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警察が採用する格闘技:ブラジリアン柔術は有用らしいけど…

警察に代表される法執行機関は、犯罪などさまざまな危機に対処しなくてはなりません。そのような場面で適切に対処するため、格闘技の訓練が日常的になされています。日本の警察でも、警察学校では柔道か剣道を必修で学びます。また、逮捕術という独自の技術体系があり、継続的に訓練がなされています。

柔術は警察の業務に役立つ

柔術新聞さんが、アメリカニューヨーク州にあるシラキューズ警察がブラジリアン柔術を公式の訓練に取り入れたことを紹介していました。

具体的には?

このニュースで、ジョージア州のマリエタ警察の事例も紹介されていました。ブラジリアン柔術が公式に訓練に取り入れられ、過度な暴力を使用しなくなったそうです。具体的には訓練に取り入れて18ヶ月後

  • スタンガンの使用 23%減

  • 警察官の怪我 53%減

  • 容疑者の怪我 59%減(柔術の訓練を受けた警官によるものを集計)

  • 経済効果の推定=40752ドル(500万円弱)

といった感じでした。この件はこちらがソースです。Rener Gracieですね。

警察のような公の機関でも認められる効果があると考えると、逮捕術としても護身としてもブラジリアン柔術はなかなか優れていることがよくわかります。

世界各国の警察で採用されている格闘技

このように効果的なブラジリアン柔術は、警察にどのくらい採用されているのでしょうか?実は、ほぼ採用されていません。冒頭で示したようにニュース記事になるほど珍しいのが現状です。

Öztürkたちは、世界各国の警察がどのような格闘技を訓練に採用しているか調査を行いました(Öztürk & Yanar, 2021)。22カ国から得られた情報を集計すると、ブラジリアン柔術を主要な格闘技として訓練している国はブラジルだけでした。個人的にはちょっと残念です。とはいえ、比較的新しい格闘技なので仕方がない部分があるかもしれません。

主要な格闘技として採用している国が最も多いものは、クラヴ・マガでした。22カ国中11カ国、ちょうど50%になります。クラヴ・マガは20世紀前半にイスラエルで(当時はイギリス領パレスチナ)で考案された格闘技です。紛争地帯で使われ高い効果を上げ続けていることから、イスラエルとの関係も深いアメリカで採用されそれが他国に広がったそうです。以下の動画で様子がよくわかります。道場に合気道って書いてあるのがなんか面白いですね。

各国の状況

各国の状況で興味深い点は、それぞれが独自に開発、発展させた格闘技、格闘術を用いていることです。例えば、イスラエルはクラブ・マガですし、ブラジルはブラジリアン柔術です。列挙すると

  • フランス:サバット

  • 中国:散打

  • ロシア:サンボ

  • タイ:ムエタイ

  • 日本:逮捕術

といった感じです。お国柄が出ますね。もちろんこれだけでなく、どの国もさまざまな格闘技を訓練に積極的に取り入れていれています。日本でも、柔道や剣道が取り入れられていますよね。

以前、別の記事でも書きましたが、警察官の業務に格闘技経験はポジティブに作用します。まず、不安が低減されます。そして、業務の質も上がります(逮捕率など)。ご自身の身を守ることにも、容疑者等を過度に傷つけないためにも、プラスに働きます

警察官のような治安に関わる業務でなくとも、相手を傷つけず、自分の身を守れ、不安が低減されるなら良いですよね。格闘技には他にもたくさんポジティブな面がありますから、興味があったらぜひ体験することをお勧めします

引用文献

・Öztürk, E., & Yanar, N. (2021). Comparison of Defence Arts by Country in Law Enforcement Education. Scientific Bulletin, 26(2), 168-175.

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