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槍と穂高がすぐそこに!圧巻の絶景〜常念岳〜

7月後半、アルプスの夏が来た!!
昨年、燕岳と焼岳の登頂を果たし、次に挑戦した山は北アルプスの常念岳。
北アルプスの中で槍・穂高連峰と並行して連なる常念山脈の中央に位置し、ピラミッド型の美しい山容がひときわ目を引く山だ。
常念岳の標高は2,857m。
かなりキツイと聞いてはいたがてっぺんでは憧れの槍ヶ岳と穂高が間近にみられると、いてもたってもいられず挑戦を決めた。


ー ルート

燕岳から大天井岳を経由する縦走や、蝶ヶ岳と合わせて周回したりと稜線歩きを愉しめるいろいろなコースがあるが、常念岳のみにのぼる場合は一ノ沢登山口か三股登山口からのいずれかになると思う。
三股からのルートは三角点のある前常念岳を経由する。
累積標高はいずれも1600mを超えるが、信州山のグレーディングをみると一ノ沢からは体力度4、三股からは体力度5である。いずれも難易度はB。
難易度は高くないが前常念岳のあたりが少し険しい岩場のようで、それが体力度が上がっている要因かなと思った。
日帰りする方も多いが私には日帰りできるほど体力に自信はないので、一ノ沢登山口からのぼり常念小屋での宿泊を選択した。

常念岳一ノ沢登山ルート

ー アクセス

一ノ沢登山口も三股登山口も公共交通機関の場合、バスはないので穂高駅からタクシーになる。
駐車場は、
◉一ノ沢登山口:第1駐車場30台、第2駐車場30台
◉三股登山口:第1駐車場80台(トイレあり)、第2駐車場100台
*一ノ沢登山口はトイレが駐車場から徒歩20分ほどの登山口にあるが駐車場にはない。また、第2駐車場の入り口に標識などはなかったように思うが、第1駐車場から少し下がったところに広めのスペースがあるのでわかると思う。
安曇野観光協会公式サイトに詳しく書かれてあるので参考にされたい。

三股登山口からは常念岳のみならず、蝶ヶ岳にのぼる人、常念岳と周回する人、さらに縦走する人など利用客が一ノ沢駐車場よりも多いことが予想されるので駐車場も広いのかな。
いずれにせよ7〜8月のアルプスはどこも人気である。
駐車場は週末のみならず、天気のいい平日も早朝には埋まってしまう可能性が高い。
無理な路上駐車は他の車の迷惑にもなるので、できるだけ避けたい。しかし、できれば近いところに駐めたい。
結論、車中泊を私は選択した。

ー 初めてのひとり車中泊

前回の編笠山で友人と車中泊をし、誰もいない駐車場や長い山道だとやはりひとりでは怖そうだなと思ったが、今回の一ノ沢駐車場はオンシーズンなので誰もいないということはないであろうと、初めてのソロ車中泊にチャレンジした。
せめて真夜中到着ではなく、夜早めの到着にすれば心持ち安心かなと17時ごろ家を出発した。
しかし、17時とは車の多い時間帯。都内で無駄に渋滞に巻き込まれる。
19時出発くらいがちょうどいいのかも。

お風呂は自宅で済ませ、途中のパーキングで軽く食事をし最後のパーキングエリアとなる梓川にて忘れずにトイレを済ませる。
駐車場にはトイレがないため、これ以降朝まで行けないかもしれない。
安曇野ICについたのは21時過ぎ。
21時だからまだ街明かりもありそんなに暗い感じはない。
安曇野ICから駐車場までは県道を30〜40分ほど走る。
いつもは朝到着するので、山がみえてテンションが上がるのだけど夜到着は山がみえないのでそこはちょっと残念。

残り5kmほどで車道は1車線になったが、道は広めでホテルがあったりゴルフ場があったりと灯りもあるため怖くはなかった。
残り3.5kmほどから少し道が狭くなり、山道は真っ暗になったけれど距離が短いので怖い時間も短く済んだ。
第2駐車場らしきところには数台車が駐まっていた。
第1駐車場も結構駐まっていて、22時前で10台くらいしか空きはなかった。
泊まりの人も多いからかなあ。

車中泊の準備。
前回クローズドセルを1枚引いて寝たらちょっとからだが痛かったので今回は2枚引いてみたらなかなかいい感じ。
気温は20度くらいあったので暑くも寒くもない、ちょうどいい感じだった。
先人がいらしたおかげで駐めるところもわかりやすかったし、何より他に人がいる安心感。
フラットで駐めやすいし、車中泊は快適だった。
不便があるとしたら、トイレに行くには暗い道を20分歩かねばならないことと、電波が入らないこと。
夜中にトイレに行きたくなったら悲劇だな。

