験はないだろうか?
本書の著者である田坂さんは、アメリカでドライブをしていたとき、何気なく一軒の住宅の写真を撮った。その市内になる無数の住宅のうち、一軒を無意識に撮ったそうだ。
そのときのことをすっかり忘れていた3年半後、たまたま仕事でアメリカに赴任し、無数の住宅のなかから一軒の住宅を見つけ、そこに住んだ。
あるとき昔の写真を懐かしく眺めていたところ、3年半前に何気なく撮った写真の中に、いま自分が住んでいる住宅を発見し、驚きとともにその写真に目が釘付けになった、という経験を語っていた。
また、個人的な話だが、わたしは結婚してから長い期間子どもを授かることができず悩んでいた時期があったのだが、あるとき、会社から電車に揺られて帰宅している最中、突然に「子どもが生まれた!」ということを予感した瞬間があった。そしてその数日後、本当に子どもを授かったことが判明した、という不思議な体験をしたことがある。
こうした「予感」や「未来の記憶」のような現象は、過去に見た光景が未来に起こる現実と不思議な一致を示すという意味において、「時間を超えたシンクロニシティ」と言うことができる。
ではなぜ、こういった現象が起こるのか?
それは、現代科学の最先端で議論されているある一つの仮説によって説明することができる。
3.量子力学が示す「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」
この仮説はわたしたちの日常感覚を超えた理論のように感じるため、「怪しい…」と思われる人もいるかもしれない。
けれど、科学的教育を受け、原子力工学の博士課程で学んだ田坂さんの知見からみて「一つの科学的仮説」として検討に値するものだ、ということをあらかじめ伝えておく。
「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは、超カンタンに言えば、
この宇宙のいたるところに偏在するエネルギー場に、宇宙の過去、現在、未来のすべての情報が記録されている
という仮説だ。
現代科学の最先端の量子力学においては、何もない「量子真空」と呼ばれる極微小の世界の中に、膨大なエネルギーが潜んでいることがわかっている。
3-1.「宇宙創成」最有力理論
そのことを象徴するのが最先端の宇宙物理学が提唱している「この宇宙はビッグバンによって生まれた」という「インフレーション宇宙論」だ。
138億年前にはこの宇宙は存在せず、ただそこには「量子真空」が存在していた。それがあるときふと「ゆらぎ」を起こし、大爆発を起こしてこの宇宙が誕生し、以来、宇宙はいまも膨張し続けている、というのがインフレーション宇宙論。
このことから、量子真空というものの中にはこの壮大な宇宙を生み出すほどの膨大なエネルギーが凝縮されていたということになる。
近年、真空を人工的につくって、そこから物質を生み出す実験、まさにビッグバンを再現する実験が行われており、宇宙創成やわたしたちの起源についての謎がはっきりするのも時間の問題だろう。
そんな量子真空の中に、ゼロ・ポイント・フィールドと呼ばれる場が存在し、その場に、この宇宙の過去、現在、未来のすべての出来事が「波動」として「ホログラム的な構造」で記録されているという仮説が、現在注目されているのだ。
3-2.無限に近い情報を記録できる「ホログラム」
あなたは映画スターウォーズを見たことがあるだろうか?
その中で主人公のルークスカイウォーカーの前にレイア姫がちいさな投影機から三次元の立体映像として浮かび上がるシーンがあるのだが、それがホログラムのわかりやすい例だ。
ホログラム技術というのは、波動干渉という現象を利用して情報を記録する技術のこと。
角砂糖くらいの大きさの媒体に国立図書館の全蔵書の情報が収められるほど膨大な情報が記録できるので、この技術を使えば、ほぼ無限に近い情報を記録できると考えられている。
3-3.未来は決まっている?
