鉄道の廃止に関するメモ

 日本の鉄道では、鉄道施設を保有した上で運行を行う上下一体の鉄道事業者が大部分を占めているために、鉄道線路を、当該鉄道事業者以外の事業者が利用でき、かつその営業行為が認められるオープンアクセスを実施するEU諸国等とは異なり、新規参入コストやリスクが大きくなっている。そのために、旅客鉄道事業への競争的参入の事例はほとんどなく、新規参入の事例は、都市鉄道の新線整備や整備新幹線開業に伴う並行在来線等が中心となっている。一方、退出規制の緩和は不採算路線の市場退出を促したとされ、平成12年度以降の鉄軌道廃止路線は45路線・1,157.9㎞となっている。
2011年の新潟・福島豪雨で被災し、10月1日に11年ぶりに全線再開したJR只見線。不通区間の会津川口―只見間は、鉄路や駅舎は福島県が保有し、JR東日本が列車を走らせる「上下分離方式」で復活した。列車の運行を担う主体と、鉄道インフラの維持管理を担う主体を別の者とする仕組みのことを「鉄道の上下分離」といい、上下分離は、鉄道事業を地上インフラの建設や保有、維持管理に要する重荷から解き放ち、身軽にするところに最大の目的がある。日本の鉄道は、伝統的に運行と施設保有を一体化した「上下一体」型で経営されてきたが、1987年の国鉄民営化を機にJR貨物が上下分離方式の下で発足したことが始まりとなっている。大手民鉄においても、インフラ整備の主体と鉄道運行の主体を分離し、線路建設を行う第三セクターに対しては公的補助制度を適用するという上下分離の枠組みがつくられ、2008年に京阪の中之島線が、2009年には阪神のなんば線が建設された。また、異なる鉄道同士を結ぶ連絡線の整備などを目的とした都市鉄道等利便増進法も2005年に成立し、相鉄とJR、相鉄と東急を結ぶ新線整備に適用された。
不採算に苦しむローカル鉄道の存続を図るために上下分離方式が導入されることがあり、こうした場合、経営難に陥った鉄道のインフラ部分(線路・電路・用地・車両など)を沿線自治体が取得して保有したり(分離型)、自治体がインフラに係る経費を全額補助したり(みなし分離型)する事例がある。
全国で赤字路線の廃止やバス路線への転換が進む中において災害などで施設が壊れた場合に鉄道の上下分離方式などを採用して赤字路線を存続させるかどうかは今後議論になってくると思われる。人を運ぶだけであればバスの便を増やせば済む問題で、これからますます人口減少が進む中において今ある赤字路線を存続させてまで大量輸送手段を確保する必要はでてくるのだろうか。個人的にはローカル鉄道は存続をさせていくべきだと思うが経営などを考えると現実的な選択も必要なのだと思う。

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