寝ていると少し暑くなったので扇風機があったらいいなと思ったが、明け方近くは少し冷え込みブランケットを2枚かけて寝た。
夜中にライトの灯りで何台か車が入ってきたのがわかったが、イヤホンをして寝たので音は聞こえなかった。
4時前、自然と目が覚めた。
ちらっと車内からみたかぎりでは満車のようだった。

ー のぼり開始

5時、車からおりると駐車場は満車だった。
前の日は天気が良く、この日も天気は晴れなので前日もこの日もハイカーは多いであろう。おそらく夜中早い段階で満車になっていたのではないかな。

登山道は川が多いようなので、ゲイターをつけて出発。
登山口まではアスファルトの舗装された道を進む。
熊の出没情報があるようだが、私は熊ではなく猿に遭遇した。

一ノ沢の第1駐車場
右のアスファルトを進む
熊鈴必須!
お猿さんも遠目からじゃないとちょっと怖い

朝の空は少し霧がかっていたけれど晴れる予感しかない。
ワクワク期待に胸をふくらませ、20分ほどで登山口に到着。
登山口のトイレは水栓できれいだった。この先常念小屋までトイレはないので必ずここで済ませておきたい。

一ノ沢登山口
電車の場合はタクシーを利用
ここは電波が入らない可能性があるので、帰りのタクシーの予約は小屋でした方が良い
登山ポストもある
常念岳へ向けて出発!

のぼり始めてすぐ紫陽花がお出迎え。

紫陽花が結構咲いていた

最初は沢に沿って少し大きめの石の道やトラバースの狭い道をのぼるが傾斜はキツくない。石も足を大きく上げるような石はあまりなくのぼりやすい。

石の道や
トラバースの狭い道

登山口から20分ほどで山の神と出逢う。

山の神

さらに10分ほど進むと古池という小さな池があった。
最初濁っているのかと思いきや、素晴らしい透明度の池だった。

古池

その後も急なのぼりはなくサクサクのぼれる。
時折川をあがったり、川の横を通ったり、あまり花も苔もない樹林帯を黙々とのぼっていく。
朝なので虫があまりいなくて快適だった。

川沿いをのぼっていくので川音がずっと聞こえる。
とても涼しく心地よいが熊鈴の音も同時にかき消され、果たして効力があるのか微妙なところ。
駐車場が満車のわりに人にはあまり会わなかった。

川に沿ってのぼっていく

登山口から1時間10分で第一ベンチの大滝に到着。
ここまで休める箇所がないので、ここで小休憩を取った。
大滝とあるが、滝らしきものは見当たらなかった。

大滝、第一ベンチ
日が差してきた

大滝から20分ほどで開けた場所に出る。奥にあるハシゴをのぼったあたりから徐々に急なのぼりがはじまった。
日も差すようになりだんだん暑くなると同時に、虫も増え始めた。

開けたところの先にあるハシゴをのぼる
ハシゴの先から徐々に急なのぼりが増える

登山口から2時間が過ぎ、ようやく常念岳がみえてきた。

めざす山がお目見え
幾度となく川を渡る

紫外線と虫対策でかなり怪しい風貌だけれど、挨拶だけはにっこり笑声。
くだってくる人が多かった。

怪しさ満点で紫外線対策

滝と同じく、勢いのある水を見ると撮りたくなる

川撮影で遊ぶ
癒される光景

登山口から2時間半を過ぎたあたりからはかなりヘロヘロになり歩みも遅いが、高山植物も増えてきてあがってきたと自分を励ましながら進む。

オニユリ(Google調べ)
シモツケソウかな
お花がたくさん咲いていた
険しいのぼり
多分オトギリソウ
フウロソウかなあ

相変わらず花の名前も山の名前もみてすぐにわからないけれど、こうして調べていくうちに徐々に覚えられるのだろう。

登山口から3時間!ついに胸突八丁に到着!
ここからきついと聞いていたが、ここまでも十分きつかった。
胸突八丁からは階段が多いと聞く。小屋まで1.4km、400m。

胸突八丁
階段がはじまる

噂通り、胸突八丁からはかなりきつくて歩みはまさに牛歩。
なかなか前に進まない。
シャッターを押す元気はどんどんなくなり、ただひたすらのぼるに集中していたが、それでも花をみつけては記録のためと撮影した。

シロバナグンナイフウロ(Google調べ)
日差しがきつく体力が消耗される

胸突八丁から20分ほどで最終水場に到着。
ここですれ違った方に「この1kmが長いんだよね〜」といわれ、心が折れる。

最終水場
常念小屋まであと1km
冷えた水が流れていた

おっしゃる通り最終水場を超えてからは休むところもなく、日向は暑いしちょっと座るとブヨがくるしでなかなか落ち着いて休めない。
すると30分ほどいったところに第2ベンチがあった。
第1ベンチの大滝から実に3時間!
燕岳とは違い休憩場所がほとんどないのが常念岳一ノ沢のルートなのだ。

第2ベンチ

そして!第2ベンチから20分、登山口から4時間半!ついについに、、、

常念岳が目の前に!

