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時価総額世界8位 中国アリババが零細パパ・ママショップと組む理由

おはようございます。ドドルあおけんです。

このnoteでは、月〜金日替りテーマでIT系のビジネストレンドなどをできるだけ噛み砕いてご紹介しています。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)の木曜日。今月最初に取り上げた中国で進む小売のDXについての続編。パパ・ママショップのような零細小売と時価総額世界8位の巨大IT企業アリババがなぜ連携プレーをしようとしているのか、そのエッセンスを理解できる回となっています。

ちなみに今、中国で進んでいるDXを取り上げたのはこちらの回となります。

中国の伝統的な小売業「小売部」

中国には「小売部」と呼ばれる非常に伝統的なリテールのビジネスモデルがあるそうです。それは一般的な集合住宅エリアで夫婦で経営しているような小さな雑貨店。たばこや酒類、茶、砂糖、塩、醬油、酢、油などを販売していて、日本でいうと昔の米屋とか酒屋さんみたいな感じですかね。

その数、全中国で600万店(!)と言います。ちなみに日本のコンビニは5.5万店くらいなんで、日本のコンビニの100倍以上のパパ・ママショップが中国にはあるというイメージです。

日本でも地元の商店街がイオンやヨーカドーなどの大規模なチェーン店に塗り替えられていったように、中国でもウォルマートカルフールなどのスーパーが中国に進出した後、大半の消耗品の価格が引き下げられ、週末や祝日にスーパーで大量の日用品をまとめて買い出しする、というライフスタイルが定着していったんです。

これによって価格面で割高な、小売部は苦境に立たされます。

  そしてさらに近年はeコマースの発展が大型スーパーのビジネスを奪い去っていくという小売の世代交代が起きているんですね。

IT武装する小売大手が経営効率を上げる中で、小売部は何社もの卸業者を通すため、商品の販売価格はスーパーやネットより高くなり、品質管理面においても、商品の品質がまちまちで品揃えも悪く、大型スーパーには太刀打ちできません。

その結果、消費者は切羽詰まった緊急時に必需品を買う以外、小売部に行くことはほとんどなくなったといいます。
お客さんと近いという小売部の唯一の優位性ですら、も徐々にセブンイレブン、好隣居(中国系コンビニエンスストア)、ファミリーマートといったコンビニチェーンがその価値を奪い取るようになりました。

しかし、この600万店というパパ・ママショップの顧客から「近い」という価値をITの力を最大限活用して再構築しようとしたのが、アリババグループです。ここかからは、日経ビジネスのこちらの記事を参考にどのようにこの小売部を活用しようと考えたのかそこの深堀りしてみたいと思います。

アリババのパパ・ママショップの肉体改造をサポートするアリババ(天猫小店)

中国でリアル店舗を急拡大、物流変えるアリババの野望:日経ビジネス電子版

早速日経ビジネスの記事の抜粋からです。

こうしたお店を宅配拠点に位置付け直したのが、中国のEC(電子商取引)最大手、アリババ集団だ。自社のネット通販サイト「天猫」の名前をあしらった「天猫小店」と呼ばれる加盟店は中国全土ですでに数万店。彼らがネット通販で購入された商品を顧客の手元に届けるための「ラストワンマイル」で重要な役割を果たすことになる。

日本でもEC需要が爆発し、物流が悲鳴を上げる中で、いわゆる「ラストワンマイル」という物流センターからユーザへ届けるまでをどう最適化するか、いい感じにするか、というが大きな問題になっていますが、アリババはこうしたパパ・ママショップを何万店という単位で組織化することで、ラストワンマイルという課題に対する「物流拠点にする」という再定義をしています。具体的にはどんな方法で拠点化しているのでしょうか?

加盟店になるには、主に3つの条件がある。
①店舗の決済時にはアリババが提供するPOS(販売情報管理)システム導入
②商品全体の約3割をアリババ傘下の卸会社から仕入れる
③店舗に冷蔵庫を備えている
一見バラバラの条件のように見えるが、ネットのデータをリアルの世界へ還元するための仕掛けだ

POSシステム、仕入れはなんとなくわかりますが、なぜ冷蔵庫?、気になります。

それぞれどんな意図があるか見てみたいと思います。なぜ、アリババのPOSシステムの導入、3割仕入れをパパ・ママショップに迫るのでしょうか?

