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文化をまとうための引き出しを突貫で作る方法

おはようございます。ドドルあおけんです。

ライフハック・教養の土曜日。今日は、お友達にこの本サマって解説して、と依頼されたのでトライしてみます。

仕事術、と書いてある本ですが、デザイン・アートと広告のバックグラウンドを持つ切れ者お二人の対談なので、仕事術というよりは、その対談の節々に飛び出す教養をチェックしながら、文化の漂う人になるには?という視点でお二人の話を切り取ってみたいと思います。

卓越した知性・感性を持つお二人のプロフィール

いつものようにまずはWikiベースでいきます。

山口周_-_Google_Search

山口 周(やまぐち しゅう、1970年 - )は、東京都生まれの日本の独立研究者、著作家、パブリックスピーカーである。本人は「ナレッジキュレーター」と名乗ることもある。「経営におけるアートとサイエンスのリバランス」「組織の潜在的創造性の開発」「資本主義とビジネスの未来」等を主な研究領域とする。コーンフェリーのシニアパートナーを務めながら、研究、経営大学院での教職、著作、各種ワークショップの実施、パブリックスピーキングなどに携わる。学部と大学院で哲学・美術史を学んだという特殊な経歴を活かし「人文科学と経営科学の交差点」をテーマに活動を行っている。
慶應義塾大学文学部哲学科を卒業し、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程を修了した。電通、ブーズ・アレン・ハミルトン、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニーに勤務した。2011年以降より2019年1月現在まで、コーンフェリーのシニアパートナー。また2018年5月以降2019年1月現在まで、一橋大学経営管理研究科非常勤講師を務めている。多摩美術大学クリエイティブリーダーシッププログラム講師。
慶應義塾高等学校在学時は、ほとんど授業に出席せず、美術館や映画館、図書館で時間を過ごしていたために出席日数が常に足りず、両親がしばしば呼び出されていたことを、インタビューで語っている。

高校では学校行かないで美術館をめぐり、哲学、美術で大学を出て、電通、ボスコン。経歴だけでも強烈です。まさしく文化をまとう人、ですね。「経営におけるアートとサイエンスのリバランス」というテーマがそのまま今回の対談の核になっています。

続いて水野氏。

水野学さんに聞く、「ブランドをカタチにする」ってどういうこと?___VISUAL_SHIFT|ビジュアルシフト

水野 学(みずの まなぶ、1972年 - )は、日本のクリエイティブディレクター、 クリエイティブコンサルタント、good design company 代表 。東京都生まれ。茅ヶ崎育ち。1996年 多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、(株)パブロプロダクションに入社。その後(株)ドラフトを経て、1998年11月にgood design companyを設立。ブランドや商品の企画、グラフィックデザイン、パッケージデザイン、インテリアデザイン、宣伝広告、長期的なブランド戦略までをトータルに手がける。
2012-2016年度慶應義塾大学環境情報(SFC)で特別招聘准教授
ラーメンズとは美大時代からの友人であり、アートワークを多数手がけている。
手掛けた主な仕事:
相鉄グループ「相鉄デザインブランドアッププロジェクト」
・熊本県キャラクター「くまモン」企画発案、キャラクターデザイン
・「中川政七商店」事業提案、コンサルティング及びコーポレートブランディングデザイン
・「Oisix」ブランディングデザイン
・久原本家「茅乃舎」コンサルティング及びブランディングデザイン
・NTT docomo クレジットサービス「iD」「DCMX」ネーミング及び初期ブランディングデザイン

以前このnoteで取り上げた「中川政七商店」躍進の裏には水野氏がいたんですね。デザイン提案ではなく、事業提案と書いてあるので、デザインにとどまらないかなり踏み込んだパートナーシップを組んでいると想像します。

今回はこのセンスと教養のあるお二人の会話から文化をまとう引き出しの作り方を探ってみたいと思います。

この本で言いたいこと

引き出しの話の前に、この本でお二人が話していることをさくっと要約しておきたいと思います。

結論的には、役に立つ、から意味がある存在に転換できないと企業もブランドも人もこれからの時代しんどいよ。なぜなら、ほとんどの欲求は解決される世の中になってしまっているから。