常念乗越に到着!!
常念乗越までのぼってやっと待ちに待った槍ヶ岳と穂高の山々がお目見えだ!

常念乗越

常念乗越までは本当にきつかった。
いつもヘロヘロになるけれど、これまでで一番きつかったように思う。
まず山小屋にチェックインし荷物をデポ。
常念乗越に着いたとき出逢った女性と同じ部屋で一緒に部屋に向かうと、すでにもうひとりの女性が部屋で身支度をされていた。
二人ともソロですぐに打ち解けた。

ー 常念岳てっぺんへ

おなかはペコペコだったが穂高に雲が迫ってきていたので、まずはてっぺんをめざすことにした。
常念乗越はものすごい強風で、とにかくサクッとのぼるつもりで荷物は水とカメラと貴重品だけにして部屋で出逢ったお二人と一緒にのぼり始めた。
しかし、サクッとはいかない。
常念乗越から常念岳のてっぺんは標高差が400mほどあり1時間くらいかかる。荷物は軽くなったとはいえ、すでに登山口から4時間半、駐車場からは5時間近くのぼってきている。
てっぺんはすぐそこなのになかなか辿りつかなかった。
中腹すぎると風はやんだ。

石の急坂をのぼり続ける
ようやくてっぺんかと思う場所は
三股との分岐
てっぺんはさらにその先にある

てっぺんかと思しき場所は三股からの合流地点でてっぺんではない。
「みんなそこをてっぺんと思い、違うと知ってショックを受ける」という前情報を得ていたので私はショックを受けなかったが、すぐそこのてっぺんが果てしなく遠くに感じた。

そして常念乗越から1時間15分、ついについにそのときがやってきた!!

この先には!
常念岳のてっぺん!!

駐車場を出発し、休憩を含み約7時間!
本当によくがんばった。
記念に撮ってもらった写真の私は笑っているけれど明らかに疲労困憊の顔。
でも、最高の気分だったのは疲れも吹っ飛ぶ圧巻の絶景が待っていたから。

常念岳てっぺんで記念写真
槍ヶ岳が雲の合間から顔を出した
方角的には雲の平、鷲羽岳、薬師岳がみえるようだがどれがどれだかわからなかった
左に大天井岳、右奥に燕岳、中央奥に剱岳

てっぺんついたときは槍と穂高に雲がかかっていたけれど、次第に槍のとんがりが雲の合間から顔を出した。
展望案内板をみながら、「あれが大天井岳、あっちが燕岳だよね?」「するとあれが剱岳?」と見比べながら探っていくのが愉しかった。
雲の動きでみえたり隠れたりする山を眺めているとまったく飽きない。
ず〜っといたかった。
ず〜っと眺めていられた。
40分くらいいただろうか。
空腹が限界を迎える。

てっぺんは狭いが少し下がったところにスペースがあり、そこならちょっと腰掛けてご飯を食べれたな。
名残惜しさはきっとなくならないので、ゆっくり景色を眺めながらおりることにした。

常念小屋に向かう途中、穂高の雲が抜け稜線がくっきり見えた。

槍ヶ岳と穂高連峰
常念小屋を見おろす

穂高がみえたとき一瞬迷ったが、とてものぼり返す元気はなかった。
そしてくだりの途中からまた爆風。帽子をおさえながら下山する。

ー 小屋で過ごす

そうして小屋に戻ったのが14時くらい。腹ペコだったけれど夕食が17時なので、ここは我慢し行動食でしのいだ。

常念小屋と槍・穂高

お部屋に戻るともうひとり女性が到着していた。その方もソロ。
4人で山の会話で盛り上がっていたら、さらに2人到着。
なんとその、お二人もソロだった。
8人部屋にソロの女性が6人!
ソロでのぼる女性がこんなにも集まるなんてなかなかない。
それも静岡、兵庫、長野など、全国あらゆるところから集まっていた。
配慮して配置してくださった小屋の方に感謝しかない。

