お薬のお話。
こんばんは。今年ももう少しで終わりになりますが、一年振り返ってみたら様々な出来事がありました。そのなかでも新型コロナウイルスが五類に移行して感染拡大前の生活が徐々に戻ってきたというのは今年の大きなニュースの一つではないでしょうか。この新型コロナウイルスで表面化したのが日本のワクチンの創薬など国内の新薬開発の必要性です。そんな日本の新薬開発についてすこしだけお勉強。
日本におけるワクチン
日本における国産ワクチンの創薬は1980年代までは非常に技術力は高くその技術を海外へ提供をしていましたが、予防接種後の死亡や後遺症に関する訴訟などにより予防接種法の改正や、欧米などで開発したワクチンが日本国内で承認されるまで10年以上かかる「ワクチン・ギャップ」と呼ばれる現象が常態化しワクチン敗戦を招く事態となりました。予防接種法は昭和23年戦後の劣悪な環境から感染症が蔓延したために、伝染の恐れがある疾病発生や蔓延を予防するために施行されました。それにより感染症患者や死亡者は減少したものの、予防接種による副反応による健康被害の知見がなかったため、摂取による健康彼我の法律的救済は行われていいませんでした。しかし、1960年代以降になるとワクチンによる健康被害が社会問題化し、東京高裁で国の行政責任を認め損害賠償の支払いを命じるなどといったことから、ワクチンなどによる健康被害に対し厚生労働大臣が認めた場合は救済措置が取られ、予防接種の義務規定が努力義務に代わるなどの法改正が行われた。
新薬開発について
今から約20年前の2000年時における世界の医薬遺品市場規模は3577億ドルと推定され、そのうち日本が占める割合は16.2%と人口の割には大きな市場となっていましたが、2020年時における世界の医療市場規模は3倍以上の1兆3054億ドルになったにもかかわらず、日本市場の成長は見られず割合も6.8%まで減少してしまいました。日本の新薬開発は世界3位に位置しているが、ワクチン開発に関してはⅿRMAワクチンやウイルスベクターワクチンなどの新しいワクチン技術においては海外が先行しているため、新型コロナウイルス感染症のワクチンに対しては海外のワクチンを特例認証することで対応をすることとなった。新薬の開発には、基礎研究、非臨床試験、臨床試験などの過程を有するため長い年月が必要となり、開発費用も多額となってくる。日本における製薬企業1社あたりの研究開発費の推移をみると2000年には488億円だったのが2020年には1649億円まで増加している。この間のアメリカの企業と比べてみると2000年には23億1000万ドル(3280億円)から2020年には90億1600万ドル(1兆1153億円)と拡大し日本の研究開発費と比較すると差が拡大していることがわかる。
新薬開発へ向けて「創薬エコシステム」
今後再び新型コロナウイルス感染症のようなパンデミックが起こった場合に備えて、ワクチンや治療薬の開発や生産が必要とされているが、新薬の開発には長いきかんを有することから非常時になってからの取り組みではなく、平時からの対策のために「創薬エコシステム」の構築が課題となっている。創薬エコシステムとは、個々の企業による取り組みではなく、産官学の役割分担、連携の推進、バイオベンチャーの育成など基礎研究の強化といった創薬に係る制度体制のことを指します。また、特許期間中だけでも薬価が維持され企業努力が反映される仕組みや、頻繁に薬価制度を変更しないなどの開発企業を守る薬価制度も必要となってきます。また、経済安全保障上の観点からも国内ワクチン・治療薬の開発生産体制の重要性は挙げられ、これらが遅れることの原因としてワクチンや治療薬は患者が少ない平時に需要が減少し収益や投資回収が見込みづらいことも影響として挙げられる。
おわりに
新型コロナウイルス感染症拡大から、ワクチン接種を含む感染症に対する危機管理体制について考える機会となり治療薬やワクチンの安全性、有効性を適正に評価しより早期の実用化を可能とする緊急承認制度が法整備される一方で、日本における新薬開発・創薬に向けた民間への支援等の課題が残されている。ワクチンや治療薬の国産化の重要性を理解しながら、製薬企業が新薬開発を行いやすい環境を整備していくことがこれからは大事になってくる。
冬場は乾燥などから風邪などが流行ります。現在インフルエンザも流行っているようなのでワクチンも重要ですが、うがい手洗いをしっかりして体調管理に気を付けましょう。