ユニクロの服着て、ダイソーで雑貨揃えたら、まー生活はできるわけです。機能(=役に立つ)だけでいったら、ユニクロでいい、ってなりますよね。別のブランドが服を買ってもらおうと思ったら意味が必要となってくる。

その成功例として以前、世界で躍進中の日本のアパレルFR2を紹介しました。

意味がある存在になるためには、客観的データを元に、じゃなく、大義や自分の”好き”を軸に世界観を精緻に組み上げて、それをきちんとセンスのよいデザインに落として一貫したブランド管理をしないとだよ、ということを言ってます。

事例としてはアップル、スタバ、無印、バルミューダなど。

ただ、これ、日本の教育システム自体が、テストの優劣で優秀かどうかを判断していて、そのテストは出題者の意図を理解して高速で回答を出す、というトレーニングなので、自分らしい世界観をセンスのよいデザインで、なんてことはほぼほぼ国民全員がトレーニングできてないわけです。

僕がこの本を読んで思ったのは、意味がある存在、に個人としてなる、という努力はそれは個人が勝手にやればいいけど、企業としてそこをきちんとマネジメントするっていうのは、トップがそこにフルコミットしないとできないし、やる場合は、例えば僕はそれはできないので、水野氏みたいなクリエイティブ・ディレクターや優秀なデザイナーさんを雇う、ということが一番現実的な回答だと思いました。

文化をまとう引き出しの作り方

文化・教養がある人っていいな、と思います。そういう豊かな人になりたいとも思いますけど、どうしても自分の仕事を中心に情報収集をしてしまうので文化・教養がどこか遠くに感じられます。

今日ご紹介しているお二人は、そもそも哲学・美術など文化を学問として大学で学び、そこから仕事を通じて、でいろいろな国にいったり、さまざまなクリエイターとの交流を通して僕のような普通のサラリーマン人生とはそもそも違うレールの上を走っていて、同じような蓄積を目指しても劣等感しか感じなさそうなので、文化人になるのではなく、文化的なことをちょいちょい会話にはさんでくるヤツ、というところをいったんゴールにしてみようと思います。(志、低め

ということで、文化人をハックしてみたいと思うのですが、この本、対談本で、いったら、一流のおじさんが雑談している本、なのですが、その話の持っていき方を観察しているとひとつのパターンが見えてきます。

それは、「言いたいこと」→「文化的な事例」です。

言いたいことがあって、それを補完するために、事例を出すことは日常生活によくありますよね。

「あの人って顔濃いよね、阿部寛みたい」ってやつです。濃いっていうことが言いたくて、それを具体的にするために阿部寛さまを引用するわけです。

自分を演出する上で、突貫工事で覚えた文化的小話を唐突に話始める人とか、それは何いきっとんねん、って思われて終わりそうです。やっぱり文脈が大事で、話の流れに沿って自分の言いたいことがあり、それを補完するために気の利いた事例を放り込むっていうことが基本です。

突貫で文化をまとう方法をハックするとすると、この「言いたいこと」→「文化的な事例」という構造を逆手にとって、自分が言いたいことというのが普段の生活で出てきたら、それに関係しそうな文化的事例をググるというダサい方法が近道になりそうです。

ここからどの辺の角度から行くと文化的な薫りにたどり着けるか、お二人の会話からパターン化を試みます。

歴史上の偉人を絡める

誰でも知っている偉人のエピソードというのは訴求力があります。自分の言葉に説得力がなくても、偉人の事例を添えることで、その信ぴょう性をぐっと高めることができます。

言いたいこと:きれいに、そつなく、では印象に残らない
事例:利休
表現:「利休の美意識って、単にすべてを削ぎ落としたストイックさとは違いますもんね。利休の長次郎の樂茶碗は、釉薬のあとも残っているし、いびつに歪んでいる。人の手の痕跡、素材自体の美しさ、自然の偶発性みたいなものをあえて残している。これって、森羅万象に神を感じるという日本古来の考え方が土台になった、日本独自の美意識なんでしょうね、不足の美、利休はそれを、佗び茶、によって完成させた」