すっかりみんな打ち解け、夕食までの間愉しくおしゃべりタイムを過ごした。

そして待ちに待った夕食タイム!
席を同じにしてもらったにも関わらず、みんな無言でむしゃむしゃ食べる。

メインはハンバーグ!付け合わせにいろいろなお野菜が添えてあった。
このほかに白米とお味噌汁。

とても美味しくて、一粒残らず完食した。
山で食べるといつも以上に食のありがたみを感じる。

食後は少しくつろいでから夕日をみに外へ出た。
雲が立ち込め、夕日を堪能することはできなかったけれど、みんなでちょっと眺めて余韻に浸った。
寒かったので私はダウンを取りに戻り、みなさんが部屋に戻ってからも1時間くらいぼーっと刻々と変わる空を眺めていた。

天使の梯子?逆さま??
雲の輪郭を彩る光
次第に夜へと向かっていく
空の織りなすモノクロームの世界
静かに寄せてくる雲海

山に泊まるとは、ただ単にからだが限界だからだけではない。
こうしてゆっくりと時間の流れを自然の中で感じられるのは、やはり泊まりの醍醐味。
山小屋泊は昨年秋の赤岳以来だったので、本当に幸せで贅沢な時間だなあと改めて思った。

19時半、談話室でまたみなさんとおしゃべりタイム。
カップワインを飲む。なかなか美味しかった。
20時過ぎて部屋に戻り準備をして消灯時間の20時半にはみんな寝床についた。
部屋は決して広くはないけれど、頭のあたりに仕切りがあり、みなさん静かで寝心地は決して悪くない。
布団にはシュラフがあり、枕もあるがちょっと高かったかな。
インナーシーツをして、最初はちょっと暑かったから足元はシュラフからはみ出していたけど、夜中は少し寒くなりシュラフの中で眠った。

ー 二日目

朝4時起床。
まさかの雷雨。大雨。
天気予報だと二日目の9時くらいまでは大丈夫そうだったのに、昨晩からすでに雷雨になっていた。

ひとまず5時に朝ごはんを食べる。

朝食のメインは鮭。卵とウインナーとがんもどきとインゲンのおひたしかな、あとお漬物。
そして白米とお味噌汁。

またしても黙々と、朝からもりもり食べた。

雨は止む気配がない。
「どうしようか」途方にくれるソロ女子チーム。
どうやら雨は11時ごろまで止みそうにないという情報を入手し、雷がおさまった段階で下山開始を決意した。
6人中3人は縦走される予定で、残りの私含めた3人がピストン下山。

6時、雨はまあまあ降っていたが雷はおさまったので、完全防備で身を包みすっかりチームと化したソロ女子3人一緒に出発した。他の二人も縦走に向けて出発。
名越惜しいお別れ。
きっとまたどこかの山で出逢えると信じ、互いの健闘を祈りつつ小屋を後にした。

小屋をでたら暴風雨だったけれど、登山道に入ると風は止んだ。
雨も最初は結構降っていたけれど、1時間くらいで小雨になった。
帰りはカメラもレインウエアの下に入れ、ひたすらおりるに徹した。
ベンチも濡れているから座って休憩とはいかない。

「今日のぼる人はいないだろうね」と話している側からのぼってくる方に遭遇。そう、山のための休日はいつでも取れるわけではない。
雨ののぼりがどれだけ大変か。。。てっぺんで晴れることを祈る!!

ちょこちょこ水分休憩をはさみつつ、まるで昔からの友達のように愉しく会話をしながらおりてきた。
やはり同じ趣味があるってすごい。
そして3時間40分、駐車場までおりてきた!
くだりは早かった〜。
のぼりはあんなにキツかったのに帰りはスルスルおりれて、あっという間だったねと話す。
すっかり同志のような仲間。
連絡先を交換し「また山で会いましょう」と約束をしてそれぞれの家路へと向かった。

ー 常念岳をのぼり終えて

噂通りのきつい山行だった。
まだまだ自分の体力が足りない(何に対してだ?)のを感じた。
でもだからこそやり切った感、達成感は半端ない。
常念乗越までは穂高はまったくみえないので、常念乗越に着いたときの感動はすごかった。
燕岳でみたときよりよりずっと大きい姿の槍ヶ岳をみれた瞬間、大満足だった。
てっぺんについてからはもっとたくさんの山を見渡せ、アルプスの壮大さをからだ全部で感じることができた。

何より、自分がそこに立っていることが嬉しかった。
気がつけば筋肉痛はあれど膝痛はない。
50代半ば、どこまで進化できるのか!?
いつ、のぼれなくなるかわからないから、のぼれなくなるその日まで私はずっと挑戦し続けたい。
山が待っていてくれている限り。

夏山ははじまったばかり。
あと何座のぼれるかな〜。


<二日間>
距離:14.8km
累積標高(のぼり/くだり):1681m/1673m
タイム:初日8時間40分(休憩1時間30分含む)
    二日目3時間40分(休憩5分含む)



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