まずアリババが自社のネット通販サイトから得た顧客データと、店舗にあるPOSデータを使うことで、それぞれの店舗ごとに商品の需要予測ができるようになる。
例えば、「高級住宅街に近い天猫小店の近くでは、高級豆を使ったコーヒーを買う人が多い」といった具体的な情報を加盟店側は知ることができる。
加盟店はこうした売れ筋情報を基に商品を仕入れれば、売り上げの拡大が見込める。アリババも商品の売り先がネットだけでなく、リアルな世界にも広がる利点がある

アリババが欲しいのはデータです。地域が違えば客層が違い、客層が違えば買うものの傾向も変わる。アマゾンはネットショッピングでどこに住んでいる人がどんなものを買うかは大体把握しています。

でも、リアルの店舗で買うものと通販で買うものをなんとなく使い分けているユーザも多くて、オンライン・オフライン含めてお客さんの消費行動すべてを把握した上でビジネスを設計したいアリババとしては、リアル店舗の消費行動はどうしても欲しいデータで、その”触覚”としての役割を”小売部”に求め、それをもとにアリババから商品を卸すことでビジネス的にも成り立たせようとしたわけです。

では、3つ目の冷蔵庫、という条件はなぜ生まれたのでしょうか?

3つ目の条件である冷蔵庫は中国ならではの発想かもしれない。
中国の家庭では塊の肉を購入し料理する場合が多く、ネット通販での注文も増えている。冷温物流のネットワークが中国でも広がっているとはいえ、冷凍の肉を顧客の玄関先まで運ぶのは手間がかかりすぎる
そこで、活用するのが天猫小店だ。ここが冷凍した肉を各家庭に配送する拠点となる。顧客が店舗に足を運んで直接、商品を受け取ることもできるし、顧客がスマートフォン(スマホ)を介してフードデリバリーの宅配員に商品を店舗から自宅に運んでもらうことも可能になる。

肉を塊で買う習慣、それを物流センターから運ぶのは大変なので、肉の物流センターとしてパパ・ママショップの冷蔵庫を利用する。クール宅急便が発達している日本は冷えたものが送られてくるのは当たり前かもしれませんが、世界の当たり前ではない、ということですね。

こうした零細店舗のネットワーク化を進めることでアリババはネットショッピングとリアル店舗の垣根を取っ払おうとしているのです。その結果どんな成果を生み出しているのでしょうか?

アリババのネット通販サイト「天猫」の1年間の流通総額は日本円で約90兆円、スマホ決済サービス「支付宝(アリペイ)」の利用者も世界で10億人を超える。中国のネット通販事情に詳しい東海大学の小嵜秀信客員准教授は「リアルとネットの融合を進め、情報とモノをつなげている」と、アリババの天猫小店の取り組みを評価する。
アリババは2017年に1000億元(約1兆5000億円)を物流分野に投資すると発表、物流インフラの整備に力を入れている。
広大な中国でいかに効率よくモノを運ぶか。ネットとリアルの世界をデータを軸に融合させる発想は、欧米の物流業界を中心に取り組み始めたフィジカルインターネットの考え方そのもの。アリババは物流分野でも世界の先頭を走ろうとしている。

ネット通販で覇権を握るアリババはネットからその戦場をリアルに拡大し、自らコンビニ店を立ち上げるのではなく、既に存在する伝統的なパパ・ママショップを上手に取り込むことでビッグデータを吸い上げ、ネット&リアル店舗の相乗効果を狙いに行くというのは非常に理にかなったものです。

さらに、仕入れのノウハウや経営の効率化が遅れる零細店舗の救済も図れるこの戦略は、日本の小売のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を考える上でも注目すべきサンプルになると思いました。

ということで、本日のお話は以上です。

日報

昨日の備忘録として。

・ECサイトリスト整理(am)
・ウェビナーディスカッション(1pm)@茅場町
・ECサイトUXチェック(pm)
・Mike MTG (5pm)
・Ph1 プロジェクト進捗会議(5:30pm)

明日は、グローバル・未来の金曜日。マイクロソフトが開発を進めているホログラムを現実世界に投影するホロレンズについてそのデモ映像を見ながら、近い未来で起こる拡張現実の世界を覗いてみようと思います。

マーケティングの月曜日
経営戦略・事業開発の火曜日
EC・ロジスティクスの水曜日
DX(デジタル・トランスフォーメーション)の木曜日
グローバル・未来の金曜日
ライフハック・教養の土曜日
エンタメの日曜日

それでは今日もよい一日を。

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