なんかきれいすぎてつまんない、という話から、その逆の事例として、利休に飛べるか、です。

もうひとつ例をあげます。

言いたいこと:客観的データを説明しても、人には響かない
事例:キング牧師の演説
表現:「すごく面白いのが、あれはもともと準備していた演説の原稿じゃないんですよ。(中略)ちゃんとしたデータを用意していたらしいんです。(中略)キング牧師は鋭い人なので、たぶん最初に用意していたスピーチをしながら、観衆に刺さってないな、と感じたのではないでしょうか。(中略)それで彼は話しはじめてずいぶんたっていたのに、演説を途中でバサッとやめた。で、しばらく沈黙してから、いきなり、I have a dream、と始めたんです」

言いたいことはより伝わるし、面白い話が聞けた、となるし、結果文化もまとってるし強力です。

ハイブランドの話を始める

特にヨーロッパ系のハイブランドの動向を絡めたりできると、あ、なんか色々奥深いってなる気がします。欧州っていうのはそれ自体がブランドです。

言いたいこと:物語を作ることが大事
事例:エルメス
表現:「たとえばエルメスだったら、馬具づくりから始まってバックを作りはじめて、という、実際にやってきた情報を蓄積してストーリーにしている。それはさっき山口さんがおっしゃったAppleと同じやり方ですけど、それだけじゃない。ジェーン・バーキンに「バーキン」というバックをプレゼントしたのは、エルメスが「エルメス物語」を自らつくったことだと思うし、そこにレバレッジをかけています。」

もうひとつ見てみます。

言いたいこと:ヨーロッパと日本ではモノづくりの背景・考え方が違う
事例:フェラーリ
表現:「ヨーロッパは連綿と続く貴族文化にいまだにつながっています。たとえば、フェラーリのデザインをやっているピニンファリーナなどのデザイン会社を総称して「カロッツェリア」と呼びますが、「カロッツェリア」はイタリア語で、「高級馬車・馬車工房」って意味ですからね。」

これは次に出てくる、語源とハイブランドの掛け算で、かなりレベル高いです。

語源にさかのぼってしまう

言いたいこと:客観より主観が大事
事例:それぞれの語源
表現:「ちなみに、「客観」と「主観」という言葉がありますね。ビジネスの現場で「客観」と「主観」を比較すれば、明らかに「客観」がポジティブなのに対して、「主観」はネガティブなわけです。(中略)しかし、元々の漢字をあらためて調べてみるとわかりますが、「客」というのは「重要でない」という意味なんですね。だって「主」じゃないわけですから。(中略)現代のビジネスの現場で過剰に「客観」が重んじられるのは実は非常に由々しきことなんですよ。」

語源という歴史のパワーを借りると反論しづらくなりますね。笑

動物の生態などを引っ張り出してくる

動物の話とかだと予備知識がいらないので、聞く方もわかりやすいし、でも、そっちのほうも知ってるんだという引き出しの多さを感じます。こちらはペンギンの事例。

言いたいこと:最初に主張する人より、それをサポートする2人目が大事
事例:ペンギン
表現:「でも、一羽で真っ先に飛び込んで、「あいつ、オットセイに食われちゃったよ」となると、「ファーストペンギン」ではなく「アローンペンギン」にしかならない。「アローンペンギン」を「ファーストペンギン」にするのは、「セカンドペンギン」なんです。」

短いセンテンスでものすごいペンギンって言ってますね。

ニューヨーク、パリのトレンドを語り始める

ニューヨークとかパリって言葉を聞いただけでそこに関わっている人ってなんかプラスのポイントが入ります。綾部、だけだと弱いですが、綾部×NYになるとちょっと意味合いが変わってきます。

言いたいこと:ホテルが社交場としての役割に回帰してきている
事例:ニューヨークのホテル
表現:「先日、視察でニューヨークのホテルを回ってきたんです。3日間で40軒以上見るという強行軍でヘロヘロになったんですけど(笑)ホテル業界はいま、ますます面白いですね。単なる宿泊施設ではなく、社交場としての役割への回帰が加速しています。」

ニューヨーク、パリとか強力なのですが、実際に行ってきて体感・体験というのが強いので、たんに雑誌とかで読んだだと、かぶれになる可能性があるので注意が必要です。

人の本質の話でだいぶ時代をさかのぼって語る

人間って時代が変わっても基本は変わりません。3大欲とかマズローとか基本原則は変わらないし、そういう話はよく出てくるので、そこに放り込む話として、えらい古い時代の人間の話をもってくると、人間ってかわんないねー、という変な納得感を与えられます。

