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関節技、絞め技って使えるの?:MMAにおける一本勝ちの割合

ブラジリアン柔術をやってる人達にはおじさんが多いです。おじさん、おばさんですと、若い頃に(2000年代前半に)格闘技が一世を風靡したので、そこで使われた関節技や絞め技に強い印象を受けたひとが多い。例えば、PRIDEでノゲイラがコールマンやシュルトを極めた三角絞めですね。初期UFC(ホイス・グレイシー)やバーリトゥード・ジャパン(中井先生!)などでも、関節技や絞め技で試合が決まっていました。もっと古いとUWFとかもですかね(ちょっとちがう?)。

昔のMMAは?

このような印象を裏付けるように、初期の総合格闘技(mixed martial arts, MMA)では関節技、絞め技による一本勝ち、つまり、タップアウトが多かったことがわかっています。1993–2003年に行われた642試合を調べたところ、およそ30%が一本勝ちで試合が決まっていました(Buse, 2006)。関節技か絞め技が決まっていたわけですね。およそ3試合に1回ですから、かなりの割合です。判定やKOで勝ち負けが決まることもあるのですから、そのうちの30%ならなかなかです。

最近のMMAは?

ルールや階級(体重制)が整い、技術やトレーニング方法も洗練されてきたため、MMAの試合もだいぶ変わってきています。Follmer たちは、2014–2017年に行われたUFCにおける1903試合を集計しました(Follmer et al., 2021)。そして、男性では17.3%、女性の試合では21.1%が一本勝ちで試合が決着したことを明らかにしました。Buseが行った2000年代の調査より、一本勝ちの割合がだいぶ下がっています。

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さらに階級により、一本勝ちの割合に違いがありました。上の図にあるように、体重が軽いほど一本勝ちが多くなり、重くなるほど少なくなりました

ちなみにKOの確率はこの逆になります。なお、全体としてKO/TKOによる決着は男性で32%、女性で15%でした。最近は一本勝ちよりKO/TKOで試合が決まりやすいことが示されました。

一本勝ちの内訳

一本勝ちのおよそ75%は絞め技で、階級により差はほとんどありませんでした。そして最も多く使われたのはRNC(リア・ネイキッド・チョーク、裸絞め)でした。MMAにおけるRNCの有効性は他の研究からも示されています(Stellpflug et al., 2021)。軽い階級ではフロントチョークや三角絞めで決まる試合がありましたが、重い階級ではほとんどありませんでした。

ちなみにBuseによる調査では、2000年代ですと関節技で絞め技の一本勝ちは、それぞれ全試合の16.5%と14.1%と大きな違いはありませんでした。最近の試合で関節技による決着が大幅に減っていることを考えると、関節技に対するディフェンスが大きく進歩しているのかもしれません。また、ルール、採点の変更も影響しているでしょう。

2000年代からは変化していますが、まだまだ関節技、絞め技はMMAで有効なようです。MMAにおける関節技、絞め技の攻防は、ブラジリアン柔術の技やテクニックが使われています。自分でやってみるとこの攻防を観るのが俄然面白くなりますよ。

引用文献

・Buse G.J. (2006), No holds barred sport fighting: a 10 year review of mixed martial arts competition, British Journal of Sports Medicine, 40, 169–172.
・Follmer, B., Andreato, L. V., & Coswig, V. S. Combat-ending submission techinques in modern mixed martial arts. IDO MOVEMENT FOR CULTURE. Journal of Martial Arts Anthropology, 21 6–10. 

・Stellpflug, S. J., Menton, W. H., & LeFevere, R. C. (2021). Analysis of the fight-ending chokes in the history of the Ultimate Fighting Championship™ mixed martial arts promotion. The Physician and Sportsmedicine, 1-4.

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