量子真空の中にホログラム構造の「波動」の状態でこの宇宙の過去・現在・未来の情報が記録されているとしたら。
このゼロ・ポイント・フィールドに何かしらの方法でアクセスできれば、前述したような「予感」や「シンクロニシティ」のような現象が起こり、良い運気を引き寄せることができる、ということになる。
「ではでは、いよいよゼロ・ポイント・フィールドにつながる方法に…」と核心部分に入る一歩手前で、素朴で重大なある疑問が巻き起こる。
それは、
「え?じゃあ、すべての情報がこの場にあるということは、わたしの人生にこれから起こることは、運命は、すでにすべて決まっているってこと?」
この疑問に対して、明確に言えるのは、
「わたしたちの未来は決まっていない」
ということだ。
なぜそう言えるのか?ここで、過去の記事でも書いた「量子の特性」について思い出してほしい。
3-4.「量子は粒であり波である」二重スリット実験の衝撃
「量子は粒子と波の性質をあわせ持っている」ということが、量子力学の世界では超有名な「二重スリット実験」によって証明されている。
どういう実験かザックリ説明すると、
発射された電子や光子などの量子が「波」の性質を持っているなら、両方のスリットを通ってスクリーンには「干渉縞」が映るはず。
でももし、一粒一粒の「粒子」としての性質を持っているのであれば、一度にどちらかのスリットしか通れないので、スクリーン上にはスリットの形が浮かび上がるはずだ。
という予測から実験を開始。
その結果…
驚くことに「観測していない」ときはスクリーンに干渉縞が映り、「観測している」ときはスクリーンには二重スリットの形が浮かびあがった。
これは世界各国の研究者が何度も何度も実験をしており、確実にそうなることがわかっている。
つまり、電子や光子などの粒子は、粒子と波動、二つの性質を併せ持っていて、誰かが「観測していない」ときはあいまいな「波」の状態だけど、観測することでその性質は粒子になる、ということだ。
この量子の性質から、ゼロ・ポイント・フィールドに記録されている未来というのは「確率の波」であり「可能性の未来」だと言える。
ゼロ・ポイント・フィールドにつながって未来の情報に触れるとき、確実に到来する未来ではなく、最も起こりそうな、確率の高い未来の情報に触れているのだ。
そして、その「可能性の未来」をわたしたち観測者が現在において「観測」したとき、はじめてひとつの未来が確定する。
4.「ゼロ・ポイント・フィールド」につながる方法
そして、ここまで解説してきた「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」というのは、私たちの心が、このゼロ・ポイント・フィールドと量子レベルでつながっており情報を受け取ったり送ったりすることができる、というところまで含めた仮説になっている。
ここで重要になってくるのが「量子脳理論」だ。
現在の最先端脳科学の世界で注目されている「量子脳理論」は、わたしたちの脳の働きには量子的プロセスが深くかかわっているという観点から、意識や脳内コミュニケーションの問題を解明しようとするもの。
もしわたしたちの脳がコミュニケーションに量子的プロセスを使っているのであれば「ゼロ・ポイント・フィールドとわたしたちの脳が量子レベルでつながっていることは大いにあり得る」と田坂さんは言う。
現時点ではまだ明らかになっていないことが多く、まだまだ仮説の域は出ない。
でも、今後も、「量子力学」「宇宙物理学」「量子脳理論」「量子生物学」の分野が進展していくことは間違いなく、いずれ明らかになることだろう。
と田坂さんは言っている。
5.運気を引き寄せる方法
ここまでの解説を踏まえれば、私たちの意識・無意識が、なぜそれと似たものを引き寄せるのかについても説明できる。
まず、ゼロ・ポイント・フィールドに記録されている過去・現在・未来の情報というのは、ホログラム構造の「波動」として記録されている。
また、私たちの脳、心の中に存在する想念、意識・無意識も、そこに量子プロセスが関与しているのであれば、これらも「波動」として存在しているということができるし、過去に書いた記事にもあった通り意識・無意識や言葉によって細胞の振動数が変わることがわかっている。
ここで「共振」「共鳴」という現象について知っておきたい。
「共振」とは、その物体が持っている固有の振動数と等しい振動が外部から伝わったときに、振動の幅が大きくなり、場合によってはものすごいエネルギーが生まれる現象のことで、「共鳴」とは、共振現象の中の音に関するものを言う。
つまり、私たちの脳、心の中に存在する想念、意識・無意識が「ゼロ・ポイント・フィールド」とつながるとき、そのフィールド内にある「類似の情報」と「共振・共鳴」を起こし「引き寄せ」を起こす、というのが「引き寄せの法則」の科学的な説明となる。
これも現時点では一つの仮説にすぎないが、
と田坂さんは言う。
6.まとめ
「量子真空」を前提とした「ゼロ・ポイント・フィールド仮説」とは、
①この宇宙のすべての場所には「ゼロ・ポイント・フィールド」と呼ばれるエネルギー場が存在している
②この「ゼロ・ポイント・フィールド」には、わたしたちの生きるこの宇宙の過去、現在、未来のすべての情報が記録されている
③つまり、私たちの心が「ゼロ・ポイント・フィールド」に何らかの形でつながったとき、過去、現在だけでなく、未来に起こる出来事をも予感することができる
という仮説。
田坂さんいわく、
とのこと。
本書では他にも、奥深い無意識の世界のことや、死後の世界、前世の記憶、生まれ変わり、神や仏の実体などなど…
さまざまな興味深い謎に、東京大学で原子力工学研究者としての道を歩んできた科学的思考の人であり、不思議な現象をすぐに「霊的世界」や「超能力」と言って思考停止的な解釈に結びつける非科学的説明にはまったく納得がいかない田坂さんが科学的説明の光をあてて、解説している。
また、「無意識を浄化して良い運気を引き寄せる」ための具体的な技法についても細かく丁寧に解説されているという素晴らしい本だ。
田坂広志さん著『運気を磨く』
本書を手に取っていただきたい。
そしてぜひ、これを最後まで読んでくれたあなたと一緒に、学びを深めたいと思っている。
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