言いたいこと:人の手にフィットするものってあんまり変わらない
事例:石斧
表現:「黒曜石なんかを削って作る石器時代の石斧ってあるじゃないですか。あれの大きさと日本の印籠、iPhone 3Gまでの大きさはほとんど同じですね」

西洋人が日本に感動、のエピソードをくり出す

日本人は自己肯定感が弱いためか、外国から絶賛されている、という話が好きなように思います。クールジャパンとか、自分でクールという人でクールな人がいるのか、というのもありますが、クールと思われたエピソードは文化の薫りと同時に聞く人の愛国心をも刺激するので効果的です。#何の講座?

言いたいこと:日本はまだまだ可能性あるよ
事例:桂離宮
表現:「西洋建築の未来がなかなか見通せなかった20世紀の前半、ドイツの建築家のブルーノ・タウトは日本にやってきて桂離宮を案内されて感動のあまり泣いてしまう。まるでファンワース邸のような、ミニマルな装飾と空中に浮かんだグリッドで整理されたシンプルな面の構成にタウトはポストモダンを考えるためのパースペクティブを得るんですね。戦争に負けた僕たちは西洋の歴史を後追いすることをやっているわけですが、当の西洋側は行き着いた先の未来を描けない中で日本の過去にパースペクティブを見出しているという、変な循環構造になっているわけです」

ということで、きりがないのでこの辺でやめておきます。

文化の薫りがすることを僕は好ましいと思いますが、ただの知識のひけらかしだと感じた場合、しゃらくせー、っていうのも同時に感じたりするので、TPOと何が伝えたくてその話をしているのか、のそもそもが大事ですね。ミニマルとかパースペクティブとかそういう横文字も伝える相手によって最適化しないとです。

気づき・学び

今日は雑な言い方をすると、意識スーパー高い系おじさんの雑談をサマるということにチャレンジしたのですが、思ったより手こずりました。意識高すぎて自分ごとするのがかなり難しいところがありますが、僕なりの下世話な学びとしては以下となります。

・意味がある人になるためにこのnoteはがんばって続けてみようかな

・意味のある会社になるためには外部の助けが必要。優秀なクリエイティブ・ディレクターは今後確保が難しくなってきそう。会社が儲かったら、水野氏のような人にお願いするのがいいはず。

・文化をまとう人を演出するためのハックは、言いたいこと→文化的な事例の流れを作ること

・事例を掘り出す7つの方向性

・歴史上の偉人を絡める
・ハイブランドの話を始める
・語源にさかのぼってしまう
・動物の生態などを引っ張り出してくる
・ニューヨーク、パリのトレンドを語り始める
・人の本質の話でだいぶ時代をさかのぼって語る
・西洋人が日本に感動、のエピソードをくり出す

というサマリとなりました。地理的に横に行くのと、時代的に過去に行くのと、その2軸で縦横無尽に事例が繰り出せると文化人ハックの完成です。

でも、昨日までタレントのゴシップとかの話をしていた人が、ある日突然桂離宮とかハリー・ウィンストンの話をし始めるのも変なので、定期的に子供とか友達とかそういう身近な人に調べたことをアウトプットする場を設定する、とかでもいいかもしんないですね。

あくまでも今日の話は本質でなく、本来的にはたくさんの芸術やカルチャーに触れて楽しみながら豊かな感性を育む、が王道なので、そこんところヨロです。

ということで、本日のお話は以上です。

日報

備忘録兼ねて。

・Pとの定例向け資料作成(AM)
・Pと定例(11pm)
・定例議事メモ→UK共有
・メール系セッション(3PM)
・プロマネとsyncup (5PM)
・前職のお友達の会食に飛び入り@海辺のいい感じのとこ
 →プレゼントまでもらいまして、感謝です。

明日はエンタメの日曜日、USにいた時唯一楽しみにしていたVOICEという番組の話を少ししようと思います。

マーケティングの月曜日
経営戦略・事業開発の火曜日
EC・ロジスティクスの水曜日
DXの木曜日
グローバル・未来の金曜日
ライフハック・教養の土曜日
エンタメの日曜日

それでは、今日もよい一日を。

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