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ハラスメント防止研修がアリバイになってしまう話

4月はいろいろなところでハラスメント防止研修をさせていただきました。呼んでくださった劇場や団体のみなさま、ありがとうございました。

ハラスメント防止研修をした際、2回に1回くらいの頻度で聞くのが「ハラスメント防止研修をしたことを、アリバイにしたくない」という言葉です。本当によく聞きます。そしてめっちゃ共感&同意します。

ハラスメント防止研修をしたはずの稽古場でハラスメントが起きていた、あるいは、ハラスメント防止研修をしたはずの劇団で未だにハラスメントが行われている、そういうことを実際に知っていることが、その言葉の裏にあるんじゃないかと思います。

なぜそのようなことが起きるのか。もちろん理由は稽古場ごとに個別の要因があると思います。でも、もしかして、と思い当たるのが、ハラスメント防止研修をした稽古場でハラスメントが起きるのは、研修を「ゴール」だととらえているんじゃないのかなということです。

ゴールだととらえると、研修しました、ガイドラインつくりました、はい、これでやることやったし、OKですね、みたいに思ってしまうのかもしれないです。

でも、ハラスメント防止研修は、ハラスメントが起きない創造環境のための「スタート」です。

私のオンラインの研修でもお伝えしているのですが、稽古場でのハラスメント防止3点セットというのがあって(そう私が呼んでいるだけなのですが)それが以下の3つです。

  1. ガイドラインの作成

  2. 稽古のなるべく早い段階での研修

  3. 相談窓口の設置

そして、これは素晴らしい作品作りのための創造環境整備のための一環です。この3点セットをそろえて、はい、これでハラスメント対策はOKです!ということではなく、それを揃えたうえで、キャスト・スタッフ全員が同じスタートラインに立ち、あらためてハラスメントはダメだということを全員で確認し、そして、危うい言動があれば指摘しあって修正し、全員で努力をしていく必要があります。環境は主催者が一方的に与えるものではなく(もちろん主催者にしか整備できないセクションもたくさんあるので、そこはしっかりとやっていただいたうえで)、風通しのよいクリエーション環境はキャスト・スタッフ全員で作るものだからです。

ハラスメントが起きた後、その対応にあたったことがある方は実感されていると思いますが、ハラスメントが起きてしまった後の対応は本当に難しいです。すでに傷ついた人がそこにいるからです。その傷つきは、それほど簡単に癒えるものではありません。ハラスメント対応というのは、大きなマイナスから、なるべくマイナスを少なくするのが精一杯で、決してゼロにはできません。そして絶対にプラスにはなりません。
当然ですが、すでに傷ついてしまった人がいるという事実そのものを無くすことはできないのです。

だから、強く、強く、思うのは「予防がめちゃくちゃ大事」、これに尽きます。病気だって、怪我だって、事故だって、起こったら大変だから、予防が大事じゃないですか。起こらないようにする。ハラスメントも全く同じです。

これだけハラスメントが起きがちな業界なのだから尚更、本当にしっかり予防の取り組みをする必要があると思います。

だから、改めてお伝えしたいのは、ガイドラインも、ハラスメント防止研修も相談窓口も、「ゴール」ではなく、ハラスメントが起きない創造環境のための「スタート」なんだよ、ということでした。


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