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道場の人間関係ネットワーク

別の記事に書きましたが、さまざまな人々と知り合えるのは柔術の大きな魅力のひとつです。その点を記事に以前書きました。

Rodriguesのネットワーク分析

ブラジリアン柔術の道場における人間関係を調べた研究があります (Rodrigues et al., 2019)。ブラジル、サンパウロのとある道場に所属する185人(会員の75%)を対象にネットワーク分析という手法で検討しました。

この調査では、まず参加者に、練習を一緒にする仲間の名前をできるだけたくさん挙げてもらいました。そのあと試合参加、経験年数、帯、学歴、仲間に対する忠誠心や感情を質問し、さらに7ヶ月後に練習を継続しているかも調べました。

道場内のネットワーク構造

ネットワーク分析では挙げられた名前を結びつけその人間関係を調べます。分析の結果、道場の人間関係は、たくさんの繋がりがある中心の人達と、つながりの少ない周辺の人達からなるキレイな中心–周辺構造になることがわかりました。

つまり、つながりが多い人の周りにそうでない人達がいるという結果です。この分析では185名のうち42名が、つながりの多い中心的な人物に分類されました。彼・彼女らは少なくとも20名以上から名前を挙げられました。なお、普通のスポーツジムにこういう構造はありません。そもそもお互いの名前すら知りませんよね

チームへの忠誠心に影響するのは?

ネットワークの中心にいるほど、仲間への忠誠心が高まることがわかりました。また、公式試合に参加する人でこの傾向があり、さらに仲間に対しポジティブな感情も抱くこともわかりました(中心にいるだけでは感情に関する影響はでませんでした)。一方、帯色や経験年数はそれ自体にこれらの効果はないことがわかりました。

継続に影響するのは?

当たり前に思うかもしれませんが、つながりが多いネットワークの中心にいるほど練習を継続していました。もうひとつ継続に影響していたのは、試合参加でした。面白いことに、仲間への忠誠心やポジティブな感情は、練習の継続と関連していませんでした。これは経験上なんとなくわかります。そういう気持ちは逆に出ることもありますから(感情的なトラブルで退会とか)。

ネットワークを広げる

道場の人間関係は、キレイな中心–周辺構造をしている、つまり、つながりの多い人たちが中心にいるという結果は、道場のネットワークについて気をつけるべきことを教えてくれます。それは道場のネットワークに、新入会者を招き入れることの大切さです。初心者を含め、新入会の方には、穏やかに接し、気さくに話しかけるなどをして、彼・彼女らの居場所を確保に努めることが大切です。必要以上にベタベタする必要はありませんが、自然にネットワークに入れるよう気を配るとよいと思います。たまにそういう気遣いが不要なひともいますけれど、そのケースは周りがなにをやっても結果はあまりかわらないですからね。

試合に出ることも継続に結びつくようです。試合の出場により、仲間への忠誠心やポジティブな感情も高まります。試合に出るほどのガチ勢になればもう柔術とその仲間なしではいられないのかもしれません。

柔術ははじめたひとの90%が1年経たずにやめてしまうと言われます。しかし、ネットワークの中に入ってしまうと、継続しやすくなります。ネットワークをうまく広げていきたいですね。

引用文献


・Rodrigues, A. I. C., Evans, M. B., & Galatti, L. R. (2019). Social identity and personal connections on the mat: Social network analysis within Brazilian Jiu-Jitsu. Psychology of Sport and Exercise, 40, 127-134.

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