なぜ「ロードサイド」はまちを衰退させると言われるのか。『クルマを捨ててこそ地方は甦る』―オススメ「まち」の本! (その2)

 今回は京都大学藤井教授の『クルマを捨ててこそ地方は甦る』(PHP新書)という本をご紹介いたします。今月のmatinoteエッセイテーマ「ロードサイド」にも関係する1冊です。

 冒頭からこんなことを書くのもナンですが、手放しで「オススメ」したい本ではありません。「じゃあ、○○の視点だとどうなんだろう?」という、疑問も持ちながら読むのがいいかと思っています。

 本書の主張は、まさにタイトルそのままです。クルマが地方を衰退させた理由、中心商店街や公共交通活性化の必要性、「かしこい」クルマとの付き合い方と言った内容が、経済的な内容を中心に論じられています。
 出典をきちんと示しながら様々なデータが掲載されているのが分かりやすい点で、考えるための材料には困りません。
 例えば、ロードサイドの「大型ショッピングセンター(モール)」が商店街や地方の衰退に繋がるという主張は世間でもしばしば目にします。本書ではその理由を、「ショッピングモールでの買い物」と「地元の店の買い物」では経済効果、つまり地元に回るお金の量が違い、ひいては雇用が減るためと説明しています。データもきちんと示されており、主張は的を射ているように思います。一方で、次のような疑問も考えられます。

1.地元の店で買い物をする方が経済効果があるとしても、人通りの多い商店街の店はモールと同様のチェーン店ばかりになっており、経済効果はあまり変わらないのでは?
2.商店街とモールやロードサイドの店の質の違いはサラッと流されているが、利用者の満足度は大きく変わるのでは?

……といった風な具合で、考えるきっかけとなる本です。
興味があれば、お手に取ってみてはいかがでしょうか。

(今回の担当:夕霧もや)


今回オススメした本:『クルマを捨ててこそ地方は甦る』(藤井聡:著・PHP新書)


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